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💛side
文化祭当日。
朝七時半。
まだ始業時間前だというのに、校舎は普段よりずっと賑やかだった。
廊下には段ボールの匂いと、ペンキの乾ききらない匂いが混ざって漂っている。
教室の扉を開けると、辰哉はすでに脚立の上に立っていた。
💜「照!」
振り返った拍子にバランスを崩す。
💛「危なっ」
慌てて脚立を押さえる。
辰哉は少しだけ体勢を崩したものの、そのまま飛び降りた。
💜「助かった」
💛「気をつけろよ」
💜「照がいるから平気」
さらっと言って笑う。
本人に悪気なんてない。
だから困る。
その一言で、一日中機嫌が良くなってしまう自分がいる。
午前中は接客であっという間だった。
悲鳴。
笑い声。
校内放送。
廊下を走る生徒。
文化祭独特の騒がしさが学校中を包んでいる。
気づけば昼休みになっていた。
💜「疲れたー」
辰哉が床へ座り込む。
💛「まだ半分だぞ」
💜「照」
💛「ん?」
💜「ラムネ飲みたい」
💛「買ってくる」
💜「一緒行く」
立ち上がる辰哉を見て笑う。
少し前までなら何とも思わなかった。
でも今は。
「一緒」が嬉しい。
そんな自分がいた。
自販機へ向かう途中。
廊下は人でいっぱいだった。
肩が何度もぶつかる。
💜「はぐれる」
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#監禁パロ
雪だるまひとひと💙
681
その声と同時に。
辰哉が制服の袖を軽く掴んだ。
ぎゅっと。
本当に軽く。
それだけ。
でも。
その感触だけで鼓動が跳ねる。
💜「……悪い」
すぐ手を離す。
💛「いや」
平静を装う。
無理だった。
こんなの。
意識するなっていうほうが無理だ。
💜side
無意識だった。
人混みではぐれそうになって。
気づいたら照の袖を掴んでいた。
離したあとになって後悔する。
変に思われたかな。
嫌だったかな。
横を見る。
照は何も言わない。
でも耳だけ少し赤かった。
……もしかして。
いや。
期待するな。
勝手に勘違いして傷つくだけだ。
文化祭は大成功だった。
後夜祭まで残る生徒も多く、校庭には笑い声が響いている。
照と並んで歩く。
校舎の窓から漏れる明かり。
秋が近づいた夜風。
全部が少しだけ特別だった。
💜「終わっちゃったな」
💛「早かった」
💜「高校ってこうやって終わるのかな」
💛「まだ一年だろ」
💜「でもさ」
辰哉は空を見上げる。
💜「楽しい時間って、一瞬じゃん」
その言葉に返事ができなかった。
俺も、同じことを思っていたから。
💛side
文化祭の代休。
せっかくだからと、電車に乗って隣町へ遊びに来た。
ショッピングモール。
ゲームセンター。
本屋。
くだらないことで笑って。
くだらないことで競い合って。
気づけば夕方になっていた。
💜「まだ帰りたくない」
辰哉がぼそっと言う。
💛「じゃあ、もう少し」
駅前を歩いていると、小さな遊園地が目に入った。
休日でも人は少ない。
ゆっくり回る観覧車だけが、夕焼けを映していた。
💜「乗る?」
💛「高校生二人で?」
💜「いいじゃん」
結局。
二人で乗ることになった。
ゴンドラは静かだった。
街が少しずつ遠ざかる。
オレンジ色だった空は、ゆっくり藍色へ変わっていく。
下を見ると、人が豆粒みたいだった。
💜「高いな」
💛「意外と怖がり?」
💜「ちょっとだけ」
笑う。
その沈黙が心地よかった。
景色なんて見ていなかった。
視界にはずっと辰哉がいる。
夕焼けに照らされた横顔。
伏せられた睫毛。
窓の外を見る穏やかな表情。
綺麗だと思った。
何度目だろう。
こんなふうに思うのは。
💜side
あと五分。
観覧車が一周するまで。
この空間に二人きり。
言おうと思えば言える。
好き。
その二文字だけ。
でも。
言ってしまえば。
今までみたいに笑えなくなるかもしれない。
もし断られたら。
もし気まずくなったら。
もし、隣を歩けなくなったら。
全部失う。
そんな勇気はなかった。
💜「照」
💛「ん?」
💜「……卒業しても」
言葉が止まる。
💛「卒業しても?」
💜「いや」
違う。
本当は。
“卒業しても一緒にいて”
そう言いたかった。
でも。
飲み込んだ。
💜「なんでもない」
💛side
駅までの帰り道。
空には一番星が光っていた。
辰哉はいつもより静かだった。
俺もだった。
観覧車の中で。
何かが変わった。
もう親友という言葉だけでは、この気持ちは隠せない。
それでも。
好きだと言う勇気はなかった。
この関係が壊れるくらいなら。
ずっと隣にいられる親友でいい。
そんな臆病な願いを抱えたまま。
俺たちは、今日も「また明日」と手を振った。
それがどれほど大切な言葉なのか。
この時の俺たちは、まだ知らなかった。
コメント
3件
観覧車のゴンドラになりたい…
観覧車に2人って、カップルじゃん!!早く言えよ好きって!
「文化祭回」ってだけで甘酸っぱいのに、観覧車のシーンは反則級だったわ…。夕焼けの中で照が辰哉の横顔を「綺麗だ」って思うところ、心臓掴まれた。「好き」って言いたいけど言えないもどかしさ、袖を掴む無意識の距離感、どっちもリアルで刺さる。「卒業しても一緒にいて」って飲み込む辰哉の気持ち、わかるよ…親友でいることが安全牌なんだよな。続きが気になる構成、めっちゃ好きです🔥