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#離婚
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医療刑務所の特別面会室
アクリル板の向こうに座る直樹を見て、私は吐き気がした。
かつて私を贅沢な暮らしに溺れさせてくれた男は、今や見る影もなく老け込み、車椅子に揺られている。
……でも、鏡に映る私だって同じだ。
SNSで煌びやかな生活を自慢していた面影なんて、どこにもない。
髪はパサつき、頬はこけ
追い詰められた獣のような目をした、ただの犯罪者がそこにいた。
「……直樹。あんただけ死刑なんて、そんなの不公平よ」
掠れた自分の声が、冷たい個室に響く。
直樹は車椅子から、私を呪い殺さんばかりの勢いで睨みつけてきた。
「莉奈…お前、よくも俺の前に顔を出せたな。お前が贅沢するために、俺がどれだけのリスクを負ったと思ってるんだ」
「リスク? 笑わせないで。あんたが12年前に人を殺して得た金で、私を繋ぎ止めていたんでしょ?でも、そんなのはどうでもいいわ。……これ、覚えてる?」
私は持参したUSBメモリの写真を、アクリル板に叩きつけるように押し付けた。
「あんたが私の名義で作った隠し口座」
「…!」
「あれ、ただのマネーロンダリングじゃなかったわね。……あんた、自分の『保険』のために、私との情事の記録だけじゃなく、二人で共謀して高木常務の親族を恐喝した時の音声も入れてたでしょ」
直樹の顔が、みるみるうちに恐怖で引き攣っていく。
その無様な表情を見て、私は心の底から嘲笑した。
「……お前、それをどうするつもりだ」
「警察に売るに決まってるじゃない。あんたの罪を一つ増やす代わりに、私の刑期を短くしてもらうの」
「…あんたはもう『完済』できないほどの借金を背負ったゴミなのよ。私は、そのゴミを利用して、一円でも安く自分の自由を買うわ」
かつて愛を囁き合い、詩織の幸せを二人で笑いものにしていたはずが
今は一秒でも長く相手を地獄に留め、自分だけが浮き上がろうと急所を刺し合っている。
……おかしいわね。
私たちは、お互いを一番の理解者だと思っていたはずなのに。
結局、損得勘定で繋がっていただけの関係は
自分が窮地に陥れば、真っ先にパートナーを「売却」する資産としか見なせなくなるのだ。
「じゃ、それだけだから」
私は、彼が絶望に顔を歪めるのを見届けてから、席を立った。
【残り35日】
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