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反社に転職してきた。
普通に働きに来ただけだ。
元はブラック会社にいたから抜け出したくて。
毎日吐かれる暴言と、終わらないセクハラ。
飲み会終わりには 大丈夫? なんて
にやにやしながら声をかけてくる上司
酔ってないつーの
そんな秩序の欠片もない会社から
反社に来た私。
経歴が駄目駄目だったから来れるところが
極端に少なくて仕方なかった。
今日が初めての出社日。
この会社は基本 寮性らしい。
できるだけ関わりを持たず静かに仕事だけをこなしていきたい。
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(でっかい会社、、)
首を最大限まで上げるとぽきっと音が鳴る。
振動が背骨に響く。
キャリーケースを引きずって大きな自動ドアを潜る(くぐる)とエントランスの様な
広間に出て、正面には人のいないカウンター。
どうすればいいのか困ってあたりを
見回している私。
そのとき偶然いたかのような男性社員に
声をかけられた。
「もしかして新入社員の子?」
私は混乱して、あっはい、とたじりながら言った。
「そっか、じゃあこっち着いてきて」
と言ってエレベーターに連れていかれた。
男性社員は暖色に光る上を向いてる矢印のボタンを押す。
2人でエレベーターに乗り込むと
窓ひとつない狭いエレベーターに
気まずい空気が充満している。
話の種を見つけようとして心の中であたふたする。
「君、どこの部署入るの?」
急に聞かれたものだから答えが
出てこなかった。
「あっ、えっ、と まだ分からないんです」
究極的につまらない返し。
「そっか」
会話が終わった瞬間の無言が1番気まづい。
どうにかして会話を途切れさせたくない。
転落するほどには気まづいから。
エレベーターの動きが止まる。
ドアが空くと男性社員は先に降りて
どうぞ、と言ってくれた。
そのフロアは昼だというのに薄暗くて
太陽の日差しだけに頼ったような
廊下が続いていた。
「キャリー気をつけてね、
タイヤ挟まらないようにね。」
私は重いキャリーケースを引きずって
明るいエレベーターを出た。
「着いたよ。申し訳ないんだけど、
空きがなくてこのフロア上部の方々が
多いんだ。気を付けてね。」
エレベーターの扉は締まり下に降りていく音が聞こえた。
男性社員は私を寮の部屋に連れていってくれた。
キャリーケースを置いて、部屋を見回していると男性社員が口を開く。
「じゃあ10分後に迎えにくるから。
準備とか終わらせといて。」
あ、はい、と返事をすると男性社員は部屋を
出ていった。
私はあらかたの準備を終わらせて部屋を
探検する。
バスルーム、大きなベット、広めのキッチン。
私が住んでいたワンルームよりも断然いい。
こんこん、と部屋をノックする音が聞こえる。
はい、と返事をして部屋を出ると
男性社員がポケットに手を突っ込んで
待っていてくれた。
「じゃあ行こうか」
と言って男性は私のことを誘導する。
「どこ行くんですか?」と聞くと
「新入社員は首領に挨拶。決まりなんだ。」
あぁ、そうなんですか と愛想のない返事。
さっきと同じエレベーターに乗り込んで
上層部へと上がっていく。
「これから行くところ最上階の1つ下
なんだけど、上層って言えばいいよ。
みんなそういってるし。 」
くだらない話(失礼だけど)をしてる間に
もう上層には着いていた。
ドアが開くとさっきのフロアとは
比べ物にならない程に真っ暗なラウンジ。
だだっ広くて長い廊下が続いている。
エレベーターを出て真っ直ぐのところに
あるのは白い光が染みでるドア。
男性社員に連れられて真っ直ぐそこに向かって
いく。
そのとき私は考えた。
この男性社員は人を殺したことがある。
この会社は反社。
ここは犯罪者の巣窟のようなもんだ。
「失礼します」
゛入れ ゛という小さく低い声が
部屋の中からした途端、
ドアが勝手に強風に煽られて空くような
気がした。
男性社員は静かにドアを開ける。
下を向いていた私が顔をあげる瞬間。
今までにないくらい足がすくんだ。