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「久しぶり、由梨ちゃん。僕は君のお父さんの依頼で来たんだ。」

と店長が答えると、彼女は

「お父さんから……?」

と言い、持っていた人形をぎゅっと抱きしめた。

「お客さま、こちらへどうぞ。お部屋まで案内致します。」

と使用人だろうか、ひょこっと急に出てきて俺たちを部屋に誘導した。

「では、私はこれで失礼いたします。」

と言って使用人は去っていった。

「あの子とどういう関係なんですか?久しぶりって言ってましたけど……」

と聞くと、店長は

「…あー……姪っ子だよ、僕の。湊は僕の腹違いの兄なの。多分小さい時に一度だけ会ったのが最後だからあの子も覚えてないよ。」

「ほほう、つまりあの…由梨ちゃん?って子はさっき、『誰だよこのおっさん状態』だった訳ですか。」

それを言った瞬間、思い切り踵で足を踏まれた。

この人お洒落だからちょっと高いヒール履いててクッソ痛かった。

えぇ〜湊さんが兄ってことは店長結構歳行ってると思ったんだけど…30代前半くらい?湊さんは見た目だけだと30代後半に見えたから……。

「ちなみに幽は34だよ」

「は!?見た目若っ!!!」

「え?ありがとう〜!」

「え、あ、はい。」

店長は俺を見てため息をつくと、

「…そんなことよりさ、今回の件はどんななの、湊。」

と聞いた。そういえば依頼内容をまだ聞いていなかった。

「ああ、それなんだが……」

湊さんの話を簡単にまとめるとこうだった。

数ヶ月前、娘と一緒に骨董市へ出掛けた際、娘がある人形に一目惚れしその場で購入したそうだ。

だがそれから娘の様子がおかしくなった。その人形が着ていたドレスを欲しがり、口数は減り、表情の起伏も少なくなり常にその人形を抱え、日に日にまるで人形の生写しかと思うほどに変わっていってしまったらしい。それで元の娘に戻す方法を教えてほしくて店長に連絡したそうだ。

「そんなこと言われても僕はオカルト専門じゃないし…大体、由梨ちゃんが元々そういう性格なんじゃないの。あのくらいの年齢で性格って決まってくるもんでしょ?それで元に戻せっていう方が無理あるよ。」

「そうなんだよなぁ……。でもお前、こういうの得意だろ?」

「確かに僕は人形屋だけど、なんでも屋じゃありません!」

店長が珍しく声を荒らげている。

「あの、店長……。俺からも一ついいですか?」

「なに!」

怒号混じりで返ってきた返事にビビりながら、

「まず由梨ちゃんに話聞いたらいいと思うんですけど……」

と言うと、店長の目がかっと開き、「お前天才だな」という目で見てきた。美人の目力、怖いです。

「よし!そうと決まれば早速行こうか!」と勢いよく立ち上がり、由梨ちゃんの部屋へと向かった。

コンコンとノックすると中から「はい……」と小さく可愛らしい、しかし無機質な声が聞こえた。

「入ってもいいかな?」

「……はい。どうぞ……」

ドアを開けると、少女は椅子に座り自分とそっくりの人形の髪を櫛でとかしていた。店長は由梨ちゃんにすたすたと歩み寄っていき、

「なんで君はその人形の真似事なんてしてるの?」

…いや、聞き方………高圧的すぎるだろ……

「まね……?」

「そう!人形は、動かず!喋らず!そして人ならざる美しさ!……つまり、人間である君には一生その人形と同じにはなれない、そんなの僕の愛する人形じゃない。……何か理由があるんだろ?」

そう店長が捲し立てると、少女は

「私…私ね、人形になりたいわけじゃないの。」

と話し始めた。先程とは違い少しうわずったような声だった。

「…この人形を買った時ね、お父さんが『綺麗な人形だなぁ。お前の母さんに似てるよ』って。

お母さん、もういないから……お母さんは綺麗な青の目と金髪だったんだって。私は髪の色とか目の色はお父さんに似てたけどね、顔だけはお母さんに似てるって言われて、どうしても…どうしてもお母さんに会いたかったの。

この人形みたいになれば鏡の中でお母さんに会えると思って。」

一通り話を聞いた店長は

「…そっか。でも、君のお父さん心配してるよ。…君は君なんだ。人間が人形になれないように、君も君のお母さんにはなれない。……湊は、君を通して君の母親を見てるんじゃない。

君自身を見てるんだ。………僕と違って、ちゃんと親から愛されてるんだから、ありがたく受け入れときなよ」

店長はそれだけ言ってその部屋から出ていってしまった。俺を置いてくなよ。

店に戻って数時間後、湊さんから電話が来て、『娘と話ができたよ。ありがとう』と感謝された。

おれなんもしてないけど。

…ゆうて店長もなんもしてなくないか?キレてただけじゃね?と思い、店長に懐疑の目を向けると、

「何考えてるかなんとなく分かるけど、いっつもこんな感じの依頼じゃないからね!」

と怒られた。それにしても店長、いい感じのこと言ってたな。

イケメンは名言も言えるのか。

そんなことを考えながら客のいない店内を眺め、カウンターに頬杖をついた。







こんにちは、あるいはこんばんは。作者の和多莱ミヨです。苗字は『わたらい』って読みます。

これで第一話完結でございます。やったぜ。

書いた感想としては…ミステリーってなんだ?となってしまい、ミステリーの概念について考え始めてしまったので、途中からはほぼ脳死で書いてました。

普通だけどちょっと失礼な葛一月くんと、幼稚で不躾なイケメン店長、紗凪幽くんの活躍を今後もご期待ください。

それでは。

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