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#四季総受け
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21,509
息を荒らげ、澪はそのまま勢いよくスマホへ飛びつこうとした。その瞬間。
「おっと、危ないじゃないですか」
ふっと笑った芹沢が、ひょいと身を引く。空を切った澪の身体は、バランスを失って、ドサリとソファの座面へ前のめりに投げ出された。
すかさず、芹沢が背中へ覆いかぶさる。片膝が座面に沈み、体重がそのまま澪の腰にのしかかった。暴れる両腕は、あっという間に腰の後ろで重ねられ、大きな片手にぎゅっとまとめて掴まれる。
関節が悲鳴を上げる寸前の、絶妙な角度だった。痛みはない。ただ、少しでも動けば痛くなる、という予感だけが手首に食い込む指の熱とともに、あの夜の記憶を勝手に呼び戻す。
「なっ……! 離せ、馬鹿力……ッ!」
眼鏡のフレームがクッションに押し付けられ、ぎしりと軋んだ。
「嫌ですよ。離したら、編集長、俺を殴るじゃないですか。俺、痛いのは苦手なんです」
どこかふざけたような口調が、うなじのすぐ後ろで響く。吐息の湿度が、襟足の産毛を撫でていった。
いけしゃあしゃあと言ってのけた芹沢は、空いたほうの手で、スマホを自分のポケットにしまい込む。
「お前が殴られるようなことをするからだろう!」
「酷いなぁ、ほんの冗談のつもりだったのに……。それより、通報するんでしょう? しないんですか?」
(両手を後ろで押さえつけてる奴が言うか……!)
「…………チッ」
舌打ちが、クッションに吸い込まれて、鈍く消えた。
動画――。
あの映像が、あいつのポケットの中にある限り、こちらから振り上げられる拳は一つもない。本気で叩き出してやりたい。今すぐ、この男を玄関から蹴り出して、スマホごと粉々に砕いてやりたい。
だが、それをやった次の瞬間に、何が起きるか。想像しただけで、全身の血が逆流しそうだった。
「……殴ったりしない。だから、その手を離せ」
奥歯の隙間から、絞り出すような声だった。
「約束ですよ?」
「しつこい」
ふっと喉を鳴らした芹沢が、ようやく手首を放す。解放された腕の血管に、じんと痺れながら血が巡り出した。澪は、ずれた眼鏡を乱暴に押し上げ、のろのろと身体を起こして、ソファの端に座り直す。
「で? 通報は?」
底意地の悪い問いかけに、はらわたが煮えくり返った。煮えくり返って、ぐつぐつと音を立てているのが、自分でもわかる。
それでも、澪は、努めて平坦な声を作った。
「ま、まぁ……事を大きくするまでもないだろうし、通報はしない」
「そうですか。優しいんですね、編集長」
(……このクソ野郎が……!)
睨みつけても暖簾に腕押し、まったく効果がないらしい。
コメント
1件
うわ、この緊張感……! 両手を後ろで固められて、スマホをポケットにしまわれる形、一瞬で立場が逆転するのがゾッとするほど鮮やかでした。芹沢の「痛いのは苦手なんです」なんてふざけた口調がまた、あの夜の記憶を呼び覚ます澪の動揺を引き立てていて……眼鏡のフレームが軋む音とか、舌打ちがクッションに吸い込まれる質感とか、細かい描写で観ている側も息が詰まる。これ、どう転ぶんだろう——続きが本当に気になります。