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直樹に「強盗致死」の容疑で再逮捕状が出たというニュースは、日本中を駆け巡った。
12年前の未解決事件の真犯人が、不倫と横領で世間を騒がせたあの男だった。
マスコミは連日
彼の「化けの皮」が剥がれる様を報じ、直樹の名は「悪の代名詞」として歴史に刻まれることになった。
そんな喧騒を離れ、私はルーツ・ガーデンのオフィスで、一通の通知に目を疑っていた。
「……1億円?」
財団の口座に、匿名で振り込まれた巨額の寄付金。
添えられていたのは、短いメッセージカードだけだった。
『詩織へ。お母さんの「秘密のへそくり」、ようやくあなたの力になれるときが来たみたいね』
その筆跡に、私は息が止まりそうになった。
母は、私が大学生の頃に病で他界した。
父の会社が傾き始める直前のことだった。
私はすぐに、母の生前の親友だった女性を訪ねた。
彼女が語ったのは、直樹さえも、そして父さえも知らなかった、母の「覚悟」だった。
「あなたのお母様はね、直樹君が初めて挨拶に来たときに既に見抜いていたの。でも、あなたが彼を愛しているのを見て、何も言わずに……もしもの時のために、自分の実家から相続した資産を、私に託して運用させていたのよ」
『あの子がいつか、あの男にすべてを奪われて、一人で立ち上がらなきゃいけなくなったとき。その時の「再起の種」にしてほしい』
母は10年以上前から、私がいつか地獄を見ることを予見し
そこから這い上がるための「命綱」を、一円の狂いもなく準備してくれていたのだ。
「……お母さん。私、一人じゃなかったのね」
私は、母が遺してくれた1億円の重みを噛み締めた。
直樹が奪おうとしたのは、私を支配するための金。
母が遺してくれたのは、私を自由にするための愛。
私は、その1億円を「ルーツ・ガーデン」の教育基金として計上した。
直樹が壊した「家族」という概念を、私は母の愛を元手にして、新しい形に作り変えていく。
◆◇◆◇
その夜
陽太に、おばあちゃんの話を聴かせた。
「おばあちゃん、ママのことずっと守ってくれてたんだね」
「うん……だから、胸を張れるように…ママは陽太を一生守り抜くわ」
【残り36日】