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みら

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コメント
1件
わあ、今回もじんわり沁みたなあ…!めめが帰ってきただけで安心しちゃう阿部ちゃん、自分でも気づいてない感じがもう完全に恋愛フラグじゃんって思っちゃった(笑)あと「帰る時間覚えてるの?」って言われて照れる阿部ちゃん可愛すぎるし、プリンをわざわざ買ってくるめめの優しさにキュンと来たよ。二人だけの写真を撮るシーンも、何気なくて温かくて、本当にいい関係だなって思った。次も楽しみにしてるね🔥
10
数日後。
夜。
阿部の部屋。
目黒は。
阿部の部屋で一緒に夕飯を食べていた。
今日は。
目黒が作ってきた炊き込みご飯。
阿部が作った味噌汁。
それと。
冷蔵庫に残っていたおかずを少し。
「いただきます」
二人で食べ始める。
「これ美味しい」
阿部が炊き込みご飯を食べながら言う。
「ほんと?」
「うん」
「よかった」
「でも」
「何?」
「やっぱりめめ、俺の分まで最初から作ってるよね」
目黒が。
少しだけ目を逸らす。
「……多かったから」
「まだ言う?」
阿部は笑う。
「もう作りすぎた設定いらないでしょ」
「設定って何」
「最初から一緒に食べるつもりだったって言えばいいじゃん」
目黒は。
少し黙ってから。
「じゃあ次からそうする」
「認めるんだ」
「だってもうバレてるし」
二人で笑う。
少し前までは。
誰かと夕飯を食べること自体。
特別だった。
今は。
目黒とこうして食べることが。
少しずつ。
普通になってきていた。
食べ終わって。
阿部が食器を片付ける。
目黒は。
テーブルを拭きながら。
ふと。
棚を見る。
「増えてる」
「何が?」
阿部も振り返る。
「ああ」
棚の真ん中。
九人で撮った写真。
その隣には。
少し前に康二が撮ってくれた。
阿部一人の写真。
「康二にもらった」
阿部は。
少し嬉しそうに棚へ近づく。
「ちゃんとプリントしてくれたんだ」
「うん」
九人の写真立てを手に取る。
「これさ」
「うん」
「一番好き」
目黒が。
阿部を見る。
「そうなんだ」
「だって全員いるから」
「最初はさ」
「誰も知らなかったじゃん」
「うん」
「起きた時、本当に一人だったし」
写真の端を。
指でそっと触る。
「でも今は、こんなにいる」
目黒は。
何も言わずに。
阿部の隣に立つ。
「だから好き」
「いい写真だね」
「でしょ?」
「うん」
目黒も。
写真を見る。
そこで。
少しだけ笑った。
「何?」
阿部が聞く。
「いや」
「なんか笑ったじゃん」
「別に」
「怪しい」
阿部が写真を見直す。
目黒が笑った理由を探す。
そして。
気づく。
「あ」
「何?」
「めめ、俺の隣じゃん」
「今気づいたの?」
「撮った時は普通に隣だったから」
目黒は。
少しだけ嬉しそうに笑う。
「俺は気づいてた」
「そうなの?」
「うん」
「なんで?」
「そりゃ見るでしょ」
「自分がどこいるか?」
「それもだけど」
目黒は。
一瞬。
言葉を止める。
「……あべちゃんがどこいるか」
阿部は。
少し目を瞬く。
「俺?」
「うん」
「なんで俺?」
「なんとなく」
「最近みんなそれ言うなあ」
阿部は笑う。
目黒も笑った。
阿部は。
写真立てを棚に戻す。
そのまま。
隣に置いてある。
一人の写真を見る。
「でもさ」
「うん?」
「まだ二枚なんだよね」
「これから増えるんでしょ?」
「うん」
「康二がいっぱい撮るって言ってたし」
「そうなんだけど」
阿部は。
少し考える。
それから。
何でもないことみたいに言った。
「めめとも撮りたい」
目黒が止まる。
「……え?」
「二人で」
阿部は。
目黒を見る。
「まだないじゃん」
九人では撮った。
でも。
目黒と二人だけの写真は。
一枚もない。
「今度撮ろうよ」
目黒は。
少しだけ。
阿部を見つめた。
「……いいの?」
「何が?」
「二人の写真」
「いいに決まってるじゃん」
阿部は笑う。
「なんでそんな確認するの?」
「いや」
目黒は。
少し困ったように笑う。
「嬉しいなと思って」
「写真一枚で?」
「うん」
「変なの」
そう言いながらも。
阿部も。
少し嬉しくなる。
「じゃあ決まりね」
「うん」
「今度康二に頼もう」
目黒は。
少し考えて。
「あべちゃん」
「何?」
「康二じゃなくてもよくない?」
「え?」
「スマホでも撮れるじゃん」
「ああ」
確かに。
わざわざ康二に撮ってもらわなくても。
二人なら。
いつでも撮れる。
「じゃあ今撮る?」
阿部が言う。
「今?」
「うん」
目黒は。
少し驚いた顔をする。
「嫌?」
「嫌じゃない」
「じゃあ撮ろうよ」
阿部はスマートフォンを取る。
ソファへ座る。
「めめ、こっち」
「うん」
目黒が隣に座る。
阿部は。
カメラを開く。
二人が画面に映る。
「近くない?」
阿部が言う。
「離れたら入らないじゃん」
「めめが大きいから」
「俺のせい?」
「そう」
目黒が笑う。
阿部も笑う。
「撮るよ」
「うん」
阿部が。
スマートフォンを少し持ち上げる。
「はい」
カシャ。
一枚。
「見せて」
二人で画面を見る。
少しだけ。
顔が近い。
阿部は笑っていて。
目黒も。
いつもより柔らかい顔をしていた。
「……いいじゃん」
阿部が言う。
目黒も。
写真を見ながら。
「うん」
と答える。
「これもプリントしようかな」
「するの?」
「する」
「どこ置く?」
阿部は。
棚を見る。
九人の写真。
一人の写真。
その隣。
まだ。
少し空いている。
「ここ」
空いている場所を指す。
「並べる」
目黒は。
その場所を見る。
そして。
嬉しそうに笑った。
「そっか」
「何?」
「いや」
目黒は。
阿部を見る。
「楽しみだなって」
「プリントするだけだよ」
「それでも」
阿部は。
少し笑う。
ほんの一枚。
ただの写真。
でも。
自分にとっては。
少し違う。
昔の写真が一枚もないから。
今撮る写真は。
全部。
自分の時間になる。
みんなとの写真。
一人で笑っている写真。
そして。
めめとの写真。
阿部は。
もう一度スマートフォンを見る。
画面の中。
目黒と並んで笑っている自分。
「……これも好きかも」
小さく言う。
「写真?」
「うん」
目黒は。
少しだけ笑った。
「俺も好き」
阿部は。
その言葉を。
写真のことだと思った。
だから。
何も気にせず。
「じゃあお揃いだね」
と笑った。
目黒は。
それ以上。
何も言わなかった。
数日後。
その日は。
朝から少し疲れていた。
理由は。
自分でもよく分からない。
カフェはいつも通りだった。
館さんが料理を作って。
翔太は。
昼前に来て少し働いて。
途中からカウンターでコーヒーを飲んでいた。
ラウールも来た。
佐久間も顔を出した。
康二も。
少しだけ寄っていった。
楽しかった。
ちゃんと笑った。
なのに。
仕事を終えて。
一人で家に帰ると。
急に。
静かだった。
阿部は玄関を開ける。
「ただいま」
誰もいない部屋。
当然。
返事はない。
靴を脱いで。
鞄を置く。
電気をつける。
棚には。
康二が撮ってくれた写真。
九人で撮った写真。
めめと二人で撮った写真。
阿部は。
少しだけそれを見る。
「……疲れた」
ソファに座る。
そのまま。
しばらく動かなかった。
嫌なことがあったわけじゃない。
誰かに何か言われたわけでもない。
ただ。
今日は。
少しだけ。
何も考えたくなかった。
夜。
簡単に夕飯を食べて。
風呂に入って。
ベッドに横になる。
でも。
なかなか眠れない。
阿部は。
天井を見る。
静か。
時計の音。
冷蔵庫の音。
外を走る車の音。
それだけ。
「……」
目を閉じる。
しばらくすると。
隣から。
小さな物音がした。
ガタン。
何かを置く音。
少しして。
水の流れる音。
目黒が帰ってきた。
それが分かった瞬間。
阿部は。
ふっと息を吐いた。
「……帰ってきた」
ただ。
それだけ。
顔を見たわけでもない。
話したわけでもない。
隣の部屋から。
生活音が聞こえただけ。
なのに。
さっきまで少し落ち着かなかった胸の奥が。
静かになった。
阿部は。
目を閉じる。
「いるんだ」
小さく呟く。
隣に。
めめがいる。
それだけで。
何となく。
安心した。
次の日。
仕事を終えて。
アパートへ帰る。
階段を上がりながら。
阿部は。
何となく隣のドアを見る。
静か。
まだ帰っていないらしい。
「……今日は遅いのかな」
自分の部屋へ入る。
着替えて。
夕飯を食べる。
本を読む。
時計を見る。
午後八時。
まだ。
隣は静か。
「仕事かな」
また本に戻る。
数ページ読んで。
気づけば。
また時計を見ていた。
八時半。
「……」
阿部は。
少しだけ首を傾げる。
めめが何時に帰ってくるかなんて。
別に。
自分には関係ない。
そう思う。
けれど。
最近。
大体の時間が分かるようになっていた。
早い日は七時前。
遅くても。
九時くらいには。
隣から音がする。
「俺、覚えてたんだ」
それが。
少し不思議だった。
九時を過ぎる。
まだ。
静か。
阿部は。
スマートフォンを見る。
連絡してみようか。
そう思って。
やめる。
別に。
約束しているわけじゃない。
一緒に夕飯を食べる日でもない。
何時に帰るのか聞く理由もない。
「……何してるんだろ」
本を開く。
でも。
さっきから。
同じページを何度も読んでいる。
内容が入ってこない。
阿部は。
本を閉じた。
その時。
ガチャ。
外から。
小さな音。
阿部の顔が。
自然に上がる。
続いて。
隣のドアが開く音。
鍵。
足音。
そして。
扉が閉まる。
「帰ってきた」
阿部は。
無意識に笑った。
その瞬間。
自分で気づく。
「……なんで俺、こんな気にしてんの」
誰に言うでもなく。
呟く。
隣の人が。
帰ってきただけ。
それなのに。
急に。
部屋の中まで。
安心したような気がする。
ピンポーン。
突然。
インターホンが鳴る。
阿部は。
少し驚いて。
ドアホンを見る。
めめ。
今帰ってきたばかりなのに。
「はい」
ドアを開ける。
目黒が立っていた。
「ただいま」
「……おかえり」
自然に返す。
目黒が。
少し笑う。
「何?」
「いや」
「何その顔」
「ちゃんとおかえりって言ってくれるんだなって」
「言うでしょ」
「そっか」
目黒は。
手に小さな袋を持っていた。
「これ」
「何?」
「帰りに買った」
中を見る。
プリン。
二つ。
「一緒に食べようと思って」
阿部は。
少しだけ目を丸くする。
「今から?」
「嫌?」
「嫌じゃない」
むしろ。
嬉しい。
その言葉は。
口には出さなかった。
「入って」
目黒を部屋へ入れる。
二人で。
テーブルに座る。
プリンを食べる。
「今日遅かったね」
阿部が言う。
目黒が。
スプーンを止める。
「……分かった?」
「あ」
言ってから。
気づく。
「いや」
「帰る時間覚えてるの?」
「大体」
「へえ」
目黒が。
少し嬉しそうに笑う。
阿部は。
何となく恥ずかしくなって。
プリンを見る。
「隣だから」
「うん」
「音するし」
「うん」
「だから分かるだけ」
「分かった分かった」
「何その言い方」
「何も言ってないよ」
目黒は笑う。
阿部も。
少しだけ笑った。
その夜。
目黒が自分の部屋へ戻ったあと。
阿部は。
ベッドに入る。
隣から。
また少しだけ。
生活音。
さっきまで。
一緒にいた人の音。
阿部は。
目を閉じる。
昨日も。
今日も。
めめが帰ってきたら。
安心した。
ただ。
隣にいるから。
そう思っている。
まだ。
それ以上の理由なんて。
考えなかった。
でも。
次の日も。
その次の日も。
阿部は。
目黒が帰ってくる時間を。
自然と気にするようになっていた。
時計を見る。
まだかな。
外で音がすると。
少しだけ耳を澄ます。
鍵の音がすると。
分かる。
「あ、帰ってきた」
そして。
そのたびに。
少し安心する。
自分でも気づかないうちに。
目黒が隣にいることは。
もう。
阿部の日常の一部になっていた。