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「彼女たちは反省中ですので……。三席合格者にお願いいたしましょう。ユノさん、前に出てください」
「……うん……」
ユリアとヘルルーガに代わり、名前を呼ばれた少女が壇上に進み出る。
彼女は……今朝イリスに話しかけてきた少女だな。
「では、これからの入学生活についての抱負を一言」
「……ボクの目標は決まっている。イリス=ノイシェルを倒して、ディノス=レアルノートをボクのものにする……」
そう言うと、彼女――ユノは狂気ともいえるような微笑みを浮かべた。
ユノの言葉を聞いた瞬間、新入生たちの間にざわめきが広がる。
「ほう……。皆の前で宣戦布告してくるとはな」
余は楽しげに呟く。
やはり、ユノはただものではない。
「ふむ……。面白い……!」
余は口角を釣り上げた。
だが、隣に座るイリスの顔は曇っていた。
「ディノス陛下にたかる羽虫が……。無駄に騒ぎを大きくするなんて……!」
どうやら、あまり乗り気ではないらしい。
そんな彼女の気持ちを知ってか知らずか、ユノは言葉を続ける。
「……黒竜と白竜。どちらが上か、はっきりさせてあげるよ……」
「…………」
イリスは黙ったままうつむいている。
その表情には様々な感情が入り混じっているように見えた。
「え、えー……。以上、三席合格者のユノさんの挨拶でした。さ、さぁ、自分の席に戻りなさい」
校長が戸惑いながらも、司会進行を務めようと努力している。
ダブル首席合格者のユリアとヘルルーガに加えて、三席合格者のユノまで問題児だったとはな。
今年の入学者はいろいろな意味で凄まじい。
校長の気苦労は計り知れないだろう。
(教師陣の給与を増額して……指導力だけではなく戦闘にも長けた者を新規採用しておくか)
余はそんなことを考える。
この学園の運営は、校長に一任されているものの最終的な判断は魔王である余が行うことになっていた。
といっても、学園運営に関するすべてのことをいちいち確認したりはしないのだが。
こうして問題を目の当たりにしている以上、放置することはできない。
今回は場当たり的にフレアとシンカが収めたのだが、本来は教師たちで解決すべき問題だったのだ。
そのための教師でもあるのだからな。
「……」
「ユノさん? 席に戻りなさい」
校長が促すが、ユノは壇上から動こうとしない。
それどころか、じっとこちらを見つめていた。
ユノの視線はまっすぐに余たちの方に向けられている。
まるで、余たちを値踏みするような目つきだ。
「……そろそろかな?」
ユノがボソリと呟く。
すると、突然――
「「「ギャオオオォッ!!」」」
校庭中に地響きのような雄叫びが轟いた。
どうやら魔物が出現したようだ。
それもかなり強そうな気配を感じる。
「何事だ!?」
「わ、ワイバーンの襲撃です! それも3体!!」
「なっ!? ワイバーンだとぉ!?」
校長や教師たちがそんなやり取りをしている。
生徒たちにもざわめきが広がる。
(ふむ。ワイバーンか……)
ワイバーンは亜竜の一種である。
知能はあまり高くないが、戦闘能力に関しては魔獣の中でもトップクラスだろう。
空を自由に飛び回るため、弓兵による射撃も効果がない。
追跡効果のある魔法による遠隔攻撃が有効とされている。
イリス以外は絶滅している純粋な竜種や、あるいは余のような例外的な存在を除けば、個体としては世界でも最強クラスの存在である。
フレアやシンカですら、1対1では互角だろう。
ユリアやヘルルーガ、あるいは教師たちなら、複数で連携すればギリギリ無力化できるか。
一般生徒たちなら、大人数で囲んで袋叩きにしても犠牲者が出るレベルだ。
「「「ゴアアアァッ!!!」」」
ズドーン!!!
衝撃と共に、入学式会場の屋根が吹き飛ぶ。
同時に、上空から白い塊が壇上目掛けて落下してきた。
ホワイトワイバーンだ。
着地したソレは壇上に立っていた校長を尻尾で殴り飛ばした。
「ごふっ!」
校長が勢いよく壁へと激突する。
今日は校長の厄日だな。
思わず同情してしまう。
さらに、続けて壇上に降り立った2体のホワイトワイバーンと合わせて、3体がブレスを吐き散らした。
「な、なんて……強烈な……ブレス……なの……」
「くっ! 俺たちの障壁では抑えきれない……!」
1体が放つだけで、全てを焼き尽くすほどの膨大な魔力をまとった白色の炎。
それが3体分だ。
普通の魔族や人間に防ぐことができるはずもない。
だが、この学園には普通ではない存在がいる。