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にゃーにゃ
また少し、佐久間くんの様子が変わった。ぼんやりしていることが増えたと思う。佐久間くんにどうしたのか聞いても、曖昧に笑ってはぐらかすだけだ。
そういえば、最近はあまりあの人の話をしない。
悲しげな顔でため息ついてるところを見なくなったのはいいけど、今の状態とどっちがマシなのか。
考えてるけど、理由が分からない以上どうしようもない。
「なあ、めめ。さっくんどうしたんやろ」
「…そうだね」
「よく2人でご飯行ったり家に行ったりしてるやん。何か聞いてないん?」
「うん…何があったのか、教えてくれなくて」
「もー、しっかりしいや! さっくん元気に出来るん、めめしかおらんやろ」
「そう、かな」
というか、何で康二にバレてるんだろ。
ラウールには早々に佐久間くんへの気持ちを見抜かれてたから、そこ経由で何か聞いたのかもしれない。
応援してくれるのはありがたいけど、恥ずかしいから止めて欲しい。
それでも背中を押してもらえたのは確かだから、その勢いで佐久間くんの近くに歩いていく。
「佐久間くん」
「え、あ…蓮。 な、何?」
「…そろそろ俺と佐久間くんのメイクの番だから。一緒に行こう?」
「あ、そっか。そうだな…行こっか」
へらっと力の抜けた顔で笑って、佐久間くんが立ち上がる。やっぱり何か元気ない。
失恋で落ち込んでた時とはちょっと違う。
「ねえ、佐久間くん。今日はこの後予定は?」
「あー、うん…家に帰って寝るだけかな」
「じゃあさ、ご飯一緒に食べない? どっかお店でも、俺んちでもいいし」
「んー、そうだな…」
佐久間くんが答える前に到着したメイク室から、大きな音がした。メイクさんの悲鳴も聞こえる。
何だか嫌な予感がして、咄嗟に佐久間くんを背中に庇う。
バンッという衝撃音と、何かが割れる音。開けっ放しのドアから複数のスタッフが転がるように外に出て来た。
その後ろからは金属バットを持った異様な男。
えっ、何この状況。
じりじりと後ろに下がりながら、必死に状況を把握する。
周囲にはへたり込んだりうずくまって身を守る女性スタッフ。相手と距離を取りながら隙をうかがう男性スタッフもいる。
下手に動くと危険なのは間違いない。
「…蓮、どうする」
「刺激するのはまずいと思う」
「だよな…」
ひそひそ声での会話が聞こえたのか、血走った男の目が俺と佐久間くんに向いた。まずい。
「…てめーが新しい男かぁーっ!!」
いやいや誰の? 知らないって。
変に冷静な部分が突っ込みをいれながら、ゆっくり振り上げられた金属バットに気付く。
「蓮! 危ない!!」
「佐久間くんの方が危ないよ!!」
俺を庇おうとでも思ったのか、前に出てこようとした佐久間くんの身体を全力で抱きしめる。そのまま自分の身体を盾にするように、男に背を向けた。
「ちょ、やめろって蓮! 駄目だってば!!」
「いいからおとなしくしてて! 佐久間くんが怪我する方が嫌なんだよ!!」
「っ…! 俺だって蓮が怪我するのやだよ!!」
涙声で怒鳴りながらじたばた暴れる佐久間くんを、腕の中に全力で閉じ込める。そして来るかもしれない衝撃に備えて歯を食いしばった。
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