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「それじゃあ、始めるよ」
するとスロベニアは、両目に巨大な赤い星を宿した。
_親愛なる東欧の同志たち、赤き星の元、再び一つにならんことを。
「僕たちも行こっか」
_今宵貴方に授けるのは冠、身を一つに。
オーストリアにはハンガリー、スロベニアにはバルカン諸国が取り込まれていく。そしてそのままオーストリア=ハンガリー帝国、ユーゴスラビアが復活した。
「貴方たちに助けられたこと、非常に感謝しております。私は明朝にはお役に立てることでしょう」
帝国が丁寧に礼をした。使う武器は短剣らしい。ユーゴスラビアは「情緒が不安定だから」とすぐベッドに潜り込んでしまった。武器は明日聞いてみようか。
翌朝、世界を知らない空はいつも通りに晴れていた。一番先に目覚めた俺が全員を起こして周り、帝国とユーゴスラビアを含めた作戦を改めて話し合った。
「改めて確認するとオーストリアハンガリーが短剣、ユーゴスラビアは大型カッターって話だったね。どちらも接近戦向きの武器だから最前線に立ってもらいたいな、できそう?」
二人とも頷いた。すると、昨晩からずっとロシアのそばで泣いていたベラルーシがふらふらとやってきて言った。
「じゃあ元最前線でライヒタングルを取り囲むのはどうかしら? そうしたら惑わせることもできるはずだし」
「ベラルーシ、もう大丈夫なの?」
ポーランドが心配そうに言う。彼もリヒテンシュタインと同じくらい繊細で敏感だからか人一倍心配性なのだろう。だがベラルーシはくまのできた目元を拭って大丈夫だと言いきり、戦闘を再開するよう促した。
ライヒタングルは相変わらずの横暴っぷりを見せていた。一体いくつの国が併合されてしまったのだろうか。俺は躊躇なくチェーンソーの電源を入れ、第二列の他のメンバーとともに突撃した。
どんどん体力が削れてきている。このままいけば、もう討伐はすぐそこだ。
「目標の衰弱を確認。最近の者、トドメを刺せ」
「了解」
デンマークが、勢いをつけて剣を振りかざす。ライヒタングルは間もなく膝を折って倒れ、その場にいたほぼ全員から歓声が上がった。
「やりましたね、お母様!」
ノルウェーがデンマークに飛び跳ねるように抱きついた。他の国々も、ハイタッチをしたり武器を放り出したりして戦果を称えあった。
俺も例外ではなく、目の前に倒れて動かないライヒタングルを見つめて、感動とも興奮ともつかない感情に巻き込まれていた。
そんな中、表情を固く変えない国がひとつだけあった。彼の名はフィンランド、スナイパーを手にしたままライヒタングルをじっと見つめている。
「まだ体が微妙に動いている、離れろ」
フィンランドは彼にしては大きすぎるほどの声で言ったが、歓喜の声にかき消されて届かなかった。
「仕方ない、もう一発撃とう」
国の少ない方に回ってフィンランドはスナイパーを構える。その頃には、俺の目にも見えるほどライヒタングルの動きが戻ってきていた。
バンッ。
彼の弾は見事直撃した。それに気づいた国々がギョッとした様子に変わる。中には脳内で情報が停滞したのか、動けずにいる国もいた。
「あ、まだトドメ刺せてなかったんだ……」
エストニアが口をあんぐり開けて言った。今度こそライヒタングルを討伐できたと、誰もがそう考えた。しかし……
帝国が蘇る。
武器を構える。
襲いかかる。
夕暮れの時が、訪れる____。