コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
第二話 「“噂”の正体」
理科準備室の薄闇の中。
怜の目が、光を反射して不気味に揺れた。
「……どうして、ここに?」
私が尋ねると、彼は一瞬、ためらうように口を閉じた。
そして低い声で言った。
「この学校の“放課後の噂”を調べてるんだ。
——1年前に消えた生徒のこと、知ってるよな?」
一瞬、空気が止まった。
あの事件。
誰も口にしない、3年生の女子が突然いなくなった話。
警察が入っても、結局何も見つからなかった——。
「……まさか、まだ続いてるの?」
怜はポケットから小さなメモを取り出した。
紙には、手書きの文字でこう書かれていた。
『次は“理科準備室”で会おう。夜の12時。』
「これ、俺の机に入ってたんだ。」
「……同じ、だ。」
「え?」
「私もさっき、“また放課後に来て”ってメッセージを見たの。」
怜の表情が一気に変わった。
ほんの少しの沈黙——そのとき、教室の方から**ドンッ!**と大きな音が響いた。
二人で顔を見合わせる。
息をひそめて、そっと廊下に出る。
「誰か……いる。」
足音が、確かに聞こえた。
トン、トン、と階段を下りる音。
追いかけようとしたその瞬間——
「……紬?」
声の主は、美園だった。
廊下の端に立ち、手には古いアルバムを持っている。
「……何してるの、美園?」
「私も、探してるの。“あの子”のこと。」
怜が小さく眉をひそめた。
「“あの子”って——誰のことだ?」
美園はゆっくりと顔を上げた。
その表情は、どこか遠くを見るようで……微笑んでいた。
「1年前に消えたの、私の姉なの。」