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次の日の朝、教室に入ると、いつもと違う空気が流れていた。陽翔と大輝が教室の中央で向かい合っている。周囲にはクラスメイトたちがざわざわと集まり、何やらただならぬ雰囲気だ。
「陽翔、大輝?どうしたの?」
私は慌てて声をかけるが、二人はじっと睨み合ったまま返事をしない。リリカがすぐ横に来て小声で言った。
「いや~、なんかね、大輝が朝から『陽翔、お前最近ヒメと話しすぎだろ』って言い出したみたいでさ」
「えっ!?なんでそんな話に…」
「それに対して陽翔が『だから?別にヒメが嫌がってるわけじゃないだろ』って言い返してさ、そっからバチバチだよ~!これ、結構ヤバいかもね」
私は顔が真っ青になるのを感じた。どうしてそんなことで言い争うの!? もう、お互い仲良くしたらいいのにー。
結局、委員長の「やるなら外でやれ!うるさいから!」という声に押され、二人は校庭に移動することになった。委員長、さすがだね。ビシッと言ってやってくださいっ!私も慌てて後を追うが、二人とも本気でお互いに向き合っている。
「陽翔、お前さ、何で急にヒメに近づいてきたんだよ。ずっと俺たち幼馴染なんだぞ」
大輝は拳を握りしめながら言う。その声には怒りだけでなく、どこか焦りのようなものも含まれていた。
「幼馴染だからって、それが何だよ。お前がヒメの隣にいるのは当たり前かもしれないけど、それで満足してるだけじゃダメだろ」
陽翔は冷静そうに見えるけど、その目は本気だ。ひいっ…。こわー。そして、はっきりと続けた。
「俺は…ヒメが気になるから話しかけてる。それだけだ。お前にどうこう言われる筋合いはない」
その言葉に、大輝がカッとなったのがわかる。
落ち着け??
「だったらお前、ヒメの何を知ってるんだよ!今さら近づいてきて、ヒメのことわかったつもりでいるんじゃねぇよ!」
「それを言うなら、お前だって一緒だろ。幼馴染だからって、ヒメの本当の気持ちを全部知ってるわけじゃないだろ」
二人の言い合いがエスカレートしていく。周りのクラスメイトたちは固唾を飲んで見守っているが、私は見ていられなくなった。
「ちょっと二人ともやめて!」
私は叫びながら二人の間に割って入った。
「なんでそんなことでケンカするの!?私が原因なのに、どうしてお互いを責めるの?」
二人は私の言葉に驚いたように黙った。そして、少し気まずそうに視線を逸らす。
「陽翔も大輝も…私にとって大事な人だよ。でも、こんなふうにケンカされると、正直どうすればいいかわからないよ」
私は胸の内をそのままぶつけた。二人とも真剣に私を見つめているけど、何も言えない様子だ。
「私はまだ、自分の気持ちも整理できてないの。だから、二人が勝手に決めつけるのはやめてほしい」
陽翔が先に口を開いた。
「…ごめん。確かに、俺が一方的に言いすぎたかもしれない。でも、俺はヒメが困る顔なんて見たくないんだ」
その言葉に、大輝も少し顔を曇らせた。
「俺も…悪かったよ。お前がどんな気持ちか、ちゃんと聞こうとしなかったのは俺のミスだな」
二人が素直に謝ってくれたことに、私はホッとした。でも、同時に胸の奥が苦しくなる。
放課後、リリカは私にこう言った。
「ヒメ、どっちがいいとかまだ決められないんだよね」
「うん…そんな簡単には決められないしっ?」
私がため息をつくと、リリカは私の背中を軽く叩いて笑った。
「じゃあ、焦らなくていいんじゃない?二人にはちゃんとヒメのペースを伝えて、ゆっくり考えればいいと思うよ」
「…そうだね。ありがとう、リリカ」
リリカの言葉に少しだけ気持ちが軽くなった。