テラーノベル
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「できました!こっちは暫く発酵させます、そして皆さんにはこちらを・・・即席で食べられるキムチの浅漬けです」
ジンが完成したキムチを大皿に盛ると、会場からやんやと拍手が起こった、赤く輝くキムチが、白い皿の上で美しく盛り付けられている
「さぁ、みんなで味見や!」
米吉の掛け声で、一斉に箸が伸びた
シャクシャク・・・
「う〜ん!美味い!」
「これよぉ〜これが韓国で食べた味よぉ〜」
「まろやかで、でもしっかり辛くて・・・最高!」
口々に絶賛の声が上がった、桜も一口食べて目を輝かせた、白菜のシャキシャキとした食感と、甘エビの深いコクが口の中に広がる、そして後からじわりとくる辛さが、心地よく舌を刺激する
「すご〜い!!ジンさん、これ本当に美味しいです!」
「そう?うろ覚えだったんだけど、喜んでもらえてよかった!」
ジンの顔に安堵の笑みが広がる、その表情は会社では決して見せない、無防備で優しいものだった
「ジンさぁ〜ん!レシピ教えて〜」
途端に叔母さん連中にワイワイとジンは囲まれた、ジンは困った顔をしながらも、一人一人に丁寧に答えている
「唐辛子の量は?」
「そうですね、目分量ですけど・・・たぶん・・・」
「甘エビは、地元のものでも大丈夫ですよ」
「塩加減は、好みで調整してください」
その様子を見ていると、まるでジンが昔からこの島の一員だったかのように思えてくる
ワイワイガヤガヤ……
「おお?なんじゃ?この匂いは?」
「なんでもお嬢さんの婿殿がキムチ作っとるらしいんじゃ!」
「おおっ!ほな、本場の味じゃ!」
「これで一杯!どうじゃ?」
ワハハハ
「まだ朝じゃがな!でもええな!」
どやどやと山田旅館の従業員も厨房に集まって来て人で一杯になった。ジンを賞賛する温かい言葉が次々と生まれ、厨房は笑い声と歓声に包まれている
クスクス・・・
「ジンさん大人気ね、みんなにお茶を淹れましょう」
桜はクスクス笑いながら急須を手に取った、こんなに賑やかな厨房は久しぶりだ、そしてその中心にいるジンの姿が、何だか誇らしかった
「桜や!ワシにも茶を淹れておくれ」
「おじいちゃん!」
お茶を淹れながら、いつの間にか桜の隣に米吉が立っていた、しわだらけの手で湯呑みを受け取りながら、みんなに囲まれるジンを見つめて言った
「なんとのぉ~・・・婿殿はとんだ苦労人じゃな」
米吉がぽつりと言った、不思議に思った桜は祖父の横顔を見上げた
「・・・どうしてジンさんが苦労人だと思うの?」
「コンピューターの会社の社長なんてハイカラな職についとるから、どんな気取り屋かと思うとったら・・・見てみぃ、こんな田舎者のワシらに馴染もうと必死じゃ、健気なもんじゃ」
桜の入れたお茶をズズズと啜って米吉が言う、その目は長年生きてきた人間だけが持つ、深い洞察に満ちていた
「学生時分に親を亡くされたと聞いたが、きっと・・・ここに来るまで色々と辛い思いをしたんじゃろうな・・・何ともいじらしい男じゃ」
米吉の言葉を聞いて桜は改めてジンを見た。たしかにここに来てから、キャラの強い山田一族に振り回されている。父の過剰な歓迎から始まって、母の豪快な蔑み、親戚たちの容赦ない質問攻め。でも彼は文句ひとつ言わず、嫌な顔ひとつしない・・・桜でさえうんざりする時があるのに
それどころか、こうして島の人々のために時間を割き、丁寧にキムチを教えている。その姿には誠実さと優しさがあった
「大事にしたらなアカンぞ、桜」
米吉の言葉が、桜の胸に染み入った、温かい思いが桜の心の中に膨らんでいく、ジンの背中を見つめながら、桜は小さく頷いた
「そうだね・・・おじぃちゃん・・・」
厨房には相変わらず笑い声が響いている、その中心には照れくさそうに微笑んでいるジンがいた、その笑顔は、会社では決して見せない、本当の笑顔だった
桜は思った、この人を守りたい・・・
どういう訳か自分よりもよっぽど成功しているし、体格も才能も恵まれている男性を捕まえて、この人を知れば知るほど溢れるほどの保護欲が沸き上がって来る
この人の笑顔を守りたい
お茶を注ぎながら頬を少しだけ赤く染め
桜は初めて誰かを自分の手で幸せにしたいと心から思った
コメント
2件
大事にしたらなあかんで おじいちゃんの言葉が心に沁みます🥹 桜ちゃんの愛で、ジンさんを幸せにしてあげてね🌸
米吉おじいちゃん😭 年輪ですね😌すべてお見通し✨️ 桜ちゃんがジンさんをどんどん幸せの方に引っ張ってってね〜🤗 ところで昨日の👙ポイポイ覚えてる?🤣