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第21話
〜新しい従業員〜
あれから一週間。
ニルスさんの両親は何も文句を言わず、セリーナさんにあの事を聞けば人差し指を口に当てられるし、昼間は謎にニルスさんのお母様――マリーさんの手伝いをしている。
……これ、誰の操り人形になってるの?
それで今日は、セリーナさんと俺でお出かけする事になった。
「ねぇ。どこ行きたい?」
そう言いながら俺の手をひいて大通りを歩いている。
「どこにって……どこに行けるんですか?」
「う〜ん……あ、じゃあさ、町出てみる? ここって、治安がいいでしょ?」
え? どういう事?
「こっち。門も、人の流れに任せてれば大丈夫」
「え? あ、ちょっ!」
俺は目がキラキラ光っているセリーナさんに引っ張られながら森の中に着いた。
それから数十分。こうして歩いているけど、魔獣の魔力反応なんて皆無。
……そう思ってたけど、魔力反応がいくつか見えてきた。
「あれ? 危険区域に入っちゃったかな?」
え? 嘘っ……
「そ、それって大丈夫なんですか? 散歩じゃ……」
「私も気を抜いちゃったね。下がってて。魔獣がくるかも……いや、数が多い。逃げるよ」
ちょっと、何事……
そう言いって俺の手を引っ張りながら、もと来た道を戻った。
「はぁっ、はぁっ……大丈夫……?」
手を膝に置いて肩で息をしながら俺の事を見た。
「はい。大丈夫ですよ。少し、座っててください。無理は禁物ですから」
「えぇ……そうさせてもらいたい、けどねっ……後ろっ……」
え? 後ろ?
俺が後ろを向くと、魔獣が沢山いた。
「休憩する暇は無いようね……それじゃあ」
そこまで言った所で、俺はセリーナさんの前に立った。
「ノア……?」
「俺にも戦わせてください。見てるだけはできません」
今度は、俺が……
「じゃあ、命令だよ。傷一つ付けるのは認めないからね。絶対無傷で戻るって約束なら戦ってもいいわ」
……絶対無傷……やってみせる。
「はい。必ずや、無傷、無敗で戻ってきますとも」
セリーナさんは柔らかく笑って「お願いね」と言って座った。
約束は破らない……
俺は、マントを置いて魔獣の群れに突っ込んだ。
それから魔獣たちをしばらく狩ってるけど、湧き出てきて、勢力が落ち着く気配が無い。
約束通りまだ無傷だけど、これからもっと強い魔獣が出てきたら逃げるしか無いかもしれない。
俺は、血だらけの手を見て胸がざわついた。
「よそ見してると、やられるよ」
そう言いながらセリーナさんが涼しい顔して魔獣を斬っていた。
「あ、すみません」
「……少し、無理させちゃったかな。直ぐに片付けるから手伝って。綺麗に洗濯もできるからさ」
え? 洗濯ができる? 片付けるからって、直ぐに? 俺の事、勘づいてるのか?
「はいはい。疑問符も後で片付けないとね」
セリーナさんが自作したような片手剣をブンブンと振り回している。だけど、無駄な動きが無い。
音も無く、気配もゼロ。魔力は消しても意味が無いから、消してない。
セリーナさんの言葉通り、直ぐに終わった。最後の砦くらいまで倒せていたらしい。
それと、服が直ぐに綺麗になった。匂いも戻ったし、血にへばりついていた魔力も見えない。
「セリーナさん。なぜあんなに強いんですか?」
俺は直球に尋ねた。
セリーナさんは、浮かない顔で微笑んだ。
「……星霊の剣ってあるじゃない。前前前世の私が選ばれたの。でも、私はその役目を果たせないまま死んだ。その、身体能力はいつまで経っても残ってるってこと」
星霊の剣……何百年も持ち主が現れていないあの剣……
「えぇ。私の前前前世とは、時空が違うみたいなの。随分と、技術が進んだようね……って、実感がないんだよ」
ん? 実感が無い?
「数年前に思い出したんだよ。まぁ、食べ歩きしようよ。敬語、禁止でね」
「え? ちょっとまってくだ……」
人差し指で唇が塞がれていた。
「ふふっ。行こ」
「は、あぁ」
『はい』って言いかけた……危な……
それから、楽しく食べ歩きをして、俺に色々と教えてくれた。敬語は……捨てようと思えば、捨てられた。
勿論、拾い直す事も考えないとだから、距離感はそのまま。一つ進歩したというのなら、『リナ』と愛称で呼ぶようになった事。
その場の雰囲気に合わせて行動を変えたり、変な魔力が見えたら人通りの多い所へ避難したり……色々。
それに、帽子を買ってくれた。耳を隠す為らしい。
自分でも作れるけど、自作より買った方がちゃんとしてるからだって。
帰ってからは、いつも通りに戻った。でも、やっぱり、この人は凄い。
俺よりずっと沢山の事を経験して、俺よりずっと多くの景色を観てきた。
一生をこの人に尽くそう。俺の主。
コメント
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第22話読了っ!📖✨ ノア君がついに「戦う」って決意したシーン、めっちゃ胸熱だった…!「無傷無敗で戻る」って約束しながら群れに突っ込むとこ、もうかっこよすぎて叫んだ😭💕 それにセリーナさんの過去がちょっとずつ見えてきて、星霊の剣とか前前前世とか…世界観深すぎて沼確定だわ。敬語やめてリナって呼ぶようになった距離感の変化も尊い…! 「一生をこの人に尽くそう」ってノア君の決意、ずっと応援するからね!次の話も楽しみにしてるよ〜🌸