まだですかぁーと退屈そうな声が、室内に響く。
声の主の上司である澤本は、もう少し待てと声を張り、またモニターに向かった。
声の主─門倉はふわふわと浮かびながら、澤本の所へ移動する。
「もうすぐ着くだろう。ほらこの星だ」
「えっ…これですか?この、灰色の、汚い?」
数年前に念願だった他星人を発見し、偵察を目的に数十名を派遣した。だが、いつしか音信不通になっていた。
その派遣者らを見つけ出すため、澤本をリーダーとした救出隊が1年ほどかけた今、この星へ到着したのだ。
目的の星に着くと、船ごとに別れて星の至る所で様子を見る。
澤本らがいる船は、小さな島の上空に止まった。
『1番隊、降り立ちました!』
『5番隊、降り立ちました』
船を出たという知らせを全て受け、澤本と門倉は船から地上を見下ろす。
地上のほとんど全てを肉眼で捉えられる距離まで近付いた時、門倉は「うぇ、」と顔を顰める。
それは門倉があまり礼儀のない人物だからでもあるが、しかし世辞にも綺麗とは言えなかったから。
建物のようなものは見受けられるが、空気が灰色に染まりきっていて、淀んでいるように見える。
しかし一部、この島や他の場所──白い壁に囲まれた所のみ──には澄んだ空気があるらしい。
そして2人が驚いたのは、自分たちと同じような背格好をした種族がいたことだ。
足が2本、腕が2本、肩があり頭があり、目、口、鼻など…。
どの星でも似るようなものなのだろうか。
ただ1つだけ、疑問に思うことがあった。
「皆、細すぎやしないですか」
腕も、脚も、腹さえも、少し力を加えれば折れてしまいそうなほど細い。
骨と皮膚だけなのではないのだろうかと思うくらい、皆細く血色も良く無かった。
そういう種族なのだろうかと思ったとき、異変は起きた。
全ての船との通信が切れているのだ。
呼び出しても何も聞こえないので、澤本は顔色を変え、船員を連れて地上へ降りた。
見た目が変わらないからか、地上の人々は船員を疑わずに、ここのリーダーだという人物のもとへ案内する。
そして言語が通じたのも疑問点として、門倉はメモ帳に書き込む。
到着した場所には何故か、人はいなかった。
「おお、❦̴̧̱̲͔͗̉͒̂̈́͊͡∏̴̛͇̯̘̈̐͛̈̒͂̇͜∆̶̧̛̰̝̫̳̽̇͂͆̀̒ͅµ̴̡̫͓̲͋̀̀̔͆̌̄̔͝∌̶̠͎͉̯̫͈̿́͌̆̑͜͞❧҉̢̞̬͕̝͓̘҇̐̅͋͗̈̔͒ͅ星の方々ですか」
どこからか声が聞こえてくる。
澤本はすかさず、以前ここへ派遣された人物らはどこにいるのか、今どうしているのか尋ねた。
しかし返ってきたのはその答えではなかった。
「それはそれは遠い所から。損はさせられませんね」
そう言うと、いつの間にか椅子や食べ物などが用意されていて、船員らにリラックスをするよう促す。
先程の問はなかったかのように、声の主はこの星について話し始めた。
──長い間、この星は人間という種族が栄えていました。
人間は欲の塊なものでですね、更に更にいい生活を求め、我々人工知能を始め色々なものを作り出しました。
一時は安定したかのように思えたのですが、欲を突き詰めるあまり、環境破壊で人口は急激に減少して。
この機会を逃さず、我々は今までこき使われてきた人間と立場を逆転したわけです。
「反乱をしないようにと心を奪った人間も、残り少なくなったもので。資源もなくなり、機械も作りにくくなってしまった。
なので、あなた方が来てくれて救われました」
今はただ心を奪うのではなく、子孫を残すための欲や心情は残すという研究を進めているので──と話す声の主に、全員が顔を青くしていた。
しかし誰も逃げ出さなかった。いいや、『逃げ出せ』なかった。
大丈夫ですよ、あなた方の命も無駄にはしませんから、という声に、皆は抵抗ができなかった。
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