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2 - 美容院の午後

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2025年09月17日

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第1章 美容室の午後(岩本視点)



昼過ぎのサロンは、午前のピークを越えて少し落ち着きを取り戻していた。

ドライヤーの風が鳴り響く中、僕は鏡越しにお客さんへ「今日は全体的に軽めにしていきますね」と声をかける。

美容師の仕事は体力も気力も使うけれど、カットのたびに変わっていくお客さんの表情を見るのが何より好きだ。だから、こうして毎日立ち続けていられる。




その日の予約表を覗いたとき、最後の枠に「渡辺翔太」という名前を見つけた。

初めての来店客だろう。名前を目で追っただけで特に意識はしなかったけれど、時間ぴったりにドアを開けて現れた彼を見て、思わず「おっ」と小さく声が出そうになった。

 


すっと背筋の伸びた青年。清潔感のあるブルーのシャツ。目鼻立ちがやたらと整っていて、第一印象からただ者じゃない雰囲気が漂っている。


「渡辺翔太さんですね、ご案内します」


声をかけると、彼は一瞬だけこちらを見て、柔らかく微笑んだ。

受付に立っていたアシスタントの子が、その瞬間「えっ…」と小さな声を漏らしたのを僕は聞き逃さなかった。



「どうした?」

僕が眉をひそめると、その子は慌てて「いえ、なんでもないです」と笑ってごまかした。



不思議に思いながらも席へ案内し、施術に入る。渡辺は礼儀正しく、要望もわかりやすく伝えてくる。美容師としてはやりやすいお客さんだ。

けれど、どこか「こちらが見透かされている」ような不思議な感覚があった。


仕上げのスタイリングに入ったころ、スタッフルームから戻ってきた先輩が、ひょいと顔を出した。


「おー、翔太くんじゃん!久しぶり!」


渡辺が笑顔で軽く手を振る。

「ご無沙汰してます。今日はよろしくお願いします」


――知り合い?


僕が目を丸くしていると、先輩は得意げに僕を見やり、声を弾ませた。

「いわもっちゃん、この人ね、SnowManの渡辺翔太くんだよ」


「……すのまん?」


僕の口から間抜けな声が漏れる。

横でアシスタントが「え、知らないんですか?ジャニーズですよ」と小声で付け足した。


ジャニーズ。聞いたことはある。でも、具体的に誰がいるとか、どんな活動をしているとかは正直わからない。


渡辺は少し照れくさそうに笑いながら、「美容はやっぱりプロに任せたいから」とだけ言った。

その仕草が自然で、肩書きを超えて「人としての魅力」が滲み出ていた。





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