テラーノベル
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嬉しかった言葉が、枷になる
#四季愛され #卒業if #練馬戦闘部隊所属if
01
戦闘が終わり、あたりに静けさが戻った。
四季は血で作った銃を下ろし、一言。
「おしっ!これで終わり!」
その一声で仲間が四季の周りに集まってきた。
「流石一ノ瀬だな!」
「いや〜、おかげで一瞬で終わった!」
皆がそう言って笑いあっている。
「やっぱ一ノ瀬が前に出ると安心するよな」
「強いし、失敗しないしな!」
その言葉に四季は、照れながら笑った。
「なんだよそれw俺まかせっすか〜?」
軽く否定しながらも、胸の奥が満たされていく。頼られている。信頼されている。それが四季の中ではっきりと感じられた。
_強い…か
そう言われるのは嫌じゃなかった。むしろ嬉しく感じていた。四季は自分が特別だとは思っていない。たしかに炎鬼というチートみたいな力は持っているが、その力とは別に、ただ自分ができることをやっているだけだった。誰かが傷つくならその誰かを守りたい。自分がどうにかできるなら、自分でどうにかしたい。
「一ノ瀬なら大丈夫だな」
その言葉に対していつも即答だった。
「もちろん!次も俺頑張るわ!」
それは虚勢でも、無理でもなかった。自分ならやれる、と本気で思っていた。期待に応えれることは嬉しかったし、殺られる、なんての恐怖すらなかった。信頼されることは誇らしかったから。まだ、その重さを知らなかったから。
四季は周りを見ると、仲間の視線は自分に向いてることで改めて思う。
_期待に応えたい
その気持ちは純粋な心で、迷いもなかった。
この言葉がいつか自分を縛る鎖になるなんて、この時の四季はまだ想像していなかった。
02
次の任務は少し長引いた。敵はいつもとほぼ変わらない同じ強さ。聞いてた情報とも一致、仲間の配置も完璧。それでも四季は、戦いの中で息を詰まらせていた。
_疲れてるな…
それを自覚できるぐらいには疲労が溜まっていた。だがその思考すら四季はすぐに払ってしまった。
「一ノ瀬、いけるか?」
後ろから戦闘部隊の隊長に声をかけられ、反射的に振り向いた。
「あっ、はい!大丈夫っす!」
その答えも反射だった。だが偽ってはいない。なんてたって、迷う理由がないのだから。
「だよな。炎鬼だし一ノ瀬なら問題ないな」
そこ言葉を聞いた途端、胸の奥で何かが引っかかった。
問題ない。その言葉が原因なのだろうか。答えはわからないが、さっき感じた疲労。口に出すほどではない。そう思っていたはずなのに。
四季は口を開きかけて、閉じた。
_今、言うことじゃない
自分が戦線離脱すれば周りに迷惑をかける。自分がいなくなれば誰か怪我するかもしれない。そう考えてしまうのは、もう癖だった。
「俺なら大丈夫…です…」
自然に言葉がでる。周りはそれを疑いもしない。
「お前がいると安心だな」
「頼りにしてるぞ」
普段嬉しかったはずの言葉が少し胸に突っかかった。
_その期待が痛い
そんなことを考えが浮かんだことに、四季は気づかないふりをした。自分なら大丈夫。動ける。まだやれる。そう言い聞かせてる必要が時点で、どこかズレが生じていることを、薄々感じながら。
「一ノ瀬は失敗しない」
その言葉を聞いて、四季はいつものように笑った。けれど、その笑顔は、少しだけ力が入っていた。
_失敗、できないな…
そんな考えが頭を過ぎったのは、この時が初めてだった。
03
とある任務の合間、短い休止が入った。四季は壁に背を預け、呼吸を整える。息が少しだけ浅い。腕に走る痺れを、無意識に握りつぶす。
_大丈夫。まだ動ける
そう思い込もうとしている自分に、四季は気づかなかった。
「一ノ瀬」
低い声が名前を呼ぶ。顔をあげるとそこに居たのは真澄だった。
「真澄隊長…」
「さっきの動き、雑だったなぁ?」
表情が変わらないため、意図はよく読み取れないが、責めている調子ではなかった。事実を確認させる声だった。
「…そう…かな?」
真澄は四季をじっと見る。心の内まで観察するような目つきだった。
「お前、疲れてんだろ」
短い一言。それなのに、四季の胸の奥はきしむ音がした。
_言っても、いいのだろうか
一瞬だけそんな考えが浮かぶ。違和感。疲労。判断の鈍り。全部、たしかにあった。しかし、その直後、背後から聞こえた声で、その考えが流れ去る。
「でも一ノ瀬は大丈夫っすよね?」
「そうですよ。一ノ瀬は失敗しませんし!」
軽い調子。悪意の無い言葉。疑いのない声。気づけば四季は、勝手に口が開いていた。
「真澄隊長、此奴等が言うように俺大丈夫だぜ?」
真澄の目が、僅かに細くなる。
「…自己管理ぐらい手前でしろよ」
それ以上はなんも言わなかった。止めることも、命令もしない。四季はその沈黙を許可のように受け取ってしまった。
「次も俺が前に出るから安心しろよ!」
そう言った途端、胸の奥で何かがはっきりと音を立てて締まる。
_期待されている 信頼してくれてる 任されてる
仲間の視線が集まる。安心したような顔、当然だという空気。
_弱音なんて言えない
先程真澄に言われた言葉が、頭の片隅に残っている。
『疲れてんだろ』
分かっている。でも、それでも
『一ノ瀬なら大丈夫だ』
その言葉が背中を押した。押したというより、逃げ道を塞いだ。四季は前に出る。自分で選んだつもりで。
本当は、選ばされていることに気づかないまま。
04
次の任務。戦闘は、想定よりも激しくなった。敵の数が今までより多い。動きも、予想より1段速い。
「一ノ瀬!どうする!?」
仲間の声が飛ぶ。途端、四季の視界に全体が入った。配置。距離。退路。本来ならここで、1度下がるべきだった。
_いや
その考えを四季は切り捨ててしまった。
「俺が前に出る!皆はそのままの位置で!」
声ははっきりしていた。迷いがないように。いつも通りに。
「了解!」
返事が帰ってくる。その即答が、胸に重くのしかかった。
_絶対に、失敗できない
無意識に歯を食いしばり、四季は踏み込んだ。一気に距離を詰める。撃つ。躱す。受ける。
_いける まだいける
そう言い聞かせながら、視界の端で何かがズレてくのを感じた。仲間の位置が、先程と違う。連携が、ほんの一拍遅れる。
「一ノ瀬!」
警告が聞こえた時には、もう遅かった。敵の動きが変わる。敵は離れた味方のところに行っていた。四季が対応しきれなかったその一瞬。
「避けろ!!」
仲間が、危険な位置に居る。四季の判断が、危険に晒させた。銃を撃っても間に合わない。先に敵の攻撃が届く。それに体が思うように動かない。
『疲れてんだろ』
真澄の言葉が、頭を過ぎる。
_俺がちゃんと、下がらせれば
敵を一掃した後、戦場に静寂が広がる。仲間は無事だった。けれど無傷ではなかった。
「…すみません」
手当を受ける仲間に声をかける。その時四季は自分の手が震えてることに気づいた。止めたくても止めれない。
誰も怒らなかった、責めなかった
「一ノ瀬が前に出てくれたおかげだ」
「おかげで被害は最小限だ」
その言葉が胸に突き刺さる。
_違う
言葉が、喉まで来て、消えた。
勝ったのは結果論だ。仲間を危険に晒したのは、紛れもなく自分だった。
強いから 失敗しないから 大丈夫だと思われていたから
その期待に応えようとして、四季は1番やってはいけない判断をした。
戦場の片隅で、四季は視線を落とす。 あの言葉たちが、頭の中で反響する。
「一ノ瀬は強い」
「一ノ瀬なら大丈夫」
「一ノ瀬は失敗しない」
それはもう、誇りじゃなかった。 守るための力でもなかった。
_逃げ道を塞ぐ、枷だった。
四季は、初めてはっきりとそれを自覚する。 期待に応えた結果が、 仲間を危険に晒すという形で現れたことを。
05
戦闘後の空気は、重かった。
地下に戻ったあと、四季は真澄に呼び出されていた。
「…失礼します」
前まではノックもなしに入っていたが今はもう学んだ。
「…四季」
隊長室に入ると、そこには無陀野と馨もいた。そして真澄が口を開く。
「来い」
四季は一瞬だけ迷ってから、ゆっくりと歩み寄った。
「なんで呼び出されたか、わかってんな?」
真澄と無陀野は真正面から四季を見る。
「なぜ撤退を選ばなかった」
責める声じゃない。 だからこそ、逃げ場がなかった。
四季は口を開く。だが 言葉が、出てこない。
「お前なら気づいていたはずだ」
「敵の動きも、味方の位置も」
「無理をしていることも」
淡々とした言葉が、胸に刺さる。
「それでも前に出た理由を言え」
その一言で、何かが切れた。
「だって……!」
声が、思ったより大きくなっていた。
「俺が行かなきゃって思ったんだよ! 皆、俺なら大丈夫だって…! 失敗しないって、そう言われて…!」
言葉が止まらない。
「俺だって頑張ってるんだよ! 限界感じてても、弱音なんて吐けないし! 期待に応えなきゃって、裏切れないって…!」
拳を握りしめる。 震えているのが、自分でも分かる。
「俺が止まったら、皆が困るだろ! 俺がやればいいって…ずっと、そうしてきたんだ!」
息が荒くなる。 喉が、痛い。
真澄と無陀野と馨は黙って聞いていた。 途中で遮らない。 目も逸らさない。
全部吐き出したあと、 四季の声だけが、場に残った。
「…それが、強いってことだって思ったんだよ」
ぽつりと落ちた言葉は、 さっきまでの叫びよりも弱かった。
真澄は、ため息を吐く。
「一ノ瀬」
低い声で、はっきりと言う。
「お前のそれは強さじゃない」
四季の肩が、びくりと揺れる。
「それは_壊れ方だ」
続けて、無陀野は言う。
「期待に応えるために、限界を黙るのは責任じゃない。 それは、周りを信じていない判断だ」
きつい言葉なのに、不思議と突き放されている感じはなかった。
「お前が倒れたら、誰が困ると思う」
四季は、答えられない。
「四季くん、一人で背負わないで 大丈夫じゃないと言うのも、隊長格の仕事だ」
その言葉に、四季の目が潤む。
「…でも」
声が震える。
「それでも、俺は…」
真澄は、最後にこう言った。
「期待は、信頼だ。 だが、信頼は壊れてもいい前提で預けるものだ。 壊れたら終わりなら、それはただの条件だ」
四季は、俯いた。
「…俺」
言葉が詰まる。
「俺、ずっと怖かったんだ」
その一言で、限界が来た。
06
報告は簡潔だった。 戦闘の経過、判断の理由、結果。 真澄隊長の声は淡々としていて、感情は挟まれない。
話を聞き終えたあと、 無陀野と馨はしばらく黙っていた。
「…四季」
名前を呼ばれただけで、背筋が伸びる。 逃げ場はない。 でも、不思議と足はすくまなかった。
「お前は、自分が何を間違えたか、分かってるか?」
「…うん」
即答はできた。 それが、さっきまでの自分との違いだった。
「撤退判断を、分かってて捨てた。 情報共有し怠った …一人で背負った」
無陀野はいつも通りの声のトーンで告げた。
「減点だらけだな」
懐かしい、言葉だったを
「強いから前に出たんじゃない。 強いと言われてる自分を壊したくなくて前に出た」
図星だった。 胸の奥が、きしむ。その様子を見て馨が声を発した。
「あのね四季くん。期待に応えるってのは 結果を保証することじゃない。 過程を隠さないことだよ」
「…」
「限界を言わないのは、美徳でも責任でもない。 ただの独りよがりなんだ」
四季は唇を噛んだ。 反論は、出てこなかった。
「だが」
真澄のその一言で、空気が変わる。
「今回、仲間は戻ってきた。 それは偶然もあるし、運もある。 だがまぁ、お前が頑張ったのも事実だ」
今度は無陀野が、四季をまっすぐに見る。
「だから、やり直しだ」
「……え?」
「任務から降ろさない。 外さない。 ただし、次は一人で背負わせない」
馨が、静かに頷く。
「判断に迷ったら、僕でもいいから言って。」
「大丈夫じゃないを共有しろ」
「それができないなら、前には出さない」
命令だった。 でも、拒絶じゃない。 四季の胸に、じわりと何かが広がる。
「…俺」
声が震える。
「俺、また…」
「やらかすだろうな」
真澄はあっさり言った。
「だから見てるよ」
「期待はする。 でもな、失敗前提でだ」
その言葉に、四季は息を詰めた。
_失敗前提
それは、条件じゃなかった。 壊れても、戻ってこられる場所の提示だった。
「…うん」
短く、でもはっきりと答える。
そしてまた、無陀野は口を開く。
「強さというものは 黙ることじゃない。 言えることだ」
そう言って無陀野は部屋を出た。その背中を見送りながら、 四季は拳を、今度は強く握らなかった。
_まだ怖い。 でも、独りじゃない。
「四季くんなら大丈夫」
その言葉の意味が、
少しだけ、正しい形に戻った気がした。
end
あとがき
全然キャラ出せてなくて死ぬ😇まぁ書きたいの書けたから私は満足です。
こっから私情です。
いやぁ…東野圭吾さんの小説面白すぎて一生読める。今はブラックショーマン読んでますが冒頭から面白いので皆さんも読みましょう。
そして私は一生ファンデに悩んでます。fweeの下地がやっと手に入ってくっそ良かったからファンデも買うかめっちゃ迷ってます。なんか乾燥しないファンデ知りませんか?
てことでさいなら!
コメント
6件
泣きました。ありがとうございます。表現や感情が伝わってきて凄い感動しました。
最高の作品でした! 四季君の心、嬉しいと思っていた 言葉が段々と枷になっている所や 皆からの言葉に救われていく所、 物凄く伝わってきました。
キャラのセリフや四季くんの心情だったり、もう大好きです! 表現の仕方だったり、書き方だったり、四季くんが最初は嬉しいって思ってたのがだんだんしんどくなってしまったりとか伝わってきたし、みんながめっちゃ優しいのもすっごく伝わってきました!最高(,,> <,,) 化粧は…あまり詳しくなくて💦 すみません!