テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
このことは、実の両親にさえ話していない。
ただの個人的な内緒事ではあるけれど
余計な心配をかけたくないという僕なりの配慮のつもりだった。
「さっちゃん、最近何か変わったことでもあった? なんだか少し元気がないように見えるけど……」
怜治さんは、作業の手を止めてじっと僕の顔を覗き込んできた。
彼は時々、こうして僕の些細な変化に気づいて気にかけてくれる。
その底なしの優しさが
今の僕にとってはありがたくもあり、同時に胸が締め付けられるほど切なかった。
「はは…実は、その……僕、Ω(オメガ)なんです。それで、もうすぐヒートが来そうな気配があって……ちょっとだけ、体調が悪くて」
咄嗟に口から出た声は、自分でも引くくらいに小さく震えていたかもしれない。
男の自分がオメガであることを告白するのは、やっぱりどこか怖かった。
「…あ、さっちゃん、チョーカーしてるもんね。大丈夫……?辛くない?」
「は、はい……!ちゃんと薬を飲んでコントロールしてるので…なんとか、大丈夫です!」
「そっか。でも、無理は禁物だよ。……それはそうと、さっちゃんには、その…パートナーとか、番はいないんだよね、チョーカーしてるってことは」
予想もしなかった角度からの質問に、僕の顔は一瞬でトマトみたいに真っ赤になった。
「い、いないですよ!全然、そんなの!」
ぶんぶんと激しく両手を振って否定する。
「どうして?さっちゃんならモテそうなのに。良い出会いがないのかな?」
少し不思議そうに首を傾げる怜治さん。
その穏やかで深い瞳に見つめられていると
どうしてか胸の奥に溜まっていた本当の弱音を、残さず打ち明けてしまいたくなるから不思議だ。
「ええと…は、はい。実は……」
僕はぽろっと、心の中に隠していた本音をこぼしてしまった。
「僕、昔からちょっと騙されやすい性格っていうか、抜けてるところがあるみたいで……」
話し終えた瞬間
思った以上に情けない弱音がボロボロと漏れてしまったことに気づき、自分で自分に驚いてしまった。
何やってんだ僕は。
「騙されやすい……?ふふ、でも俺は、さっちゃんのそういう危なっかしくて素直なところが、すごく可愛いんじゃないかなって思うよ」
「ひぇ!?か、可愛くなんかないですっ!男ですし!」
顔から火が出るとはまさにこのことだ。耳の先まで熱い。
「それに、αの人って、なんか圧倒されるというか…どこか怖くて、どうしても信用しきれないところがあって……」
ついつい弱音を吐いてしまう。
「そっか…俺も一応αなんだけど、怖いかな」
「あっ、え?!えっと、怜治さんが怖いって思ったことはないですよ…!優しいですし……!」
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
21
#シリアス
301
30