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君の声を聴かせて。

11 - 第11話 「海」

♥

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2026年02月14日

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花火大会の日から少し時間が過ぎ、もう7月が終わりを迎えようといていたある日。


自室でくつろいでいた俺のスマホに、勇斗くんからの通知が表示される。



メッセージを確認すると、『少し電話しない?』と書かれていた。


突然の誘いに、心臓が一瞬跳ねる。


すると、俺が既読するのを待ってたかのように、画面には着信を知らせるマークと『勇斗くん』の文字。



不意の着信に、息が止まる。

俺は、深呼吸で心を落ち着かせ、震える指で通話ボタンを押した。




「も、もしもし…?勇斗くん?」


『もしもし、仁人?急にごめんね。』




もう聞き慣れたはずの勇斗くんの声。


電話越しだというだけで、いつもと違って聞こえた。

顔を合わせている時より、声だけの方が変に意識してしまう。




「大、丈夫だよ。……何かあった?」


『そんなに大した用じゃないんだけど、電話した方が早いかなと思ってさ。』


「用って、なに?」


『明後日さ、仁人が良ければ海行かない?』



「海」その一言がとても心に刺さった。

勇斗くんとは何回も遊びに行ったことあるはずなのに、今回だけ特別に聞こえてしまう。



『嫌…かな?』


「ううん、嫌じゃないよ。……ただ、俺泳げなくてさ…だから一緒に行っても楽しめないと思う……。」


『なんだ、そんなことか。泳げなくてもいいよ。砂浜で遊んだり、足だけ水につけたりするだけでも楽しいし。

ね、行こ? 俺、仁人と夏っぽいことしたい。』




普段の俺なら絶対に行かないだろう。

別に水に濡れたくないし、疲れるのも嫌いだ。

それなのに、勇斗くんとなら行きたいと思えてしまうのが不思議だった。




「俺も……俺も、勇斗くんと海行きたい。」


『じゃあ決まりね。また待ち合わせ時間とかは連絡するから。』


「うん、分かった。楽しみにしてるね?」


『俺も!じゃ、またね。』


「バイバイ。」



通知終了のボタンを軽く押し、ベッドにダイブする。


枕に埋めた顔が、自然とにやけてしまう。


勇斗くんからのお誘い。楽しみなんて言葉じゃ足りなかった。
















勇斗くんと約束の日。

昨日早めに寝たおかげで、今日は余裕を持って起きることが出来た。


前は勇斗くんを待たせてしまったから、今回は俺が待ちたい。


そんな思いで、集合時間の15分前には到着するように向かっていた。





予定通り、時間より早めに到着する。

だが、そこには既に勇斗くんの姿があった。



「勇斗くん、おはよう。早いね?」


「おはよ、仁人。仁人こそ、ちょっと早くない?」


「俺は、ほら……前回遅刻をしてしまったので…。」


「ははっ…そんなの、気にしなくていいのに。」


「け、結構俺の中では申し訳なく思ってるんだからね…。勇斗くんこそ、どうして早かったの?」


「んー?ただ、仁人と会うのが楽しみ過ぎて落ち着かなかっただけ。」




そんな事を言われるだなんて思っていなくて、つい言葉が詰まってしまう。


動揺が隠せず、視線を逸らしてしまった。



ここ最近、勇斗くんの言葉に調子を狂わされている気がする。


何だか、俺ばかり意識しちゃっているみたいで少しズルい。



「……仁人?どした?」


「何でもない…。ほら!早く行こ!」



勇斗くんの前を、わざと先を行くみたいにして歩く。


勇斗くんも、俺のこと少しくらい意識してくれてもいいのに…。















視界いっぱいに青が広がって、思わず息を呑む。潮の香りがふわっと鼻をくすぐった。


勇斗くんもこの広大な風景を見て感動したのだろう、二人一緒に「お~!」なんて声を揃えてしまった。




「ほら、仁人早く行こ!」


「あ、待って!勇斗くん!」



走り出す勇斗くんの背中を追いかけて、俺も駆け出した。


海面が太陽の光を反射してキラキラと輝いている。まるで、俺の今の気持ちを表しているようだった。






しっかりと泳ぐつもりは無いが、少しくらい海に入りたい。


俺と勇斗くんは、それぞれの更衣室で水着に着替えていた。



男の水着は、当たり前だけれど上は何も着ない。

裸を見られるのに少し躊躇いがあった俺は、持参したパーカーを1枚羽織った。





更衣室を出ると、先に出たであろう勇斗くんが、砂浜にレジャーシートを引いたり、パラソルを立てたりしてくれている姿が目に入った。


当然の事ながら、勇斗くんも水着だ。

しかも勇斗くんは、上に何も着ていない。



「は、勇斗くん、準備してくれてありがとう。」


「おー。仁人、おかえり。」




勇斗くんの体は、引き締まった筋肉が付いていて思わず見蕩れてしまう。


俺は白くて細っちいから、体見られるの恥ずかしいな。

パーカー持ってきておいて良かった…。




「よしっ、こんなもんでいいっしょ。」



「ごめんね、全部やってくれてありがとう。」


「別にいいって。ほら!早く行こ!」



優しく誘うように、手を差し伸べられる。

俺は迷うことなくその手を握り、一緒に海へ走り出した。







「わっ、冷たい…。」



足を海に入れると、ひやっとした感覚が走った。

暑さで火照った体には心地よい。



「冷たくてきもち~!!ね、仁人。もうちょい先まで行ってみない?」


「うん!!」



波打ち際から、少しずつ沖の方へ向かう。


脚の半分ほどが沈む深さまで来た。






雲ひとつない空と、頬を撫でる海風が気持ちいい。

開放感に包まれた俺は、大きく伸びをした。


その瞬間、顔に水がかかる。



「わっ!………勇斗くん?」



水が飛んできた方を見ると、勇斗くんがいたずらっ子のような笑顔を見せていた。



「もー、急にやめてよ。びっくりするじゃん…。」


「ごめん、ごめん 笑」


「………お返し!それ!」



俺も海水を手ですくい、ぱしゃっと勇斗くんの顔にかける。



「うわっ!………やったな~、ほい!」



勇斗くんも負けじと水しぶきを飛ばしてきた。


追いかけて、逃げて、またやり返して。

お互い夢中になってふざけ合っていた。



夢中になり過ぎていたのだろう。

勇斗くんからの水しぶきを避けようとした時、足がもつれてしまった。


体が横へ傾いて、海へ沈みかける。



「仁人!」



慌てる間もなく、勇斗くんに勢いよく腕を引かれた。


海へ落ちたと思った俺の体は、気がつけば勇斗くんの腕の中にあった。




服越しではない、直の肌に触れる。

視界が勇斗くんの体でいっぱいで、頭が沸騰しそうだった。



「あっぶない…仁人、平気?」


「……ぁ……っ…////」


「顔真っ赤だよ?本当に大丈夫?」


「だ、だだ、大丈夫!!うわぁっ!!!!」




水が大きく舞い上がり、一気に息苦しくなる。

とっさに勇斗くんから飛び退いてしまい、そのまま水中へと倒れ込んだ。




「仁人!!大丈夫!?」


「げほっ…だ、だいっじょうぶ……」



全身びしょ濡れになってしまった。パーカーの布が肌に張り付いて気持ちが悪い。



「とりあえず、一旦上がって体拭こうか。」


「うん……。」



本当はあんまり脱ぎたくないが、水を含んだ布はずっしりと重い。


脱いだ方がマシだと思った俺は、ゆっくりとパーカーを脱いだ。

脱いだパーカーを抱えて、ふと勇斗くんの方を見る。



勇斗くんは手で口を隠し、俺から視線を逸らしていた。




「……勇斗くん?」


「なっ、何でもない!ほら、早く上がろ!」



少し慌てている様子の勇斗くんの後ろについて行く。



砂浜に上がり、タオルで全身を拭いたところで勇斗くんから何かが渡される。



「勇斗くん、これ…。」


「俺もパーカー持ってきてたんだよね、ちょっと大きいかもだけど、これ着て。」


「え、そんなの悪いよ。」


「いいから着て。お願い。」


「分かった………。」



半分押し付けられるように受け取ったパーカーに袖を通す。


俺より勇斗くんの方が体格がいいから、手がすっぽりと隠れてしまった。



息を吸うと、勇斗くんの香りがふわっと届く。


ずっとドキドキしていた心臓が、また早くなって、もう痛いくらいだった。





この、胸が痛いくらいの鼓動も、火照った体も、赤くなってしまった顔も、全て夏のせいだ。



そう思いたかったのに。




俺の中で芽生え始めていた感情は、少しずつ確かな輪郭を持ち始めていた。





君の声を聴かせて。

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まじでさいこうです

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