「 愛って、どんなものだろう?」 それは、誰かに教わるものなのか、それとも生まれつき持っているものなのか。
僕には、わからなかった。
幼い頃から、愛ってものが何なのか、ずっと考えてきた。
施設で育った僕にとって、愛されるということがどういうことなのか、理解できなかった。
親の温もりも、友達との関わりも、どれも手の届かないものだった。
それでも、誰かと繋がりたい、理解されたいと思っていた。
けれど、そんなことは叶うはずもなく、僕はただ静かに自分の世界で生きてきた。
その日も、仕事を終えて見慣れた 道を歩いていた。
空は薄暗く、街灯の光が長い影を作り出す。
冷たい風が頬をかすめた。
下を向いて歩いていたら、何か気配を感じふと足を止め、顔を上げる。そこには、誰かが立っていた。
その人物は、僕をじっと見つめていた。
見知らぬ顔だ。まったく思い当たる節がない。
「すみません。」
その人物が口を開いた。
「桜井渉さん‥ですよね?」
僕は少し怖くなり後ずさる
「え、なんで…」
思わず声が出る。目の前に立つ人物に、全く覚えがない。
名前を知っていることも、僕のことを知っていることも、到底信じられなかった。
その人物は少し困ったように眉をひそめ、言葉を続けた。
「すみません、ただ…ちょっとあなたに聞きたかったことがあって。」
突然の事で僕は言葉が出てこない
「ちょっとだけお話を聞いていただけませんか?」
その人物の目は真剣だったが、どこか不安げな印象も受けた。
「…どうして僕の名前を?」
やっとの気持ちで疑問をぶつけると、相手は少し戸惑うように立ち止まった。
「実は、あなたに…伝えなきゃいけないことがあって。」
しばらく沈黙が続く。
「でも‥‥今は言えないんです。」
ふいに顔を背け、目を合わせてこない。その姿が、どこか遠くを見つめるようで不安定だった。
「また、必ず会いにきます。」
その場から立ち去っていった。
残された僕は、今の状況を何一つ頭で整理することができず、ただ立ち尽くした。
コメント
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投稿ありがとうございます 初の長編+創作小説頑張ってください! 続き、楽しみに待ってます