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……女性からは抱いて落とした後に嫌われるようなことは常で、その方が後々の面倒がなくていいとさえ思う気持ちもあったが、
行為に及ぶ前からわかりやすく受け入れ難いような態度を取られたことは、ついぞ経験がなかった。
ならば……落としてしまえばいいんだろうかと感じる。
抱けば皆同じでしかないのなら、彼女もそうして落とせば所詮は他の誰とも変わらないのではないかと思う。
酷く短絡的な考え方に思えたが、そうでもしなければざわつく自らの気持ちを落ち着かせることもできなかった……。
強い割りに飲みやすいワインを選んで空ける内に、彼女が酔ってきているのが知れた。
この私を拒むのなら酔わせて力ずくだろうと……などと下世話に考えていることに吐き気がしてくる。
自身に感じる嫌悪を胸の奥へ押しとどめて、
「……永瀬さん? もう酔ってしまわれたのですか?」
労るようにも声をかけてみるが、あまり大した反応も返らなかった。
酔ってしまったのかと、仕方なさと好都合だとも思うない混ぜの気持ちを抱えて、彼女を支えラウンジを出た──。
この後ホテルにでも泊まっていこうかと考えつつ、エレベーターの昇降ボタンを押した。
……と、彼女がふいに私を見上げた。
酔いが覚めたのかと思っていると、「……ん…眠い……」呟いて、胸元に凭れかかるとそのまますぅーっと寝入ってしまった。
瞬間、胸がドキリとするのを感じた。
「どうして、こんな無防備に眠れるんだ……」
寝顔を見下ろして呟く。
自分は他人の前でこんな風に眠れたことすらも……いくら酔っているとは言え緊張感がなさすぎるんじゃないかと思う。
けれど緊張が解かれ緩んだ寝顔は、どこか可愛らしくも窺えるようで、
エレベーターでロビーまで降りると、フロントには向かわずに、彼女を抱えてついタクシーに乗り込んだ。
このまま、手放したくはない想いが込み上げていた……。
自宅への行き先を告げてシートに背中を倒すと、肩に凭れて眠る顔をじっと見つめていた……。