テラーノベル
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#恋愛
#長編
どこかに揺られている感覚に意識が浮上する。あまりよい馬車を使っていないのか、あるいは舗装されていない道を通っているのか、乗り心地が悪い。
「ん……」
「あら目覚めたようね」
視界には元王女のキャサリンが見下ろしていた。馬車の床に縛られたまま根転がされていたらしい。
「お前がいなければルティ様も考えを改めてくださるわ。そして我が一族の復興とお力添えをしてもらうためにも、平民でもあるお前は邪魔よ」
(避難用のペンダントは……って、今日に限ってホテルに置いてきたままだった!)
「お前が事故死すれば、その場所は空席となるもの。そうすれば少しは考えを改めるでしょう」
そんなことをすれば、1000パーセントこの大陸が更地になる気しかしない。
自分の事情を都合良く解釈し、行動を起こしている。つくづく私は運がないと思う。本気でお祓いしたほうが良いのだろうかと考えてしまった。そう考えるぐらいの余裕はある。なぜなら必ず助けに来るとわかっているから、この状況であっても悲観も絶望もしていない。むしろこの頭の弱い王女の末路を憐れんだ。
「300年以上前。同じようなことをやって片翼を死に追いやった幼馴染と弟は、刹那的な死などなく、苦しんで殺されたわ。どうして学ばないのかしらね」
「それは相手が王女の血縁じゃ」
「私もそのブリジット王女とゆかりのある人間だったとしたら? というか、転生した本人なのだけれど」
「え、は?」
時間稼ぎのつもりだったけれど、この際自分の置かれている状況をしっかりと把握して貰おう。
「ブリジット王女の転生者が私であり、ルティが300年以上待ち続けた相手が私だということです。ホテルで追い返されたときに、諦めれば死ぬことは……いえ死ぬような地獄を味わうこともなかったでしょうに。ご愁傷様です」
「──っ、出鱈目よ!」
「それなら事実かどうかすぐ分かるわ(なんて言ったってあの過保護かつ若干ヤンデレ気質が追加されたルティのことだから、場所をすぐに特定して……)」
うぉおおおおおおん!!
獣の遠吠えにビリビリと大気が震え、馬車が急停止する。恐らく馬が怯えて動かなくなったのだろう。
「え、なっ……」
「来たわね」
キャサリン元王女も今の咆哮で震えっぱなしだ。複数の四足獣の駆ける音が近づき、馬車のドアを簡単にひしゃげた。
「きゃああああああああ!」
キャサリン元女王は悲鳴を上げた後失神。御者は逃げようとしたが、モフモフを前に同じく失神した模様。
「くぅん」
「くう!」
モフモフたちが駆け付けてくれたらしい。この子たちはルティの尻尾から生じた分身体。以前は子狐だったのに、今は一メートル前後とかなり大きくなっていた。私を見つけると目を輝かせて駆け寄ってくる。可愛い。
「シズク!!」
「ルティ」
馬車から出るとルティが私をきつく抱きしめた。その手は凄く震えていたし、今にも泣きそうな顔をしている。ひしっと私も力強くルティを抱きしめ返す。
ルティならなんとかしてくれると思っていたが、それでも今さらながらに恐怖が押し寄せてきた。
「……っ、ごめん。ちょっと油断しちゃった」
「……私が離れたから」
「私もお祭り騒ぎで浮かれていたから、私のせいでもあるわ」
「あの時に警告だけではなく、息の根をとめておけば」
「それは駄目。そんなことでルティが手を汚すのは嫌だもの」
自分では自分の命を軽く見ているわけではないのだけれど、日本が比較的治安が良かったせいもあって、警戒心が足りてなかったと思う。私が狙われる可能性が今度も高いことを考えて、自分でも対策を立てなければならない。
そう思ったのだった。
***
それからカミシロ殿下に連絡を入れて、彼女たちの対処などを頼んだ。極刑ではなく、娼館あるいは開拓地での移住及び労働50年と決まったらしい。王族としてはかなり重い罪だと思う。しかし一度目の警告を無視しての暴挙を考えるとこれでもまだ優しい方だとルティはぼやいていた。
そして今回の誘拐未遂の一件で諸々の手続きやら私の怪我の治療などもあり、パーティーの参加は見送られたのだった。
(まあ、結果的に私やルティにちょっかいをだしたらどうなるのか、各国を含めて通達と元王女の所業を含めた罪状を見たら牽制にはなるとは思う)
本来なら王族の籍を抜けて市井に入るも、貴族ぐらいの生活はできただろう。それを自ら棒に振ったのはまさに自業自得だ。もっとも今後は人混みの多い場所にいることもないだろうから、大丈夫だとは思いたい。
(今はまたのんびりとした日々を送りたいわ)
今日はなんというか、ルティがしょんぼりしている。ソファに座りながら理由を尋ねると、意外な答えが返ってきた。
「シズクと踊れませんでした……」
「そういえば、そうでしたね」
あの後、治療やら対応なども含めてバタバタしていたのもある。私も私で誘拐未遂で疲れていたのもあってすぐに眠ってしまったのだ。
コメント
1件
最終話、読了したよ〜!!😭💕 めっちゃドキドキした…!ルティの過保護&ヤンデレ感、最高に刺さる…「シズク!」って抱きしめるシーンで胸がぎゅーってなったよ🫂💖 シズクの余裕ある態度とルティのしょんぼり「踊れませんでした…」のギャップがたまらんかった…!完走お疲れ様でした!ゆめかもこんなふうに愛し愛される関係に憧れるな〜🌸