c p / mcmt
短 編
同 棲 設 定
地 雷 樣 ・ 苦 手 な 方 々 は 、
視 聴 を お 辞 め に な る の を お 勧 め し ま す
「すいちゃんなんて嫌い!」
パチン、と音を立てると同時に頬に痛みが走る。自分の頬に触れると、ヒリヒリとしていて。目の前の彼女は、翡翠の瞳に涙を浮かべて、じっと、静かに、俯きながらその場に立っている。
「ご、ごめ「もう知らないっ!」
そんな言葉を放ち、みこちは自分の部屋へと戻ってしまった。静まり返るリビング。いつもならみこちと他愛のない会話をしているこの場所が。まるで、消えてしまったかのように感じる。この喧嘩は、いつもの軽い言い合いから始まった。軽い言い合いだったのに、段々と喧嘩に発展してきて、こうなってしまった。
「…。 」
彼女に謝らなければ。そして、仲直りをしなければ。そうしなければ、あたしのこの胸のモヤモヤが消えない。早く消えて欲しい、と思っても、消えるわけがない。
そんな事を考えていると、自分の部屋の前に来ていた。1度部屋で考えてみようか。そう思い、ドアノブを回して部屋に入る。やはり部屋は静まり返っていて、先程のリビングのような雰囲気を醸し出している。
「…どう、しよ。」
ふとそんな言葉がポツリと出てくる。ベッドに大の字になって天井を見上げてみれば、不意に眠気が襲ってくる────
────どれくらい経ったのだろうか。むくりと鉛のように重たい体を起こし、瞼を擦る。
そうだ。みこちに謝らなくては。机に置いていたスマホを手に取り、ポッケに入れる。自室から出て、みこちの部屋…ドアの目の前に立つ。何故だろうか、少し息が詰まる。深呼吸をしながら、慎重に言葉を放つ。
「…みこち。居る?」
「あのさ…謝りたい、んだけど…。」
返事は返ってこない。そりゃあそうだ。 ポッケに入れているスマホを取り出し、電源を付ける。今は23時。みこちの事だから、多分寝ているのだろう。
寝ている邪魔はしたくない。でも、みこちの顔を見てちゃんと謝りたい。少し罪悪感を感じ、心の中で謝りながら、みこちの部屋のドアを静かに開ける。
「みこち、言いたい事が…。」
そっとドアから顔を覗かせると、そこにみこちの姿は無かった。ただ、机に置いてある紙が気になって、近付き手で掴んで見てみる。
「えっと…『探さないでください』…。」
衝撃的で、思わず紙を落としてしまった。
「探さないでください」 みこちの字ではっきりと書かれているそれは、私の心を刺し、抉る。衝動的に、そして無意識に、気が付いたら外を走っていた。「探さないでください」なんて言われても、無理だ。みこちに何かあったら、どうしよう。街灯がまるでスポットライトのように、私を照らしている。こっちはショーをやってるんじゃない。私の大事な人を探しているんだ。
10分程度走った頃。ふと目に公園が見えた。1度休憩するか?でも、みこちが。…走ろうと思ったが、体力が限界を迎え、足は悲鳴あげていて走れない。少し休憩したら、また探そう。 公園のベンチへと腰を掛け、溜息を吐きながら頭を抱える。
みこちは何処へ行ってしまったのか。このまま見つからなかったらどうしようか。そんな事を考えると、溜まっている疲れが更に増す気がした。
「飲み物でも飲も…。」
近くにあった自販機へ向かい、並べられている飲み物たちを見る。丁度コーヒーが目に入ると同時に、隣にあったココアへと目が行く。
みこちがいつも飲んでいるココア。私には甘すぎて飲めないから、いっつもコーヒーを飲む。でも。今日は何だか、ココアが飲みたくなった。自販機のボタンを押すと、ガコンと音と共に、自販機の取り出し口にココアが落ちてくる。手に取って缶を開けると、甘い香りが広がる。
「やっぱり、この甘い香り、苦手だなあ…。」
そう思いながらも、ココアを口に運ぶ。甘い味が襲ってきて、やっぱり飲めない。
「はあ〜…。ああ…。」
みこちはいつまで経っても見つからない。スマホで時刻を確認すれば0時と示されている。気付けば日を越していて、待ち受けのみこちと撮った写真がある。付き合って1ヶ月記念の物だ。いつ君は見つかるんだろう。
「はぁ…はぁ…やっと見つけたっ…。」
「え、…?」
聞き覚えがある声がして、振り向いてみた。そしたら桜色の綺麗な髪をした彼女…みこちに、ぎゅって包まれて思わず泣きそうになっちゃった。喉奥が熱くて苦しくて、けど君とのハグは心地よくて。いつ見つかるんだろうって思ってたマイナスな気持ちは消えてて。大好きな君が見つかって本当に良かった。
「みこち…「どこ行ってたんだよっ…ずっと探したんだぞ…。 」
震えた声で問いかけてきて、ぎゅっと力が強くなって。あたしの胸の中でプルプルと震えてる君を、優しく包んでやった。
「…こっちこそけど。まあでも…ありがとうね、みこち。そして、ごめん。」
ぽんぽんと背中を軽く叩いて慰めた。そしたら小さく「ごめんね」って返ってきて。ぎゅって抱き返してからまた君を慰めた__
「みこち〜ココア飲む?」
「いーの!?飲む飲む!!」
「…ぷはぁ〜!うまぁ…。」
「ちなみにすいちゃんも少し飲んだやつ。」
「へ〜…っては、!?」
「んふ。PONなみこちでもわかったかな?」
「っ…PON言うな!でゃまれッ!」
「いーやーでーす〜。」
「ぐぐ…。」
「…。」
「…あんだお。」
「んぐ…っ、何すんだよっ、!?」
「お風呂沸かしてるから早く来い。」
「…。」
「ん。流石えりぃとさん。わかったにぇ?」
「こいつ…どこまでも煽りやがって…。」
「ナンノコトカナー。」
「カタコトだぞ。今日もみこが上だから。 」
「はぁ?何言ってんの。いつもすいちゃんの方が上だから。」
「最近ずっと下なくせに〜?ぷぷぷ。」
「…黙れ。」
「あー怒っちゃった?ごめんにぇ?笑」
「はいはいそうですねー。」
「あ、ちょ!?下ろせっ!!!」
「やだ。部屋までこうだから。」
「ふざけんなっ!!!」
「はいはい。」
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