テラーノベル
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すたーと!
午後の光が、保健室の窓からやわらかく差し込んでいた。
翔太はベッドからゆっくり体を起こす。
さっきまでの重さが、少しだけ軽くなっていた。
「もう大丈夫そう?」
隣の椅子に座っていた阿部が、心配そうに覗き込む。
「……たぶん」
翔太は小さく答える。
「少し外、行きたい」
阿部は驚いたように瞬きをした。
でもすぐ、優しく笑う。
「いいよ。ゆっくり行こう」
二人は並んで保健室を出た。
廊下を歩く足音が、いつもより静かに響く。
校舎の出口を抜けると、風が頬をかすめた。
その瞬間――
「……っ」
翔太は立ち止まる。
校庭の景色が、目の前に広がっていた。
木々の葉が揺れている。
空は青くて、雲は白くて、夕日が少しずつオレンジに染めていく。
灰色だった世界が、
**ほんの少しだけ色づいて見えた。**
「……阿部」
翔太は小さく呼ぶ。
「見える」
阿部が振り向く。
「なにが?」
翔太は空を指差した。
「色」
その一言に、阿部の目が大きくなる。
そして、ゆっくり微笑んだ。
「よかった」
その言葉は、静かだけど、すごく温かかった。
翔太は少し照れたように笑う。
「まだ全部じゃないけどな」
「それでも十分だよ」
阿部は隣に立つ。
「最初の一歩だから」
夕日が校庭を染めていく。
その光が、二人の影を並べた。
翔太はふと呟く。
「……俺、もう少し頑張る」
「うん」
阿部は頷く。
「一緒に、色を見に行こう」
翔太は少し驚いた顔をした。
でもすぐ、小さく笑う。
「……ああ」
灰色だった世界は、まだ完全じゃない。
それでも、今は違う。
隣には、光をくれる存在がいる。
翔太は空を見上げた。
さっきよりも、ほんの少しだけ――
世界が**鮮やか**に見えた気がした。
🌙 × 💙
じゃ!
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