テラーノベル
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第33話
その日の夜、サンコウの木へ来た。傷だらけで、なんとも言えないけど、力強く生きている。
……ここで、アニカが……っ……
僕は手が震えてしまった。何も無いと自分に語りかけても、震えは止まらない。
駄目だっ……今度、抜け目が一つも無いようにすればいい。あれは、決して許される事では無い。自分が弱かった。
僕は、サンコウの木に手を添えた。
君が、このホルムの広大な大地を見守ってくれたんだね。僕は眠っていたけど、君はずっと逃げられない所で大災厄と復興を見ていた。
……頑張るね。絶対に勝つから、それも見てて。
僕は心の中でそう言って、この場所から離れた。
「ロルフ。もう少しの辛抱だから……生きて。お願い」
そう言うアニカが僕を抱えて馬を走らせている。
何だ? これは……
少しするとアニカの後ろに魔物が来た。
「きゃぁっ!」
アニカはそう言いながら上手く避けている。だけど、何回か当たってるように見える。
……本当になにこれ? 動きたいけど、体が言う事を聞かないし、頭もガンガンする。
痛くて、苦しくて、辛くて、何だろう……
それからまた山まで入って僕にキスをした――
「っ! ……今のは……」
僕は野営場所で寝ていた。
夢だったのか……
首元を拭うとベットリ汗がついて、顔も汗が垂れていた。
こんな所、誰にも見られてはいけない。
僕は川で体を流してから馬に跨った。
……場違い。だからこんな望みをもつのは辞めよう。だって相手はそう思ってないのだから。アニカには自由が無いのに僕が縛り付けるなんて、許されない。というか、首が飛びそう。
こんな生意気で……背も伸ばさないと、みっともないな。
小柄な小僧が、世界を守った姫と女の子の近くにいるなんて……絶対に許される事では無い。経験不足な上、こんな腕だったら、世の中に認められない。
それは分かる。
……アニカとはただの姫と騎士。忘れてはいけない。
だけど、僕はできなかったから罰が当たったのかな?
未熟者だ。気づけなかったのだから……
こんな関係はあってはならないんだ。助けたら、ちゃんと伝え……られるのかな……十五年も経った今も、性格が変わらなくて……皆は進んでるはずなのに……
僕は立ち止まったまま。足踏みもしていない。
アニカたちは頑張っても僕は眠っていた。逝ってしまった人も沢山いるのに……
その日は、僕の誕生日か……皆の命日。死んでしまったのだから……
……嫌いだな。こんな自分が。
僕はそう思いながら青空を見上げた。
三日後。
ルミナに着いた。昔から何も変わらない。変わったと言えば、マルコさんがいない。
「ロルフさん! 何で……? 夢では……」
「夢じゃないよ。大きくなったね」
そう言うとレーナ――マルコさんの長女が僕に抱きついた。
「ビタリ! ロルフさんよ!」
そうレーナが言うとビタリも走ってきた。
「ロ、ロルフさん……心配したんですよ……」
「二人とも元気そうって!」
二人は僕に抱きついて僕の知っている二人のように声をあげて泣いた。
「もう! 心配かけすぎです!」
そう言ってレーナが僕のおでこを力強く突いた。
こんな事もされたな……もっと可愛い力だったけど。
「僕も倒れた時の事はよく覚えて無いんだよね……」
「変わら無いけど、話通りで合ってるんですか?」
ビタリはルミナの町長になったらしい。そんな真面目な話をする時が来るとは思わなかった。
「うん。だけど、今のまま行っても勝てる感じがしないんだよ……だから、お願い。稽古つけて」
「はぁー!? 起きたばかりの人を……」
「やらないと、この世界は……すまない。だけど、また失ってしまう。だから……」
「はいはい。分かりました。もうこうなったら引かないんだから……」
レーナがため息交じりにビタリを見た。
……ビタリ。お願い……
「分かった。騎士団に行ってみて下さい。僕も久しぶりに腕がなります」
「ありがとう。ビタリは背中のやつ?」
僕はビタリの背中にある両手剣を指指した。
二人は、マルコさんの遺伝があるからか、体つきがしっかりしてて、僕は敵わない。
もう、二人とも見上げる背丈だ。
あんなに小さかったのに……もう、ビタリも十七か……
レーナも二十歳……え? 二十歳?
「はい。この剣は特注なんですよ」
「そっか……もう抜かされちゃったな。あんなに小さかったのに」
「時間って儚いな……ロルフさんだってそう思いませんか?」
時間……まぁ、フリオに置いていかれてから度々そう思う事はあったけど……まぁ……
「いつまでも、皆は遠いと思う」
「……そっか。じゃあ、行こうよ。早く見たい」
「分かったよ。ロルフさん。手合わせお願いします」
そう言ってビタリは椅子から立ち上がった。
#互いの過去
上野文
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コメント
1件
めちゃくちゃ泣ける回だった……!!!😭💕 ロルフの自己否定の重さと、それでも前に進もうとする姿が切なくて胸がギュッてなったよ…… サンコウの木のシーン、アニカの夢、そしてレーナ&ビタリとの再会——どの場面も感情がぎっしり詰まってて、読んでて何回も息を呑んだ。 特に「嫌いだな。こんな自分が」からのルミナでの再会で涙がじわっと来た……! 背伸びしない、それでも頑張ろうとするロルフが尊すぎるよ…✨ こはるさんの筆致、やっぱり最高だよ〜!!