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「あ、あの…」
クリス殿下はまだ両頬を離してはくださらない。
真っ青な綺麗な瞳と目が合い、次の予感がして目を閉じる。
わたしの唇にクリス殿下の指先が愛しいものにでも触れるかのように優しく触れ、そして、クリス殿下の唇と重なる。
降り注ぐ優しいキスから、だんだん深くなる。
「ん、んっ…」
からだの奥底から、ドクっした感情が込み上げ、自分からもっとキスを求めるようにクリス殿下の首の後ろに手を回し、夢中でクリス殿下を求める。
唇をようやく離すと、クリス殿下にきつく抱きしめられた。
そして、切ない声がわたしの耳元で囁く。
「シャンディ、愛している」
更にきつくぎゅっと抱きしめられた。
胸の奥がきゅっと熱くなる。
「わたしも…」
クリス殿下が聞き取れるか聞き取れないかの小さな声でクリス殿下の胸元で呟いた。
「いつから…一体いつから、シャンディは俺のことを好きだったんだ?俺はシャンディが残した言葉の意味を知る昨夜まで、シャンディはペイトン殿との初恋を忘れていないか、それかいつもずっとそばにいるラスティを想っているのではないかと考えていた。俺に気持ちがあるとは少しも思っていなかった」
昨夜まで…
眠る(フリ)のわたしの頭の上でクリス殿下とラスティが話していたことが思い出された。
ラスティがガフ領で使われるプロポーズの言葉「わたしの死体をよろしく」の意味をクリス殿下に伝えていた。
「ずっと…前ですよ。ペイトン様ではなくて、わたしの初恋はクリス殿下なんですよ。だから、泉で出会った「クリス」がもう会えないと思っていた、終わった恋だと思っていたあの「クリス殿下」であり、自分の目の前いると知った時は、小麦畑で口から心臓が飛び出るかと思ったぐらい驚きました」
わたしの言葉にクリス殿下は激しく動揺したようだ。
わたしをきつく抱きしめていたクリス殿下の腕の力が緩む。
わたしはクリス殿下の胸元から顔を上げ、クリス殿下の真っ青な瞳に動揺が映るのを見る。そして思わず、いたずらっぽく微笑んでしまう。
「驚きました?」
「…いつ、自分の気持ちに気づいたんだ?」
「わたしも3年前、全てが終わってから初恋と初恋が終わったことに気づいたんです。わたしはペイトン様でなくて、あの2か月間をずっとクリス殿下を見ていた。わたし、馬鹿でしょう。クリス殿下の良いところならいっぱい言えるのに、婚約者だったペイトン様の良いところは顔以外言えなかったんですよ」
クリス殿下の動揺を映していた瞳が次第に柔らかく泣きそうな瞳に変わっていく。
その瞳を逸らさずに真っ直ぐに見ながら、言葉を続ける。
「本当は図書室でクリス殿下がわたしに気持ちを打ち明けてくださった時にわたしも自分の気持ちをお伝えしたかったんですが、あの時、タイミングを逃してしまいました。だから、もしかしたら戦死して会えなくなるかも知れないと思った沢で別れる時に、わたしの気持ちを伝えておきたかった。そして、わたしがあの戦いで戦死してもクリス殿下の気持ちの負担にならないようにクリス殿下は知らないと思われたガフ領で使われるプロポーズの言葉をわざと口にしたんですよ」
クリス殿下のいっぱい涙を溜めた瞳から、一筋の涙は溢れる。
わたしは微笑みながら、その涙をわたしの手で拭う。
「もう意味はご存知ですよね。クリス殿下、この先になにがあろうともわたしの死体をお願いしても良いですか?」
「もちろん。俺の死体もシャンディにお願いする」
伝わったことが、気持ちが重なったことが嬉しくって、笑顔なのに笑っているのに涙が次々に溢れる。
「また泣き笑いしている」
クリス殿下が優しい瞳で愛しいもの触れるようにわたしの次々に溢れる涙にキスをしてくれた。