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「どういうつもりですか? このような暴挙、許されませんよ」
黒竜イリスだ。
彼女は障壁を展開し、教師や一般生徒たちを炎から守った。
そして壇上に上がると、ホワイトワイバーンに向かって殺気を放つ。
「「「ギャオォッ!?」」」
3体は即座に動きを止め、後ずさりする。
本能的に悟っているのかもしれない。
今の自分たちと彼女たちの差――つまり力量差というものに。
「亜竜を従えられる者が、わたしや陛下以外にいるとは思いませんでした。あなたは何者ですか?」
イリスが、今回の件の首謀者らしき者に問い詰める。
「……ボクの名前はユノ。白竜族の最後の生き残り……。黒竜イリス……あなたを倒して、あの男をボクのものにする……」
白髪の少女がニヤリと笑う。
その瞳は狂ったように爛々と輝いている。
「ふん。さながらハエのような女ですね」
「……はぁ? 誰が……?」
「あなたのことです。あなたはまるでウンコにたかるハエのように鬱陶しい存在だと言ったのです」
「……」
イリスは淡々と言い放った。
それはもう、バッサリと切り捨てるような言葉だった。
ユノという少女の顔色がみるみると変わっていく。
この流れはまずいな。
余は直感的にそう思った。
「……許さない……!」
「へえ? 感情の起伏に乏しいように感じましたが、さすがにハエだと言われれば腹も立ちますか」
イリスがそう言う。
ずいぶんと汚い言葉を使うものだと思っていたが、どうやら挑発するためにわざと言っていたようだな。
確かにユノという少女は感情の起伏に乏しい。
そのままでは次の動きが読みづらいので、挑発するのは有効な手だろう。
余はイリスのことを見直し――
「……ボクの男のことを侮辱するなんて、あなたは万死に値する……!」
ん?
ユノは怒っているのだが、何やら思っていた方向とは違うようだ。
自分がバカにされたことではなく、余がバカにされただと?
「あなたは何を言っているのですか。わたしがディノス陛下のことを侮辱するなんて、あり得ません」
「……でも、言ったじゃない……」
「はぁ?」
「……ボクのことを『ウンコにたかるハエ』だって……」
「それがどうしたというのです?」
「……自覚がないの? その理屈だと、あの男がウンコということになる……」
ユノがそう指摘する。
なるほど。
確かに言われてみれば、そういう見方をすることもできなくはない。
ユノが余につきまとう。
イリスはその様子を『ウンコにたかるハエ』と評した。
つまり、『ユノ=ハエ』であると同時に『余=ウンコ』という図式が成り立つわけだ。
これはなかなかに深い考察と言えよう。
「そ、そんな……。あ、あああああぁ……!!!」
イリスが頭を抱え込んで震え出す。
そして、絶望した表情でこちらを見つめてきた。
そんな目で見られても困るが……。
「も、申し訳ありません! そんな、そんなつもりではなかったのです……」
「ふむ。まぁ良い。ウンコは生物であれば誰もがするものだ。そう邪険にするものではないぞ」
余は適当に慰める。
魔王たる余でも、さすがにウンコ扱いされたときのフォローの仕方まではマスターしておらぬ。
まさかこんな事態になるとはな。
ユノとやら、なかなか侮りがたし。
「ううっ……。本当にすみません……」
イリスはションボリしてしまっている。
自覚なしとはいえ、余を侮辱してしまったのを気に病んでいるようだ。
「……これは戦うまでもなくボクの勝ちかな? 黒竜イリスも大したことのない存在だったね……」
ユノは勝ち誇った顔でそう言ったのだった。