テラーノベル
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淡路島の南東部、海に面した穏やかな丘の上に、『淡路・小児がん、ひかり療養センター』は静かに佇んでいた
白い壁に淡いブルーの屋根が映える小さな施設で、周囲を松の木々が囲み、潮風が葉を優しく揺らす。建物は二階建てで、一階が共有スペースと診療室、二階には個室病棟があった、ここは重い病を抱える子供達が、家族とともに長期滞在できるように設計された場所だ
外のベンチからは水平線が広がり、夕陽が海面を金色に染め始める時間帯だった。桜は慣れた足取りで玄関をくぐり、受付の看護師に軽く会釈した、そして後ろに少し緊張した面持ちでついてくるジンを振り返り、柔らかく微笑む
「ジンさん、こっちこっち!ここが五郎くんのいる施設です、ここでスリッパに履き替えてくださいね」
「う・・・うん」
ジンは頷きながら周囲を見回した。施設内は清潔で、壁には子供達の描いた絵が飾られている、廊下の端には小さな図書コーナーがあり、今はとても静かだが、どこか温かみのある空気が流れていた
ジンの活気あふれるオフィスの冷たい空調とはまるで違うと感じた、桜とジンは二階の最奥、窓から海が見える個室へ向かった
キィ~・・・
「こんにちはぁ~…」
桜がドアを開けると、ベッドに座っていた少年がパッと顔を上げた、12歳の少年富永五郎が満面の笑顔で言う
「サクちゃん!!」
重度の骨肉腫の治療で、左腕を肩から失っている小さな男の子だが、表情は驚くほど明るく、とても元気な少年だ、短く刈った髪に、大きな瞳、全体的に青白いが、笑うとえくぼが深くなる
「サクちゃん! やっと来た!僕、朝からずっと待ってたんだよ!」
五郎の声が弾んだ、桜はベッドサイドに駆け寄って少年の頭を優しく撫でた
「ごめんね~!五郎くんお待たせ〜、でも今日は特別ゲスト連れてきたのよ」
五郎の視線がジンに移る、ジンは少し驚いたように目を丸くした
「え・・・と、あの・・・こんにちは」
「サクちゃんの旦那さんだね!僕!あなたに会いたかった!」
「お世話になっています」
ハッとジンが振り返るとそこに五郎の父親と母親が笑顔で立っていた、慌ててジンはお礼をした
「お二人を心からお待ちしていました、ご結婚おめでとうございます」
「あっ!ハイ!ありがとうございます」
五郎の両親の挨拶にジンも深々と頭を下げた
「それじゃ!始めましょうか!」
そう言うと桜は持参したスーツケースからゴーグル型のコントローラーとタブレットを取り出した
コメント
1件
五郎少年、親戚の僕ちゃんかな? 桜ちゃんの計らいで、なにか楽しいことが始まりそうね😊