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ある日、彼は貴重な自由時間を堪能していた。今日は残飯処理を休める日だ。革製の鞄から一つの黒い板を取り出し、彼はニヤりと顔を歪ませた。その黒い板の一部を軽く凹ませ、その板の一面を光らせた。しばらく期待を胸に待っていた。
とうとう通常の光に戻り、彼はますます喜んだ。喜びはその板を触る指に出ていた。本来なら決して手にすることが出来ないはずだった禁忌に背徳感を覚えていた。この板は1年前ほどに家来が忘れていったもので、家来が忘れていったことに気付き取りに来る前に、彼は鞄に隠した。家来は諦めて新しいものを買った。それを聞いた時に彼は己の勝利を感じたが、バレてはいけないと本能が騒ぎ、今のように空き時間を見つけては隠れて堪能している。そう、彼が手にした物とは、今では殆どの人が持っているであろう文明の利器「スマートフォン」なのだ。
彼は興奮してトークアプリを開く。唯一連絡先を交換している少女に新たなメッセージを送った。
いつなら会えそう?僕は夜ならきっと大丈夫
すると、すぐにその少女から答えが返ってきた。
奇遇ね!私もそうなの。
彼は興奮を抑えきれず、思わず歓声をあげてしまった。
その時、彼の声に気づいたメイドが彼の部屋へ駆けつけた。足音に気づいた彼はすぐさまスマホを隠し、メイドが彼に何があったのか訪ねると平常心を保って出任せの嘘をついた。
彼女も今日は休みの日だった。月一度の休みというだけで心が弾んでいたが、仲の良い人と休みが被ったのもあってずっと興奮を抑えきれていなかった。もうチャンスは今日しかないかもしれない、そう思って会うことにしようと誘おうとしている。
ねえ、お互いいつ死ぬか分からないし、もう今日会っちゃう?奇跡的に休み被ったし!
そうだね、じゃあ真夜中に中央広場で!
ようやく会えることになり、更に興奮していた。封じられ、決して許さない遊びの筈なのに。いつしか可笑しくなりそうな程に甘い甘い禁忌の遊びになっていた。
秘密の関係を今宵、「永遠」にしてしまう。