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「…」
とても不安…こうして来るのは二度目だったよね…夏?ぐらいに一人で来たなぁ…
でも、今回は、呼ばれたんだ。どうしたんだろう…?
なんだか嫌な予感が少しするんだけど…気のせいだといいな…うん。
「お邪魔します…」
ギィ…と、年季の入ったドアの音が響く。
あれ?誰もいないのかな…?真っ暗だ。電気ない…日が暮れてるからかな?
「あのー、誰か居ませんか?」
恐る恐る奥に入っていくと…本当に誰も居ない。
怖いよぉ…あ。目の前に、紅く光っている水晶がある。なんだろう、吸い寄せられる…綺麗…
手を差し伸べた瞬間…
「触らないで」
「えっ!?」
びっっくりしたぁぁ…っ!急に後ろから現れないでよぉぉ…!
「彩さん?えと…勝手にお邪魔してすみません…」
「ああ、別にいいわ。私が呼んだんだし。ごめんなさいね、ちょっと奥の方で本を探していたの「?
「あぁ、そうなんですか…」
「あと、その水晶。触ったらやばいわよ?私の長年の魔力が込められているのだから」
「へぇ…?ごめんなさい、綺麗だったので…思わず手を差し伸べてしまいました…」
「そう。気をつけてね」
「はい…」
一瞬命の危機を感じた気がするんだけど…「触らないで」って言った時の声、すごく冷たくて…まるで、氷のようだった。
「ま、ここに座って。今紅茶を淹れるわね」
「ありがとうございます…」
「安心して。悪いことはしないわ。といっても…今は霜月が居ないからね」
「どうしたんですか?」
「えっと…ちょっと本部に呼ばれて。霜月は私の警備担当らしいのよ。よくわからないけれど、組織の」
「へぇ…?そんなのがあるんですね…」
「そうみたい。私も詳しくは知らないのだけれど…ね」
「…」
なんだか、いつもと何かがおかしい、気がする。なんだろう。この違和感…
この屋敷にいるのは、私と、彩さんだけ。でも、誰かがいるような…
「あら、素敵な子じゃない」
「一度見てみたかったんだよなぁ」
「え?誰…」
「私の使い魔。紫と翡翠よ。ふふ、長い付き合いなの」
「へぇ…?」
使い魔って、黒猫とか動物のイメージだったんですが…思ってたのと違う。
あ、でもなんか彩さんこの前動物苦手って言ってたから、それかな?
「最近寒くなってきたわよねぇ…ほんっと、居心地いい」
「え?」
「私は寒さが強さの源でもあるのよね。だから、冬は警戒されがちなのよ。力を抑えていても、呪ってしまうかもしれない。嫌になっちゃう」
「…制御できないんですか?」
「まぁ、ある程度は…ね。冬はどうしても外れてしまうのよ。抑えが」
「へぇ…?」
「そう。魔力に耐えられず、意識も持って行かれて、妖怪としての本能のままになってしまう。アルコールに酔うのと似ているわね」
本能に、酔う…なんだか妖怪ってやっぱり、怖いなぁ。
でも、この世界に慣れてきてしまった私は、すこし、変な気分になる。
本当に、帰りたいのかと。
「あなたは、現世に帰りたいとか、思ったりしないの?」
「…」
言葉が、出てこない。どっちなんだろう。
「わかんないんです。もちろん帰りたい気持ちはあるけど、ここにも残りたくて。行き来ができたらな、って思うこともあって。そんなこと、できないと思いますけど」
「できるのよ」
「え?」
「現世と隠世の境界線…結界を壊せば」
「…」
「私にはそれができる。何百年も、蓄えてきたこの魔力で」