トントン視点
みんなに心配をかけてしまっただろうか。
あの空間にいるのが耐えられなくなって保健室に来てしまった。
今日は保健室の先生はいない日。
毎週火曜日、保健室の先生は何かしらの事情でいなくなる。
少しくらいは、安らげるかな、、、。
上靴をぬぎ扉を開け、奥にあるベッドに腰をかける。
疲れていたからそのまま後ろに倒れかかった。
少し古くなってきたのかギシッと音を立てた白い大きめのベッド。
「はぁ…。」
学校ではいつも通りの俺らでいる。
昨日、みんなでそうやって約束したんに、、、。
こんなとこで何してんねやろ、俺、、、。
逃げてしまってるだけやん、、、。
身近にいた人の死を、一日で受け入れるのは難しいと思う。
大半の人がそう思うことだろう。
実際に俺が未だに受け入れられていない。
他のみんなはもう、既に受け入れられてんのかな、、、。
なんか自分だけ置いていかれたみたいや、、、。
1度、大きく深呼吸をした。
保健室独特の匂いが鼻の奥をツンとつく。
「はぁ…。」
ため息しかでない自分に嫌気が差した。
1時間目は無理やろうから、せめて2時間目始まるまでには戻らなあかんな、、、。
そう思いながらも、寝不足のせいで重たい瞼が降りてくる。
視界が真っ暗に包まれたところで意識が夢の中へ吸い込まれた。
どこや、ここは、、、。
真っ暗で何も見えない。
俺、さっきまで保健室のベッドで寝転がってて、、、。
そっから、どうしたんやっけ、、、?
寝落ち、してもうたんかな、、、。
早く授業に戻らないといけないのに、、、。
??「トントンくん。」
暗闇の奥から声が聞こえてきた。
誰や、?
女の子の声だった。
優しくて、明るい、俺たちの大好きな声だ。
「○○ちゃんか、、、?」
○○「トントンくん!遊ぼうよ!」
「なあ、○○ちゃん、、、?」
○○「んー?何ー?帰りたくなったの?」
「なんで、トントンくん呼びなんや?」
「それより、ここはどこや?知ってるんやったら教えてくれや。」
○○「やだ!」
「○○ちゃん、、、。」
○○ちゃんと話が噛み合っていない。
ような気がする、、、。
でも、この会話、どこかでした記憶がある。
懐かしくて大切な思い出の中にあった気が、、。
一瞬、目の前が真っ白になった。
俺の目の前に走馬灯のように思い出が蘇ってきた。
~~
僕らがまだ小学生だった頃。
○○「トントンくん。」
「どないしたん?こんな遅くに家に来て…。」
これは、○○ちゃんが家出して僕らの家に来た時のことだ。
○○「トントンくん!遊ぼうよ!」
僕はみんなが寝静まっている中、○○ちゃんに連れられて公園に来たんだ。
「公園来たのはええけどさ、やっぱ家で遊ぼうや。」
夜も遅かったし何より子供だけで出歩くのは危険だ。
○○「んー?何ー?帰りたくなったのー?」
にこにことイタズラをしている子供のような笑顔を僕に向けてきた○○ちゃん。
「ほら、帰るぞ。」
このままいても帰りそうになかったから無理矢理帰ろうとした。
○○「やだ!」
「はいはい、帰る帰る。」
○○ちゃんの否定の言葉も無視して手繋ぎながら帰ったっけ。
~~
俺らの家に着いたところで、また、暗闇に戻された。
そっか、さっきの声は思い出の中の○○ちゃんの声やったんや。
トントンくん呼びやったのも理解した。
トン氏呼びになったのは中学生に上がってからだったから。
ふと周りを見回すと、そこにはもう○○ちゃんはいなくて。
ああ、そうだ。
これは夢だった。
今更ながらにショックを受けた。
一気に悲しみの感情が降りてくる。
本当に○○ちゃんに会えた訳やないんや、、、。
途方に暮れていると、暗闇の奥から一筋の光が見えた。
暗闇から抜け出したかった俺はその光に向かって手を伸ばしてみた。
映像が途切れ、意識が段々とハッキリしてきた。
夢の中から抜け出したんだ、、、いや、追い出されたんだ、、、。
現実を見させるために、って。
神様からの罰が下ったんや。
夢の中にずっとおれたら、また○○ちゃんに会えたかもしれやんのに、、、。
まだ夢であったことに浸っていると、何かが聞こえてきたを
ワイワイとした楽しそうな話し声が耳に届いた。
なんだ?と疑問に思い重い瞼を開ける。
するとそこにはみんながいた。
分かってた、分かってたよ、、、。
あれは、夢なんだ、、、。
でも、○○ちゃんに俺は会えたんだ、、、。
例え、夢の中であったとしても。
目頭が熱くなり、涙が込み上げてきそうになる。
シャオロン「お、トントン起きたか?」
エーミール「大丈夫ですか?結構うなされてましたけど、、、。」
「ああ、いや、大丈夫やで。」
寝ている身体を起こす。
できるだけ、平然を装って。
あれから今までずっと寝ていたんだろうか。
窓からは夕日の光が差し込んでいた。
「もう、放課後なんか?」
鬱先生「そうやで?トントンずっとここで寝てたらしいやん。」
コネシマ「珍しいこともあるもんやなぁ。」
「・・・心配かけてごめんな。」
コネシマも珍しくうるさくない。
1番騒いでそうやのに。
ショッピ「お昼も食べてなさそうですし、はやく家帰って食べましょ。」
チーノ「ゼリーとか食べやすいの買ってます!」
ロボロ「よかったら荷物とか持つで?」
「お前ら…ありがとうな。」
昨日のような暗い顔はこいつらにはもうない。
今まで通りの元気な笑顔だった。
ちゃんと、○○ちゃんの死を受け入れられてるんか、、、。
仮面を被っているだけかも知れないけれど。
ただ、1人を除いて。
その1人に俺は聞きたいことがあった。
だからみんなに帰ってもらうように言ってから後ろからそいつに声をかける。
「どないしたんや?」
??「・・・」
「なんかあったんやろ?_______ゾム。」
いつも元気なゾムは昨日のことを引きずっているかのように暗い顔をしている。
フードを深く被っているせいで表情はあまり読み取れない。
深く被っている時は何かあった時にしかしない。
ゾム「・・・いや、な。変な夢を、見たんや。」
「変な夢?バケモンかなんかが出てきたんか?」
ゾム「いや、ちゃう。…なあ、トントン。」
俯いていた顔を上げたゾム。
その顔は困惑と喜びが混ざっており、訳が分からないとでも言いたそうだ。
そして衝撃的なことがゾムの口から告げられる。
ゾム「夢に、でてきたんはな?」
ゾム「○○、、、やねん。」
「・・・は、?え?○○ちゃん?」
あまりの衝撃に目を見開き、口を開けて固まってしまった。
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