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春の暖かい風が駅のホーム中に吹く。


流石に来るのが早かった。


ここも通い始めてから早くも3年が経つ。


今年でもうお別れかぁ。


いつも生徒や社会人で賑わっているこの駅。


当たり前なのだが、今日はとても静かだった。


でも、そんなこと気にも止めない。


学校モードの彼らはどんどん足を進めていく。


本当に何を考えているかさっぱり分からない。


ワタシも置いていかれないように、と彼らの後ろを飛んでいく。


数十分後。


懐かしの学校が見えた。


ちらほらと教室の電気がついている。


先生と数人の生徒しかいない学校は静かな雰囲気に包まれている…。


生徒「きゃー!!トントン様達よー!!」


生徒「こっち向いてー!!」


生徒「朝から会えるなんて光栄ですー!!」


とはいかないようで。


いつも通りの黄色い声があちこちから聞こえてくる。


朝からよくそんなに大きい声と高い声だせるよね。


もちろん、良い意味で。


彼らは生徒会よりも人気がある。


生徒会の言うことより、彼らの言うことの方が優先度が高い。


本当に意味がわからない高校だ。


彼らがあれをしたいと言えばするし、これはだめと言えばしなくなる。


だけど、朝の歓声だけはいつまで経っても止まない。


トントン「ありがとうなー。でも喉大切にしぃや?」


シャオロン「邪魔になってんぞー。邪魔はあかん言うたやろ。」


鬱「まあまあシャオロン、別にこれくらいええやんか。な?」


シャオがそう言い鬱が慰めている時の事だった。


校門から校舎にある下駄箱まで一直線に道ができたのだ。


ショッピ「相変わらずシャオさん冷たいっすね。笑」


チーノ「いつもの事やんかショッピ。笑もう今更やろ?」


ロボロ「あんたら喋んのええけど前進めや。後ろ詰まっとるで。」


ゾム「はよ教室行こーや。足疲れたから座りたいねん。」


コネシマ「ゾムお前バスケ部やろぉ?そんな体力なかったかぁー?」


エーミール「ちゃんと時間通りに寝ないからですよ。睡眠不足なんじゃないですか?」


エミさんも意外とズバッと物言うよね。


言い合いしながらも結局は仲良し。


仲良く教室まで上がって行った。


ワタシも彼らと一緒に上がっていく。


校舎内に足を踏み入れた途端、ガラッと空気が変わった。


運動場とは違い、校舎内はとても静かだ。


今度こそは本当。


空の声が聞こえてきそうなくらい静か。


空気も澄んでいて風が美味しい。


生きていた頃のクラスまで歩いていく。


二年三組の教室。


まだトン氏しかこの教室にはいなかった。


扉をすり抜けて、トン氏の横の自分の席に座る。


と言っても、椅子に座ることはできなかったから机の上に座った。


(椅子に触れることが出来なかったからである。)


ワタシはこの朝の教室の雰囲気がとても好き。


なんていうか、とても不思議な感じがする。


嫌なことも忘れられて、心地いい。


こんなに素敵な場所はあの思い出の公園以外に思いつかない。


しばらく自分の席でゆったりしていた。


窓から見える、宇宙が見えそうなくらい雲ひとつない空を眺めながら。



気がつくと、大半の生徒が登校している時間になっていた。


いつもは昨日見たテレビ番組の話やゲームの話やらで盛り上がっているこのクラス。


でも、今日は違ったみたいだ。


教室にいる人達の殆どが不思議そうな顔をしている。


それもそうであろう。


普段、この時間にはワタシは既に席に座っているのだから。


いつまで経ってもワタシが来ないことに違和感を感じたらしい。


みんな、いつもワタシと一緒にいるトン氏に聞いた。


「○○ちゃん、今日はお休み?」


ってね、、、。


そのトン氏の真横にいるんだけどなぁ…。


一瞬辛そうな顔をして、でもすぐに笑顔の仮面を貼り付けた。


トン氏は初めて嘘をついた。


トントン「おん、休みやで。寝坊したから来るの面倒くさくなってんてさ。」


分かりやすい嘘。


ワタシは遅刻してでも学校には来るだろう。


だってこの高校が、生徒が、先生が大好きだから。


そして寝坊なんて今までした試しがない。


みんな、余計に困惑しているようだった。


重くて暗い空気が漂う。


トントン「ごめん、保健室行ってくるわ…。」


ゆっくりとした足取りで教室を出ていったトン氏。


ほんと、大丈夫かな。


「トントン様、大丈夫かな…?」


「今日元気なかったよね…。」


「それにしても、○○さんが寝坊なんて珍しいこともあるんだな。」


「ねー。何かあったのかな?」


「何もないといいけど…。」


「心配だなぁ…。」


みんな、ワタシのことをそんなに心配してくれているんだ。


なんだか申し訳ないな。


だって、ここにいるんだもん。


いつもと違いザワザワと騒がしい教室。


そこに、担任の先生が神妙な顔をしながら教室に入ってきた。


それまでいい感じの空気だったのに。


いつもふわふわしている先生だから余計に不安が大きくなる。


ピシッと教室の空気が凍ったのが分かった。


先生「今からホームルームを始めます。皆さん席に着いてください。今日は大事なお知らせもあるのでしっかりと聞いていてくださいね。」


しんと静まり返りガタガタと椅子の音だけが教室に響く。


最初はいつも通りのホームルームだった。


出席確認をしたり今日の予定を話したり。


一通り終わり、一区切りがついた時。


何泊か間を置いてから、先生は深呼吸をして話し始めた。


先生「○○さんが事故で亡くなられました…。」


ああ、ワタシの事だ。


ちらほらとすすり泣きする声が聞こえてくる。


我慢、してるのかな、、、?


ワタシは未だに自分の机の上に座ったまま。


目の前にあるトン氏の席は、寂しい。って言っている感じがした。


教室には最悪な空気が漂っている。


突然一人の生徒が立ち上がった。


生徒「先生、なんで?なんで○○ちゃんが…!」


その子が言ったことにより、雪崩がおきた。


生徒「先生昨日、ただの風邪だって、言ってたじゃないですか…!」


ほらまた…。


生徒「嘘だよ、嘘って言ってくださいよっ!」


生徒「信じられない…。○○ちゃんが…?」


一度おきた雪崩は暫く止むことはない。


みんな、それぞれ思うがままに自分の気持ちを吐き出した。


信じられない。嘘だ。まだ生きているはず。


そんなことを言っていた。


ワタシ、こんなにみんなから愛されてたんだな。


改めて実感した。


当たり前はいつか当たり前じゃなくなる。


運命とは、こうして突然にやってくるものだ。


なんて残酷なんだろう。


言いたいことを言い終えたクラスメイト達。


落ち着きを取り戻し、各自席に座った。


先生「先生もまだ信じられません。しかし、これは本当のことなのです。今すぐにとは言いません。少しずつ受け入れていきましょう。」


あなた達はまだ死んではいけない。【ノベルver.】

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