サイド リオ
廃工場にて。少女は俺の姿を見ると、すぐこちらに駆け寄って来た。
「ど、どうだった?」
「……まあ、たしかに“遊び”ではなかったっすね」
今の世の中、家族と同等、それ以上に信頼し合える人なんてそうそういない。
だから、心底この団を妬んだっす。羨ましい、気持ち悪い、って思いながらずっと見ていた。
「……あ、あのね!よかったらモンダイジ団に……」
「確かにいい団っすけど……これ以上関わるのはやめておくっす。こっちにも事情があるっすから」
「その事情を、少しでもなんとかしたいの……!」
……甘いんすよ。
「五月蝿(うるさ)い」
「えっ…………」
タエが、息をのんだ。俺が団長の姿に変装したから。
「タエに何が分かるんだよ。俺のこと、何も知らないくせに」
その言葉に、さっきまでとは打って変わった睨むような目つきで俺のことを突き飛ばした。
「……キノの、ダイキの姿で、声で、そんなこと言わないで……!」
『っ……タエの姿で、声で、そんなこと言うな!』
同じこと言うんすね、あの団長と。
こういうのを似たもの同士というんだろうな。
「みんながみんなタエみたいに才能を持ってると思うな。俺がどれだけ苦しい中生きてるか、タエなんかには分かんねえだろ?」
団長の姿で続けたが、この言葉は自分自身の思いだった。
アンタに何が分かる。才能があって、苦労もしてなくて、いい仲間に恵まれて。
俺がどれだけ苦労して生きてきたかもしれないくせに。
「ホント、心底憎い」
羨ましい、狡(ずる)い、妬ましい……。
汚いと罵ってもいい。俺だってそう思うんすから。
「な、何……?」
俺は一歩、また一歩と団長の姿のままタエに近づく。一歩、一歩とタエが後ずさる。
この姿で、タエを殺したら、タエはどんな気持ちになる?モンダイジ団はどんな思いで死体を見る?
…………少しは、俺の気も、晴れるのか?
俺は、タエを押し倒して、その細い首に手をかけた。
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