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第1話『熱の下の素直』
その朝、じおるはいつもより顔色が悪かった。
授業中も咳をこらえながらノートを取っていたが、昼休みを過ぎるころには机に突っ伏していた。
「おい、じおる。大丈夫か?」
「……すみません、少し熱が……」
「まじか。保健室行こ。歩ける?」
「だいじょうぶ……です。あすたくんに迷惑は——」
「迷惑とか言うなって。おれが行く」
あすたは自然に、じおるの肩を支えた。
軽い体温が腕を伝う。
いつもより近い距離に、どちらも少しだけ息を詰める。
——結局、その日の放課後。
あすたは心配でたまらず、じおるの家を訪ねた。
「じおるー……おれだ。入っていい?」
ドアの向こうから、少し掠れた声が返る。
「……どうぞ、あすたくん」
部屋に入ると、カーテンが引かれ、静かな空気が満ちていた。
ベッドの上で、じおるが長い髪をほどいたまま、弱々しく微笑んでいた。
「わざわざ来てくれたんですか……?」
「当たり前だろ。昨日から顔、真っ赤だったじゃん」
「ふふ……観察が鋭いですね」
「おまえが心配だっただけだよ」
あすたは手にしていた袋を机に置いた。
中にはスポドリと、コンビニのおかゆと、冷えピタ。
「おかゆ、あたためるな?」
「ありがとうございます……でも、ひとりで——」
「いいって。じっとしてろ」
湯気が立ちのぼり、やがてあすたがスプーンを差し出す。
じおるは少しためらいながらも、それを受け取った。
「……あすたくん、優しいですね」
「そりゃ好きな人だし」
「……っ」
じおるの手が止まる。
頬の赤みが、熱のせいなのか照れなのか分からない。
「そんなこと、真顔で言わないでください……」
「本気だから、言うんだよ」
「……ずるいです」
小さく笑って、じおるはちょっと照れる。
熱に浮かされた声で、いつもより少し素直に言葉をこぼした。
「わたしも……あすたくんが、いてくれて嬉しいです」
「……っ」
「だから、もう少し……そばにいてくれませんか」
あすたは小さくうなずいて、椅子をベッドのそばに寄せた。
手を伸ばすと、じおるの髪が指に触れる。
少し汗ばんだ額を撫でながら、あすたは静かに微笑んだ。
「ちゃんと寝ろよ。おれ、ここにいるから」
「……はい」
やがて、浅い呼吸が穏やかになる。
窓の外では、夕方の光が差し込み、ふたりの影をゆらす。
小さな部屋の中で、
ひとつの手の温もりが、そっともうひとつを包み込んでいた。
はい!ということで第1話でした!
1話目から熱ということで…..
まぁ、とりあえず締めますか。
おつひにゃです。
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