TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する


「さて、まずはこれでどうかな?」


グルートは手の平に小さな炎を作り出し間髪入れずに放ってくる。炎はおれの体に当たったが、何てことも無くすぐに消えていた。


「……勇者の魔法力はそんなものなのか?」

「そうか、アックくんは耐火スキルがあるんだったね」

「だったらどうする? 他の属性で試してみるのか?」

「はははっ! そんな無駄なことはしないさ。耐火スキルがあるなら、君は炎属性をまともに受けてくれるんだろう?」

「炎魔法しか撃てないっていうなら、気の済むまで撃ってくれて構わないけどな!」


何から何までグルートの悪いところそのままが出ている。こんな幻影をどうしろというのか。


「そうさせてもらうよ。それにしても、大した自信をつけたものだね。それも限りの無い魔力と上げまくった力のおかげなのかな?」

「さぁな」


グルートは一体何を考えているんだ。効きもしない炎魔法をたとえ連続で撃ってこようとも、おれがダメージを負うことは無いというのに。ここに留まってから保有魔力が減っている感じはあるものの、枯渇するほどじゃない。


幻影のグルートが際限なく魔法を撃てたとしても、それでもおれにダメージは与えられないはずだ。


それにしても妙な感じがする。おれに耐火スキルが付いたのはルティのおかげでもあったが、それはグルートたちを滅してからかなり後のこと。幻影グルートがどうしてそのことを知っていたのか。こうして考えを巡らせている間にも、奴は懲りずに炎系魔法を放ち続けている。


「ハァハァハァ、お、驚いた。荷物持ちのアックくんがこれほど耐えられるとはね……そして、その強さのおかげで気付いてもいないようだけどね。ククッ、フハハハ!!」

「――何っ? どういう意味だ?」

「耐火スキルがあるから確かにダメージを与えられない。そう、体へのダメージはね……」


息を切らせるくらいの魔法を放ってきたようだが、やはり妙だ。魔力が減った感じを受けてはいるが何か変な気がする。


「何が言いたい? 勇者らしくはっきり言ったらどうなんだ?」

「フハハッ! そうするよ。アックくんは僕が放った魔法が単なる炎系魔法だと判断して受け続けた。完全に僕を下に見て、全身に好きなだけ命中させた。それがどういうことか分かるかな?」


魔力の減少、違和感、まさかとは思ったが試してみるのが手っ取り早いか。


「……それならその身で感じてみればいい!」

「いつでもいいさ、撃てるものならね……」

「いいだろう」


グルートは余裕ぶった表情でおれからの攻撃を待ち受けている。お望み通りに強力な炎系魔法を発動させ、奴に向けて放った。


だが、


「おやおや、やはり君は荷物持ちがお似合いだよ。何度でもラクルに帰らせようか? アックくんは追い出されたい特異な人間だろうからね」

「……魔法発動は出来るが威力が無い、か」


グルートに届きもしないくらい弱体したようだ――ということは、奴が連続で放ってきたのは弱体魔法、もしくはアレか。


「アハハハハッ! 脆いものだね、人間は! そして強さを過信しすぎて油断をする。もっとも、アックくんは全てにおいて弱すぎるんだけどね。まだ気づかないのかい?」

「炎系魔法には違い無かったようだがそれは見せかけでお得意の弱体魔法……いや、デバフの重ねがけでもしてきたってことだろう?」


連続で受け続けていたが、さすがに途中で気付くことが出来た。奴が放ち続けた炎系魔法の正体は、おれの魔法攻撃のスキルを著しく下げることだった。だからこそあえて奴に向けて威力と見た目が派手な炎攻撃を放ったのだが。


これがエルフがおれに課した人間の業《ごう》だとすれば、大したものでは無い。


「クックック、その通りさ! 君が過信している魔法攻撃はもはや通用しない! アーハッハッハ!! どうだい、悔しいだろう? 魔法が使えないんじゃ、君に勝ち目はない」

「……あぁ、そのようだな。魔法が全く使えなくなったおれにあんたを倒すすべは失ったみたいだ」

「そう悲観しなくてもいいさ。僕にも慈悲はあるんだ。剣で良ければ、相手を……いや、戦わせてあげてもいいけど、どうかな? 剣で斬られたら悔いも残らないだろう?」

「それもそうだな」

「一応聞くけど、剣は持っているかい? 無ければ貸してあげるよ」


大した自信だなこいつは。


だが、


「問題無い。これがあるからな」

「フハハッ! 何だいそれは。錆びた剣じゃないか!」


おれの脆さを知ったグルートは余裕の笑みで自らが手にしている剣を構えだす。対するおれは、今の今まで腰袋の中にしまったままだった錆びた剣を手にする。


魔法が使えなくなったわけでは無いが、デバフの効果が薄まるまで待つ余裕は無いだろう。それなら奴が最も油断している剣での戦いが相応しい。


魔法対決ではなく剣と剣で戦うことを望んでいるのはグルートの方だからだ。それに奴にも油断と過信がある。奴のデバフは、見事におれの魔法能力値を下げた。だが下がったのは、魔法だけで拳の力は全く落ちていない。


どうやらルティのドリンク効果はほぼ永久的かつ消えないほど強力のようだ。それに、ソードスキルといった潜在スキルもデバフの影響を受けていない。


奴にはせいぜい、おれの過去の弱さを味わってもらうとしよう。

Sランクパーティーから追放されたけど、ガチャ【レア確定】スキルが覚醒したので 、好き勝手に生きます!

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

20

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚