おはようを忘れた世界で僕は。
__今日もこの世界は真っ暗闇のままだった。
そう僕は感じながら、いつも通りで当たり前の交差点を僕は通っていた。
街灯は規則正しく並んでて、店の看板は眩しいほどに赤や黄色の光をともらせている。
人は‘’昔みたいに”、うじゃうじゃ歩いているし、車も大きなエンジン音を鳴らし走っている。
危ないところ__異変なんて、何も無いように。
一見すると普通に見えるこの世界は、
ずっと真夜中だ。というのも、空がずっと夜空なのだ。
みんな、もう慣れているのかな。夜でも朝と同じ時間に起きて、学校、会社に行って、勉強、仕事をして、食べて、眠る。
皆、そうやって‘’普通”に生活している。
……僕だけ取り残されているような感覚だった。
違和感、を持っているのは僕だけなのだろうか。
そんな悩みを胸に抱えたまま、中途半端な気持ちで夜空を見上げる。
雲は真っ白くて、輪郭もはっきりしている。
本当なら見えるはずの星も見えない。
そして、夜空にしては少し明るい。
「……これ、やっぱり変じゃないのかな。」
小さく呟いた声。それは隣にいる、僕の親友、暁 凪(あかつき なぎ)だけに届いた。
凪は僕の方を見つめ、
「なにが?」
不思議そうに尋ねてくる。凪もきっと慣れているからそうやって繰り返し聞いてくるのだろう。
僕は少し迷いながらも、こう応える。
「この世界…かな。」
凪が少しきょとん、と首を傾げたので、僕は続けて凪に説明する。
「だって…ずっと夜なのって…」
僕は少し口篭る。
「…変じゃない?」
凪はやはり首を傾げたままだった。
「…夜?」
その反応に、僕は忘れていた“もの”に襲われるような感覚がした。
凪は、いじっていたスマホを確認し、ぎょっとした様な顔をする。
「あ、ごめん。もう時間だ」
というのも、凪は高校生だけれど、書道の習い事をしている。
そんな僕の考えを横切るように、慌てて凪は続ける。
「習い事だから、そろそろ行くねっ。また後で〜!」
そう凪は当たり前みたいにくしゃりと笑顔を咲かせる。凪が走り去って行くのと同時に、僕は世界と凪に置いてかれてるような気がした。
……一秒一秒が長く感じる。僕はその一秒一秒を使って容量の良くない自分の頭で精一杯考える。
…“こたえ”は、はっきり出ないまま。
けれど、みんなはこれを当たり前だと思ってる…?






