「ねぇ翔太…こっち来てよ」
岩本が手を広げて呼んでいる
「ちょっと待って!今忙しい…」
「忙しいって、ずっとスマホいじってるだけでしょ〜」
「TikTok見てるの!この業界にいる以上…流行りを知っておくのも大切な仕事」
もっともらしい台詞を並べて、ソファーの上に寝転がる渡辺に…
「ただ、翔太が見たいだけでしょ〜」
頬を膨らませた岩本が、渡辺の手からスマホを奪う
「お前っ…おい、返せって!」
「嫌だ!これがあると、翔太…俺の方見てくれないもん」
岩本は高い身長を活かし、高い棚の上に渡辺のスマホをポンと置いた
「照!返せって…」
渡辺は棚の上からスマホを取ろうと、椅子を持ち出しその上に乗る
「翔太、駄目!危ないから…」
手を伸ばしてみるが、もう少しの所で届かない
「ん〜もうちょっと…」
椅子の上に爪先立ちして、何としてでも取ってやろうと躍起になった…その時
「うわっ!わぁぁー!」
椅子の上でバランスを崩した渡辺が、落ちそうになる
「翔太!」
間一髪で、岩本に抱き止められる様にして…渡辺は事なきを得た
「びっくりした〜!死ぬかと思った…」
「この位の高さじゃ死ねないよ…。それに俺がいる時は…絶対、翔太の事は守るから」
岩本は、そう言って抱き締める
「元々、照がスマホ奪ったのが悪いんだろ…」
「だって寂しかったんだもん」
「でもまぁ、助かった…///」
素直じゃない渡辺は、悔しそうにそう言った
「反省した?」
「………」
「ねぇ、聞いてる!」
「はいはい、聞いてますよ〜」
身体を揺すられ、仕方なく答える
「むぅ〜……」
渡辺の素っ気ない態度に、岩本が不服そうな顔をする
「何だよ、その顔…どうすりゃ機嫌直してくれるんだ?」
「じゃあキスして。翔太からしてくれたら、許してあげる」
普段なら強要されると絶対にしない、渡辺の性格を分かった上での殺し文句
「ほら、無理でしょ…っ!んっ……!」
岩本の唇に柔らかい感触…目を見開いて何事かと確かめると…渡辺の顔が離れて行く瞬間だった
「ねぇ照、愛してる…。だから、スマホ返して」
笑いながら手を出して来た渡辺の姿に
驚いて声が出ない…
「なぁ照、話聞いてる?」
不満そうな顔をして、渡辺が声を掛ける
「言ったとうりキスしたから、俺のスマホ返してよ…」
悪びれずにそう告げる渡辺と、今だ固まったままの岩本
「ねぇ〜照、聞いてる〜?」
身体を何度も揺すられて、もう降参と手を上げる
【惚れたモノの弱み】とは、なんと的を得た言葉なのだろう…
自分は一生、翔太には敵わないのだろうと
岩本は、心の中で【参りました】と…手に持った白旗を振って見せた
完
【寄り添う2人】
とりあえず…この物語の本編は、ここで終了です。
読んでいただき、ありがとうございました。
おその★
コメント
8件
天才すぎるー
