頑なに拒まれて、このままでは自らのプライドが許さないと、
「私からの誘いを断るということは、あなたが職を失うということにもつながりますが……それでも、いいんですか?」
選択の余地がないような聞き方をした。
唇を噛んで悔しげな表情を見せた彼女が、「……わかりました」と、頷く。
余裕のある振りを装ってはいたが、その実ここまでしても断るのならもう打つ手もないという僅かな焦りもあった。
ようやく受け入れられて、行きつけのホテルのラウンジ名を書いて手渡すと、彼女はギュッとその紙片を握り締めて診療ルームから出て行った。
「なぜ、あんな反応を……」
背中を見送ると、ため息がこぼれた。
あんな形で拒まれたことも、嫌悪感を剥き出しにされたことも全くの初めてで、
こちらから誘えば悦ぶものだとばかり思っていた自負を、あっさりと打ち砕かれたような気分だった……。
──食事の席でも、彼女は不機嫌そうな表情を崩すことはなかった。
それほどまでに避けられている理由など、全く心当たりもなかった。
「私と食事をするのは、君にとっては楽しいというよりも、苦痛なようですよね?」
そう口に出して、彼女の胸の内を探ってみるが、
「苦痛だとまでは……」と、はぐらかすようにも答えられて、診療ルームでも感じた微かな苛立ちが再び頭をもたげた。
「……私とこうして会っていて、そんな風にため息ばかりを吐いている女性を見たのは、初めてです」
眉間にしわが寄るのを感じつつ、そう牽制をするようにも告げる。
テーブルを挟んで向かい合いながら、私の方を見てもいないことが信じられずにいた……。
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