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#シリアス
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あれから、1ヶ月が経過した。
僕はすっかり、あのフラワーショップ
「SAKURA」の『顔馴染みの常連客』としてのポジションを確立していた。
「いらっしゃい、さっちゃん。今日も来てくれたんだね」
カラン、とドアのベルが鳴るのとほぼ同時に、カウンターの奥からいつもの爽やかな声が飛んでくる。
怜治さんが僕のことを、親しみを込めて「さっちゃん」という愛称で呼ぶようになったのは最近だ。
初めてその呼び名を耳にしたときのことは、今でも鮮明に覚えている。
驚きのあまり頭が一瞬で真っ白になって、完全にフリーズしてしまったのだ。
『えっ、さ、さっちゃん……!?』っと、情けないくらい声が裏返ってしまって
あのときは本当に恥ずかしかった。
『だって、君の名前は〝朔斗〟だからね。もっと親しみを込めて呼びたくて。……もしかして、嫌だったかな?』
そう言って、困ったように眉を下げて屈屈なく笑う怜治さんがあまりにも眩しくて。
僕は心臓を激しくバクバクさせながらも
『い、いえ!とんでもないです、すごく嬉しいです!』と食い気気味に即答してしまったのだった。
それ以来、僕は彼から「さっちゃん」と呼ばれることに、心地よい照れ臭さを感じている。
最初は緊張のあまり店内の空気を吸うことすら息苦しかったけれど
何度も何度もお店に足を運ぶうちに、少しずつ
ごく自然な日常の会話ができるようになっていった。
「怜治さん、こんにちは!わぁ、今日はお客さんがすごく多いですね」
僕は入り口近くの鉢植えを避けながら、お店の奥へと歩みを進めた。
夕暮れ時の店内には、数組のカップルや
熱心にディスプレイを眺める若い女性たちの姿があった。
けれど、彼女たちの視線がチラチラと一箇所に向いているのを見れば
全員が怜治さんを目当てに来店しているのは一目瞭然だった。
「まあね。夕方は少し混み合うんだ。…でも、俺にとってはさっちゃんが一番の常連さんだよ?」
そう言って、棚のフラワースタンドを整理しながらこちらを振り返った怜治さんの言葉に
胸がどきりと大きく跳ね上がる。
(一番の常連…それって、僕のほうが他の女の子たちより、ちょっとだけ特別扱いされてるって思ってもいいのかな……?)
そんな淡い期待に胸を躍らせる一方で
実は最近、僕の身体はあまり芳しくない状態が続いていた。
理由は、自分でもはっきりと分かっている。
───『発情期』の時期が、確実に近づいているからだ。
僕はまだ、番のいないΩ
だから、周囲にそのことを知られて無駄なトラブルを起こさないよう
欠かさず抑制剤を服用している。
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