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セイギ

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セイギ

9 - Case 1-7

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200

2024年07月28日

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『えっ? もう犯人を詰められる?』

受信機のスピーカーから聞こえてきたのは、少し間の抜けた大我の声だった。

「そう。だから行ってきていいか」

『俺も行きたいです』と声を上げたのは北斗だ。

『ちょっと待って、じゃあみんなで行きましょう』

ジェシーの声もする。『こっちも動機がわかってきたんです』

みんなは黙って、主任の指示を仰ぐ。

『平日だから会社には出てるはず。それで任意同行だ。本社集合な』


「アサミヤグループ」本社の駐車場に停まった、3台の捜査車両。逃げられた時のため、北斗と樹は車で待機する。

受付で身分を示すと、すぐに通してくれた。

応接室に着いてソファーに座る。

高地と大我が目を合わせたとき、ドアが開いて息子の圭一が入ってくる。

「…まだあるんですか。この間、全て話しましたけど」

いくらか面倒くさそうな声で言った。「仕事を抜けてきているんで、手短にお願いします」

「手短に終わるかどうかは、これからの話を聞かないとわからりませんね」

返したのはジェシーだ。「全てではないですよね。話すことは」

その鋭い視線に射抜かれ、圭一の頬がぴくりと震える。それを、4人の刑事が見逃しているはずがなかった。

「では順を追って説明します」

大我が口を開く。

「被害者である『アサミヤグループ』の創始者であり取締役社長、麻宮総一郎氏は巨額の遺産を持っていた。彼の功績により、たったの一代で富を築き上げたから。それを欲しがる者は山ほどいる。具体的に言えば、この社内では社長本人以外、とでも言えますね」

圭一の表情は変わらない。射抜くような視線を向けたまま、高地があとを継ぐ。

「ではその中で、あの時間、あの場所で殺害することができた人間は誰か。まず被害者は自宅に帰ってから襲われたから、合鍵、もしくはマスターキーを持っている人物。しかしマンションの管理人や大家には動機がありません。となれば、合鍵を持つ秘書と息子がまず候補」

そこで一旦言葉を切る。と、慎太郎が持っていたタブレットを操作して画面を見せる。そこには、北斗と樹が証拠として持ってきたドライブレコーダーの映像が映し出されている。

「これは被害者の送迎車のドライブレコーダーです。日時は9月10日の午後7時5分。自宅マンションの地下駐車場に入り、その数分後に出てきています。秘書の佐々木さんによると、この日は7時頃に送り届けたと言っているので、これは間違いないかと」

説明して映像を閉じた慎太郎は、別のフォルダーに切り替える。

「こちらはマンションの防犯カメラ。同じ時刻に、駐車場からエレベーターに乗って自宅へ入る被害者の姿が確認できます」

「そしてその12分後ですが」

高地が口を開き、画面に目をやる。

「黒い帽子に上下黒の服装の長身の男が、正面玄関からやってきます。男は迷わず205号室に鍵を開けて侵入し、7分後に走り出てくる。これは女性とは思えない」

大我も続く。

「副社長に聞きましたが、被害者は自分が社長の座を退いたあとは息子ではなく『自分』に後を継いでほしいと言っていたそうです。つまり副社長のこと。あなたには素質がないことを感じていた被害者は、遺産を息子に全て受け継がせるのではなく、会社に寄付しようとしていたと。あなたはそれを知り、憤慨した。それで合鍵を使ってマンションに入り、殺害した。たった一人の受取人しかいない、生命保険金を手に入れるために」

証明終了、とでも言うように手をぱんと叩いた。

「……証拠はあるんですか」

絞り出すように圭一が言った。

「まずこの映像はそれなりに説得力のあるものになります。あとあなたの部屋を捜索したら、凶器でも出てくるでしょう」

余裕の面持ちで大我が言い、とうとう圭一はうなだれた。



「意外と早かったですね」

車に戻ってくると、樹が言った。

「推理を並べたら、結構あっさり自供した。まあ、度胸とかなさそうだもんな。あの息子」

大我はほのかに笑っている。やがて到着していたパトカーが赤色灯を回して走っていく。

「あとは家宅捜索して凶器探しか」

高地が言って、「じゃあそれは俺と主任でやってくるから、みんなは取り調べお願い」

了解、と4人は答えた。


続く

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