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至高なる拝金主義者
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#転生
高天原ヒロ
3,068
新入生歓迎レクリエーションの翌日の昼休み。学園謎解きラリーの優勝賞品としてもらった無料チケットを手に、ヒマリたちは学食へやって来ていた。
「わぁ……! どれも美味しそうですね!」
ずらりと並んだメニューを前に、思わず目が輝く。
普段なら少し迷ってしまうような豪華な料理も、今日は無料。
せっかくなので、ここは思い切って――。
「私、これにします!」
指差したのは、分厚いステーキがどんと乗った特大ステーキ定食。
「……お前、いきなり一番高いやつ選んだな。」
凌が、呆れたように私を見る。
「だって、せっかくの無料チケットですよ? 高い物を頼んだ方がお得じゃないですか!」
「それもそうやな!」
環季がメニューを覗き込み、にやりと笑った。
「ほんなら俺も、普段は頼まへん全乗せカレーにしよ。」
「じゃあ、僕は海鮮丼にしようかな。」
斗真先輩も楽しそうにメニューを選ぶ。
「ソノ先輩はどれにしますか?」
「私は、いつもの日替わり定食にします。」
「ええっ!?」
ヒマリは思わず声を上げた。
「もっと豪華な物にしなくていいんですか?」
「食べきれる量じゃないと、あとあと自分が苦しいので。」
「さすがソノやなぁ。」
環季が妙に感心する。
「凌会長は、何にするんですか?」
「俺は……ハンバーグとエビフライ定食かな。」
「あーーっ、それっ!!」
突然大きな声を出したヒマリに、凌の肩がビクッと震える。
「な、何だ? どうした!?」
「私、そのメニューと迷ってたんですよ〜!! ハンバーグとエビフライも美味しそうで……。そっちにすれば良かったかなぁ……。」
しゅんとなるヒマリをなだめるように、凌が声をかける。
「分かった分かった……。俺のも後で少し分けてやるから」
「本当ですかっ!?」
途端に目を輝かせるヒマリ。
その姿を見て、凌は小さく息を吐いた。
(はぁ〜。なんで俺……こんな食いしんぼう女のこと、気になってんだろう……?)
そんなやり取りをしながら注文を済ませ、五人で席についた。
すると、すぐに環季が声をかけてきた。
「……そういえばヒマリ、それ……。昨日のステッカー、剥がさんの?」
ヒマリの上着には、昨日の学園ラリーでもらった四枚のステッカーが、それぞれ貼られたままになっている。
「はい。かわいいし……なんだか先輩たちからパワーをもらってるような感じがして嬉しくて。なかなか外せないんです。」
その答えに、ふっとみんなの表情が和らいだ。
「ほんま、ヒマリは健気やね〜。」
環季は目元を押さえ、わざとらしく嘘泣きの仕草をする。
そんな中、斗真が口を開いた。
「ところで、ヒマリちゃん。そのシールの位置って、何か意味があるの?」
ヒマリは首を傾げる。
「シールの位置、ですか?」
言われて、ヒマリは自分の上着を改めて見渡した。
右腕には、ソノの藤の花のステッカー。
左腕には、環季の木の実のステッカー。
右胸には、斗真の雫のステッカー。
そして左胸には、凌の新月のステッカー。
「うーん……。なんとなく、ですかね? 特に意味は考えてなかったんですけど……。」
斗真は意味深に目を細めた。
「へぇー……なんとなく、ね。」
そう言いながら、左胸に貼られた凌のステッカーへ視線を向ける。
左胸――心臓に一番近い場所。
もちろん、考えすぎかもしれない。
けれど斗真には、無意識のうちにヒマリがその場所を選んだようにも思えた。
環季も同じことを感じたらしい。
「良かったなぁ、凌。大事そうに貼ってもろて。」
「は? 何のことだ!?」
当の凌は、その意味をまるで理解していない。
「せやから、ヒマリの一番大事な所に、凌がおるって話や。」
ようやく意味を理解したのか、凌の顔が一気に赤くなった。
「ただのシールの話だろ!? 変な深読みすんな!」
環季はニヤニヤしながら、今度はヒマリへ矛先を向ける。
「ヒマリも、凌のシールを大切にしとるやんなぁ?」
「当然です!」
ヒマリは至極真剣な表情で答えた。
「もちろん、みんな同じように大事なシールなんですけど……。凌会長のシールは、私のことを考えて作ってくれたシールだから……。」
その言葉を聞いた瞬間、凌の動きがぴたりと止まった。
「お、おい、ヒマリ! それ以上は……!!」
しかし、その言葉を遮るように環季が凌の口を塞ぐ。
「んぐっ!?」
その隣では、斗真が興味津々といった様子でヒマリに尋ねた。
「へぇー。それはどういう意味なの?」
「はい。私のシールを作るとしたら黄色の満月だって。だから、自分は深緑色の新月にしたって、凌会長が……。」
ヒマリは嬉しそうに、ことの経緯を説明する。
凌は魂が抜けたように固まり、斗真と環季は声も出ない様子で肩を震わせていた。
「満月に、新月……。とても素敵なデザインですね。」
ソノが静かに呟く。
するとヒマリは、さらに眩しい笑顔を浮かべた。
「はいっ! だから私のお気に入りなんです!」
◇
そんな会話を交わしていると、料理が運ばれてきた。
目の前に並ぶのは、普段よりずっと豪華な料理ばかり。
それを眺めていると、なんだか嬉しくなってくる。
「約束通り、日頃の感謝を込めて、今日は私の奢りですから! 思いっきり食べてくださいね!」
「……ほんま、律儀な子やなぁ。」
環季が笑う。
「ごちそうになります、ヒマリちゃん。」
斗真先輩も微笑んだ。
「お誘いありがとうございます。ごちそうになります。」
ソノが丁寧にお辞儀をする。
「……ごちそうになります。」
凌は、なぜか少し気まずそうだ。
「じゃあ、みんなで、せーの!」
「「「「「いただきますーー!!」」」」」
ヒマリがナイフを入れ、一口頬張った。
「……美味しい!」
思わず声が弾む。
「本当です! すごく美味しいですよ!」
「そないに?」
環季が自分のカレーを一口食べる。
「……おお。これは当たりやな!」
「ヒマリ。」
隣で凌が呼ぶ。
「ほら、約束のハンバーグとエビフライ。一口ずつな。」
そう言うと、綺麗にナイフで切って、ヒマリの皿に取り分けてくれた。
「凌会長、いいんですか!?」
ヒマリの顔がぱっと明るくなる。
「じゃあ、私のステーキも良かったら食べてください!!」
そう言って、ヒマリも自分のステーキを少し切り、凌の皿へ移した。
「あ、ありがとう……。」
凌は少し照れくさそうに呟く。
「ヒマリちゃん。」
今度は斗真がヒマリに声をかけた。
「そんなに美味しいなら、僕にも一口くれる?」
「もちろん、いいですよ!」
ヒマリは斗真の皿にも、一口分を取り分ける。
「そうだ! 良かったら、みんなで少しずつシェアしません!?」
ヒマリの提案に、環季の瞳が輝いた。
「ええん?」
「はい!」
ヒマリは自分の皿から、環季、斗真、ソノへと一切れずつ取り分けていく。
「うん、うまいな!」
「本当、一番お高いメニューなだけあるね。」
「初めて食べましたけど……おいしいですね。」
環季、斗真、ソノがそれぞれ舌鼓を打つ。
そして最後に、凌が一口。
「……うまい。」
「ですよね!」
ヒマリはとても楽しそうに笑った。
「こうやってみんなで食べると、すっごく美味しいですね!」
ヒマリがそう言うと、環季が笑った。
「せやな。」
斗真も頷く。
「うん。こういう昼休みも悪くないね。」
ソノも静かに微笑んでいる。
「そうですね。」
「……まあ、たまにはな。」
凌も、小さく笑った。
五人で囲む昼食。
美味しい料理と、くだらない会話。
それだけなのに――それが、とても楽しくて、尊い。
これからも、ずっとこんな時間が続くんだ――。
この時の私は、そう信じて疑わなかった。
コメント
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第6話、めっちゃ良かったです……! 学食でみんなでわいわいシェアしながら食べるの、尊すぎてずっとニヤニヤしちゃいました🥺💞 特に、ステッカーの位置の話、めちゃくちゃ刺さりました……斗真先輩が気づいた左胸(心臓の近く)に凌会長のシールがあるっての、無意識って怖いほど本心が出ますよね……💦 環季くんの「一番大事なところに凌がおる」って言葉に、私も胸がぎゅっとなりました。 凌会長がヒマリちゃんのために新月を選んだって話も、静かに萌えました……もうこのカップル尊すぎませんか?!(泣) こんなに温かい日常がずっと続きますようにって、心から思いました🌙✨