テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
#恋愛
#大人のロマンス
#イケメン
「……海老名さん、これ。よかったら食べて」
お昼休み
医局のラウンジで資料を整理していた私の前に、差し出されたのは有名店のサンドイッチ。
顔を上げると、そこには消化器内科のホープ、佐々木先生が爽やかな笑みを浮かべて立っていた。
「佐々木先生!あ、ありがとうございます。でも、悪いですよ」
「いいんだよ。いつも冬馬先生の無茶振りに応えてる海老名さんの頑張り、僕だけじゃなくみんな見てるから」
「そ、それは…ありがとうございます」
「……ねえ、今度の週末、もしよかったら少し息抜きしない?」
佐々木先生は、冬馬先生とは正反対の穏やかで優しい人。
その誘いに、私はほんの一瞬、昨日の冬馬先生との「未遂」を思い出して胸がチクリと痛んだ。
そのときだった。
「──そのサンドイッチ、マスタードが入っている。海老名は辛いものが苦手だ」
低く、地を這うような冷徹な声。
振り返ると、いつの間にか冬馬先生が、腕を組んで背後に立っていた。
その瞳は、今朝よりもずっと鋭く、佐々木先生を射抜いている。
「あ、冬馬先生……お疲れ様です。そうなんですか? それは失礼しました」
「……海老名。俺が指示した学会資料の整理は終わったのか。他科の人間と茶をしばく余裕があるなら、俺の部屋に来い」
冬馬先生は、私の返事を聞く前に私の腕を強引に掴み上げた。
「せ、先生!佐々木先生に失礼ですよ……っ」
「いいんだ、行くぞ」
引きずられるようにして連れて行かれたのは、冬馬先生の個人研究室。
中に入った瞬間、バタンと大きな音を立ててドアが閉められ、鍵がかけられた。
「……先生、さすがに横暴です。佐々木先生はただ、私を気遣って……」
「気遣い?笑わせるな。あいつの目が、お前のどこを見ていたか分かって言っているのか」
冬馬先生が、私の肩を掴んで壁に押し当てる。
逃げようとしても、彼の逞しい体が覆いかぶさってきて、身動きが取れない。
「……俺は、お前に無駄な愛想を振りまけなんて言ってない」
「だって、お仕事ですから……っ」
「仕事なら仕事のことと俺だけを考えていればいい。…それとも何か?あんな男に優しくされて、その気になったのか」
先生の指が、私の顎を強く上向かせる。
怒りで瞳がわずかに揺れている。
これは、いつものドSな指導じゃない。
……もっと、剥き出しの嫉妬。
「……なんで怒ってるんですか…冬馬、先生……」
「……お前が他の男に笑いかけるたびに、ここが苛ついて仕方ないんだよ」
先生はそう吐き捨てると、私の首筋に顔を埋め、吸い付くように深く噛みついた。
「っ……!?ぁ……」
「消えないように、刻んでやる。……お前の主人が誰か、その体に教えてやらないとな」
首筋に残る熱い感触。
冷徹な外科医が、私を欲しがって、狂おしいほどの嫉妬を見せている。
その事実に、私の体は拒絶とは正反対の、甘い震えを返してしまっていた。