テラーノベル
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プレートの文字が、音もなく書き換わる。
「3.5F 点検中」
↓
「3.5F 点検完了」
その瞬間、床に倒れていた“誰か”の姿が――消えた。
血も、痕跡も、何も残っていない。
ただ、人数だけが減っている。
佐久間)……いま、何人だ?
阿部は答えない。
いや、答えられない。
代わりに、ゆっくりと口を動かした。
阿部)……数えろ。
佐久間の喉が鳴る。
佐久間)いち、に、さん……
声が震える。
そのたびに、懐中電灯の光がぴたりと反応する。
――四。
“警備員”が、続きを拾う。
その声はもう、人間のものじゃなかった。
阿部)……やめるな。
佐久間)ご、ろく……
言い終わった瞬間。
光が、ふっと消えた。
そして――
今度は、すぐ後ろから声がした。
――なな。
佐久間の目が見開く。
ゆっくりと振り返る。
そこにいたのは。
さっきまで隣にいたはずの、阿部だった。
だが、その表情は――空白。
焦点の合わない目が、
佐久間“ではない何か”を見ている。
そして、口だけが動く。
阿部)――はち。
佐久間)……阿部、 やめろ……
一歩、後ずさる。
その瞬間、背中が何かにぶつかった。
冷たい金属。
振り返ると、さっきの扉。
「3.5F」
だが、今度のプレートは違う。
「3.5F 入替中」
――ガチャ。
勝手に、開いた。
中は、真っ暗じゃなかった。
無数の懐中電灯の光が、
ゆらゆらと漂っている。
その一つ一つの奥に――
“人影”。
全員が、同じ動きをしている。
指を折りながら、
何かを数えている。
そして、全員が同時に顔を上げた。
焦点の合っていない目が、
一斉に佐久間を捉える。
――九。
その声は、重なっていた。
一人じゃない。
何十人分もの声。
背後で、“阿部”が囁く。
阿部)足りないんだよ。
佐久間の肩に、冷たい手が乗る。
阿部)あと、一人。
そのとき。
佐久間のスマホが、また震えた。
画面には、フロア案内図。
3F
3.5F(入替中)
4F
そして、その下に新しく表示された一文。
「現在の人数:9」
佐久間の呼吸が止まる。
さっきまで、確かに――
八人だった。
じゃあ、“増えた一人”は誰だ?
ゆっくりと、全員の視線が動く。
同時に。
佐久間の名前が、全員のスマホに表示された。
――ピロン。
「次の管理者が決定しました」
阿部が、笑う。
いや、それはもう阿部じゃない。
――十。
その瞬間。
佐久間の口が、勝手に動いた。
佐久間)……いち。
数えるのを、やめられなかった。
コメント
6件
こわいこわいこわいこわい((怖いの無理な人
こわw ホラーかくの上手すぎてやばいね
怖い怖い怖い‼️笑 でもどこまでも奥が深い話で考察しがいがあって楽しい()