サイド リオ
モンダイジ団とやらを崩壊させる。その決意はすぐに砕け散った。
いやいや、ことの起こりが早すぎるんすよ!
やれ小学生が自殺未遂するわ、やれその小学生を脅しにかける高校生を目撃するわ、挙句の果てにはアミっていう中学生の犯罪者呼ばわりに団が二つに分かれるわ!
これ全部一日の出来事っすよ?!普通なら有り得ないっす!
何、モンダイジ団ってモンダイジが集まってるんじゃなくて問題自体が集まってくる団なんすか?!
キリ、レン、ユメがマオのことを調べるために外へ出た直後
サイド リオ
「……俺、ちょっとあの三人に釘刺してくるねー」
忠告、の間違いじゃないのかとツッコミたい。
でも、“タエ ユイカ”はそんなことしない。
「ちょっとあのアミって子の事故、調べといて」
「……お前に言われなくても、そのつもりだ」
ルネが手を振って出て行く。マオははぁ、とため息を吐きながらも、パソコンをいじっていた。
「わ、私も力になるから、余り無理しちゃダメだよ?」
俺……いや、“私”はそんな差し障りのないことを言う。
「いや、お前は今回専門外だろ?」
「うぅ……ごめんなさい」
思えば、もうこのときには高校生三人にはバレていたのかもしれない。一度も“私”を“タエ”と呼ばなかったから。
「……それより、トキはキリたちについていかないのか?」
「僕はいいんです。今をマオさんがどんな人か知ってますから。それに……」
トキさんはそう言って、目を伏せた。
「……誰にだって、知られたくないことや、思い出したくないことって、ありますから」
ああ、そうか、と思う。
外に出た三人が人のためを思って何かを知りたいと思うなら、ここにいる人たちは、自分も聞かれたくないことがあるから自分からは聞きにいかない。そういう考え方の違いがあるんだと。
「それに、僕はそろそろ仕事なので」
「そういやそうだったな!」
「あ、あとタエさん。ちょっといいですか?」
「ふぇっ?う、うん」
“私”はトキさんの近くに寄った。すると、トキさんは他の人たちには聞こえないような声でこう言ったのだ。
「タエさんの声は、もう少し優しくて鋭さを持ってます。君と違って」
グッと、言葉に詰まった。その本人から「そんな声だね、すごく似てるなぁ」ってお墨付きを貰ったのに。
「それじゃあ、あとのことお願いします。なるべく早く戻るように頑張りますね」
「無理しなくていいぜ!」
「ああ。すぐに決着がつきそうだしな」
「ありがとうございます」
…………絶対音感というやつだろうか。どちらかにせよ、この音楽家だけは、いや、この団員は騙せる気がしない。