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『まあ待て待て、お嬢はワシの態(さま)を見て心配になってしまったんじゃろうて、この子も優しい子じゃ、レイブやシパイ少年が悲しむような事はするまいよ! それになバストロが言った通り『シンセイギン』のアーティファクトは捨てる訳には行かないんじゃぞい、これらはな『アクマ』を開放するために必要不可欠な物なんじゃそうな』
「あ、そう言えばさっき聞いたような……」
「あーそうだったわね…… そうだそうだ……」
バタバタしっ放しで失念していたメンバー達は漸(ようや)く先程の話を思い出したようだ。
ゼムガレのナイフ始め『シンセイギン』、ゴライアスの子達が持つアーティファクトは、『アクマ』と呼ばれる神々を開放する為に必要、とっくにそう特定していたじゃないか、全く。
その話が出た際にこの場にいなかった首長竜っぽいズメイ種、ガイランゲルが言う。
『『アクマ』の開放か、まんま御伽噺(おとぎばなし)だな』
レイブはその声に答えて聞く。
「御伽噺があるの? このゼムガレのナイフに関わる事なら、僕はどんなに小さな事でも知って置きたいんだ! ガイランゲルのおじさん、聞かせてくれないかな?」
『お、おじさん? んーまあ良いか、話してやる、と言っても荒唐無稽(こうとうむけい)な話なんだがなぁ、むかーしむかしってやつだよ、その昔、世界の人々はそれはそれは幸せに暮らしていたんだそうでな、我々竜は小さく非力だったらしく、魔獣は豊かな山野を自由に走り回っている、そんな楽園のような時代が有ったと言うんだぞ』
「へぇー、ニンゲン達が幸せに、それに竜が小さい、のか…… 魔獣は守護獣や獣奴(じゅうど)じゃ無くて自由気ままにぃ? それは夢みたいな世界だねぇ~♪ う、うん? その世界にはモンスター、魔物は居なかったのかなぁ?」
ガイランゲルは微笑を浮かべながら答えた、多分レイブの素直な感想が気に入ったのではなかろうか。
『ははは、確かに夢の世界だよなっ! 更に驚けよレイブ、その古代の世界ではな、モンスター達は一匹の例外も無く、人間に飼育されていた、そう言われているんだよ! どうだ? ビックリしたんじゃないか? あの凶悪なモンスター達がな、ある集団は食肉となる為だけに大人しく飼われ、それ以外の者達もな、只の愛玩動物として人間に可愛がられるだけでその生を終えていた、そんな風に言い伝えられているんだぞ? 信じられないだろう♪』
レイブは大きめな目を限界まで見開いてこの言葉に返したのである。
「えええっ! そ、そんなぁっ! 今の時代では最弱種、数も少ないし最も弱い人間、がぁ? 昔はそんなに強かったなんてぇ…… そっか、御伽噺、だもんね…… 本当にそうだったら良かったんだけどぉ、只の物語なんだもんね、そうかそうか…… えへへ、ガイランゲルさんありがとう、思わず夢中になって聞いちゃったよ、面白い物語だったよ、ごめんね、ありがとう……」
『いいや、謝らないでくれ、俺自身もこの物語で語られる世界がな、本当に存在していたのならどんなに良いか…… 幼い頃にそう想った物だよ…… レイブ、お前と同じだよ、ふふふ』
「ガイランゲルおじさん…… へへへっ……」
『なっ? ふふふ……』
なにやら心を通じ合えた感じのレイブ&ガイランゲルである。