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りるら
196
耀聖(ようせい)
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.:・.。. .。.:・
夏休み中は、アメリカの学校に編入するために、竜馬は一つでも多くの英単語を覚えようと、四六時中机にしがみ付いて英語を必死に覚えようと、猛勉強していた
時々・・・編入する学校のパンフレットを眺め、向こうへ行けば、何か希望なりを持てるのではないかと、竜馬は密かにアメリカの地を夢見た
そして、立派に優秀な成績で卒業し、良い就職先を見つけ、一郎さんに恩返しをできればいいなと思っていた、その時、中庭から激しく泣くジェニの悲鳴が聞こえた
一郎さんが仕事でいない昼間は、豊と、ジェニと通いの家政婦さんと竜馬だけだ、二人に何かあったら一郎さんに申し訳ないと、竜馬は慌てて中庭にいる、ジェニの元へ駆けつけた
ジェニは、中庭の楓の木の下で、半狂乱になって泣きじゃくっていた
「ジェニちゃん?どうしたの?」
「お兄ちゃんのばかぁぁぁぁ~」
ふと竜馬が楓の木を見ると、枝葉にジェニの大切にしていたお人形の「メルちゃん」が吊るされていた
ジェニが自分の妹のように大切にしていた人形のメルちゃんは裸にされ、ピンクのボディが、紐やテープやクリップでがんじがらめにされ、その先にはビニール袋がついていた
どうやらジェニの大切なメルちゃんは、パラシュート部隊のジャンパーに任命されたようだ
憐れなメルちゃんは、訓練もまともに受けずに、豊に即席のパラシュートを装着されて、ベランダから放り投げられて、楓の木に引っかかったみたいだ
そしてメルちゃんの顔は、おそらくマジックで書かれただろう、眉毛は1本につながり、口の回りは泥棒のようにグルグル口髭をべったり書かれていた、ジェニは木の下で、どうしようもないパニックに襲われ、絶望的な怒りを爆発させ、泣き喚いていた
ジェニはたとえ豊が本物の赤ちゃんを木に吊るしたとしても、ここまで激しいショックは受けなかっただろう、というくらいのショックを受けていた
木の下で声の限りに、手が付けられないほどギャーギャー泣き喚いている、ジェニの騒ぎを聞きつけて、駆けつけて来た竜馬がなんとか木に登り、メルちゃんを救い出した
木の葉っぱと、埃まみれのメルちゃんをジェニに渡し、手の甲で涙を拭ってやる、しかしジェニは顔にマジックで落書きされて泥棒のようになっているメルちゃんを見て、再び咽び泣いた、さすがにこれは可哀そうかと、竜馬は必死でジェニをなだめた
「ジェニちゃん、メルちゃんを綺麗にしてあげよう?お兄ちゃんとキッチンへ行こう」
「うえぇぇぇぇぇぇぇ~」
「ハイハイ・・・大丈夫だよ」
竜馬はメルちゃんを胸に抱き、ジェニの手を引いて、キッチンへ向かった、豊がドタドタと階段を降りてきて、竜馬に言った
「当然の報いだ!!本当なら猫も満足に引きずれないくらいに、ボコボコにしてやりたいのにっっ!!」
泣きながらジェニが叫ぶ
「猫なんか引きずってどうすんのよーーーー」
竜馬の耳の近くでジェニが金切り声を出す、キーンと耳鳴りがする中、竜馬はメルちゃんを丁寧に洗った、しかし油性マジックで描かれた口ひげと一本眉はまったく消えない、
とりあえず竜馬はメルちゃんにパンツと可愛い洋服を着せてあげて、髪を梳いてあげてジェニに渡してみた
うわぁ~~ん「こんなのメルちゃんじゃないぃぃぃぃぃ」
―そうだよなぁ・・・―
メルちゃんの顔を見て、ずっと泣いているジェニを見て、竜馬も腕を組み、困ってしまった
「あっそうだ!お母さんがマジックを除光液で消してるのを見たことがあるよ、ジェニちゃん、一緒に除光液、買いに行く?」
ピタリとジェニが泣き止み、その涙でキラキラした瞳を竜馬に向けた、何やら考え込んでいるようだ、そしてしばらくしてジェニが言った
「行く・・・」
.:・.。. .。.:・
二人は手をつないで歩いてすぐの近所にある、三階建てのスーパーマーケットに向かった、一階の食品売り場のサービスカウンターで、除光液の場所を聞き、エスカレーターに乗って、二階の日用品売り場へ向かった
チーンッ「650円です」
―うわっ、高っかいなぁ―
竜馬の財布には1000円しか入っていなかったが、仕方がないので650円の除光液を買った
手をつないでジェニと帰ろうと、1階の磨かれたタイルの上を歩いていると、ふとジェニが足をピタリと止めた
ここのスーパーには食品売り場の横に、こじんまりとしたフードコートがあった
「あれ食べたい!」
とジェニが指さしたのは、イチゴのかき氷のポスターだった
―300円・・・―
「イチゴの・・・かき氷が食べたいの?」
「うん」
コクンと大きく首を振るジェニ、竜馬は仕方がないなと思って、ジェニを連れて、レジカウンターへ向かった
「すいません・・・イチゴのかき氷下さい・・・」
「300円です」
愛想のない中年の女性店員が言う
「白いのもかけて欲しい!」
ジェニの言葉に竜馬がメニュー表を見る
―練乳プラス30円・・・―
竜馬は途端に自分の金が減る不安に襲われたが、すぐに持ち直した
「練乳もお願いします」
「330円です」
こんもりと浅い器に盛られた、ピンクと白のコントラストが、綺麗なかき氷はなんともおいしそうだった
二人掛けのテーブルにかき氷の乗ったトレーを置き、二人で向かい合わせに座った
ジェニの胸に紙ナプキンをかけて、端を首元にたくしこんで、服が汚れないようにしてやった
ジェニは自分の顔よりも大きい練乳がたっぷりかかったかき氷をすくいあげ、口の中に入れてゴクンと飲み込むと
「ん~~~」
と言って目を閉じた、痛みとも感動とも判別できない顔をしている
「どうしたの?大丈夫?」
竜馬は不安になってじっとジェニを観察した
「おいしい~~~あまい~~~」
ジェニは忙しくスプーンを動かしている、ホッとした竜馬は、手のひらに残った10円玉を二枚をじっと見つめた
―所持金・・・20円―
「はい!大きいお兄ちゃん!あ~ん」
「え?ハイハイ、あ~ん」
ジェニに沢山食べさせてもらったイチゴのかき氷は、これ以上ないぐらい甘くて美味しいと竜馬は思った、それだけで竜馬は今自分が、所持金20円しか持っていない事も、どうでも良くなった
かき氷を二人で平らげて、竜馬がトレーを返却台に返して戻ってくると、ジェニの様子が少しおかしい
「寒い~~~~」
かき氷を食べたのと、店舗の冷房に当たったことで、身体が冷えてしまったのだろう、ノースリーブのワンピース姿のジェニが、自分の体を抱えてブルブル震えていた
「ああっ~~あんなに沢山かき氷を食べたからぁ~~」
竜馬は慌てて自分の着ていたフランネルの赤と黒のチェックのシャツを脱いでジェニに着せた、袖はブカブカで、裾もジェニの膝下だったが、それで体は温かくなったらしく、何とかジェニの震えは収まった
白のランニングシャツ、一枚になってしまった竜馬は、袖をクルクルめくってジェニの両手を出し、前でボタンを止めてあげた
「これで寒くない?」
「うん」
「じゃぁ、お家に帰ろう」
コメント
1件
うわあ、ジェニちゃんのメルちゃんへの愛が痛いほど伝わってきた…!豊くんの悪戯がエグすぎるけど(笑)、竜馬くんの優しさにじんわりしました。所持金20円になってもジェニに笑顔を優先する姿勢、そして「あーん」のシーンがもう尊すぎて。チェックシャツを着せる細やかさも含めて、竜馬くんの人間性が光る回でした。