💙「まぁま、まぁま………」
秋の早朝。外はまだ暗い。
小さな翔太の手がバシバシと俺の顔を遠慮なく叩くので目を覚ました。眠い目を擦り、ベッド下の翔太を見ると、今にも泣き出しそうな顔をしている。
隣を見ると、旦那はまだ寝ていた。
💚「しーっ。パパ、昨夜遅かったから、静かにして」
💙「うゆ?」
蓮が起きないように静かに夫婦のベッドから降りる。すると、翔太の大きな目が涙で濡れ始めた。翔太を抱き、後ろ手にしきりのドアを閉め、子供たちの部屋へと入る。翔太の身体は少し冷たくなっていた。
💚「どうした?涼太は?」
💙「りょた、ちぬぅ………!!」
翔太は涙を堪えて、唇をふるふるさせている。何事かと俺は慌てて翔太を抱いたまま、双子のベッドへと涼太を確認しに行った。
❤️「まぁま、、、」
ベッドの中には、真っ赤な顔をした、愛しい我が子。いつもは涼やかな目が潤んでいる。なんだか息も荒い。
……そういえば、昨日、少し元気がなかったような…?いつも大人しい子だから気づかなかった。これではママ失格だ。
💚「熱あるかな?どれ……」
おでこに手をやると、ものすごく熱かった。やばい。これは病院に連れて行かないといけないかも…。
💙「りょた、ちぬの?」
💚「死なない。大丈夫」
ここで翔太に泣かれたら大変と、動揺を隠して笑顔を作る。翔太の頭をよしよしと撫でてやると、翔太も少しは安心したようだった。
💚「でも、お医者さんには診てもらおうかな。翔太、パパとお留守番できる?」
💙「や!!!しょたも行く!!!」
💚「だめだよ。ママ、翔太のことまで見れないよ」
💙「やあーーー!!!」
翔太は言い出すと聞かない。たぶん、弟の一大事だと思っているのだろう。俺はこれ以上翔太に言い聞かせても無駄だと判断し、涼太を着替えさせた後で、翔太の支度も手伝った。
🖤「これは何の騒ぎ?」
蓮がボサボサの頭のまま、起きて来る。
あー、寝かせておいてあげたかったけど、こうなったら仕方ないや。
💚「涼太、結構熱ありそうだから病院連れてく」
💙「びょーいんいくの!!!」
🖤「マジ?じゃ、俺送るよ」
💚「朝早くからごめんね、疲れてるのに」
🖤「ママも毎日疲れてるでしょ。お互い様だよ」
……ああ、この人と結婚してよかった。
蓮は嫌な顔ひとつせずに、まだ夜も明けない中を翔太を抱っこして、車に乗せてくれた。俺は高熱でうんうん唸っている涼太を抱いて、後部座席で涼太を見ている。
💚「涼太、大丈夫だよ。ママたちがついてるからね…」
❤️「…………ん」
強い子だ。本当に強い子。身体はしんどいはずなのに、弱音ひとつ吐かずにじーっと耐えている。それでも時々漏れる苦しそうな息が熱くて、目はとろんとしていて、やっぱり心配だった。我慢強い涼太に比べて、時々心配そうに前の席から振り返って、ちらちらこっちを見ている泣き顔の翔太の方がよっぽど甘えん坊に見えた。
🖤「翔太、危ないからちゃんと座って」
💙「…………あい」
蓮が少し強く言うと、翔太もぐずらずに前を向いてしぶしぶ頷いている。こういう時、普段ワガママな翔太もパパの威厳には従うらしい。
◆◇◆◇
熱が高いと言うことで、お医者さんのすすめで注射を打つことになった涼太。
良かった、これが翔太じゃなくてと思ってしまったことは本人には内緒。
涼太は大人しく腕を出すと、痛いだろうにじっと耐えている。
「これですぐ楽になるよ〜。偉かったね」
❤️「…ん」
優しいお医者さんに褒められて、これまで辛そうにしてた涼太がニンマリ笑った。
可愛い。
それにしても、診察室に翔太を連れて来なくて本当に良かった。一緒だったら、自分が注射されてるわけでもないのに大騒ぎだったろう。これも蓮が一緒に来てくれて翔太を見てくれているおかげだ。優しい旦那さんで本当に良かった。
💚「あれ?」
診察室を出ると、待合室の椅子で、二人は寄り添って寝ていた。眠る蓮の腕に寄り掛かるようにして、翔太も寝ている。
❤️「寝てるね」
💚「泣き疲れたんだね」
翔太の頬には涙の跡。声を出すのは我慢していたけど、ずっと泣いてたもんな…。
❤️「ママ、ありがと」
💚「どういたしまして」
ぎゅっと腰に抱きついて来る涼太を抱きしめた。翔太が寝ている間は、こうやって俺に甘えられるらしい。涼太が普段こんなふうに抱きついて来たりするのは珍しいから、やっぱり体調が悪いんだろう。俺を見上げた目はまだ少し潤んでいた。
💚「パパ、翔太、帰ろう」
二人を揺り起こすと、翔太は涼太に抱きついた。
💙「りょた!」
❤️「翔太、ありがと」
💙「どーいたまして!!」
薬局で薬を貰い、4人でまたドライブして帰った。帰りは俺が助手席。後ろでは双子たちが仲良く手を繋いで眠ってる。
涼太が熱を出したのは心配だったけれど、なんだか幸せな時間だった。
🖤「ねぇ、亮平?」
💚「ん?」
🖤「なんか俺、今、めっちゃ幸せ」
💚「うん、俺も」
家に着き、双子を起こす前に、蓮と恋人同士に戻ったようなキスをした。
朝日に照らされた、寝癖もそのままの蓮と、寝不足で隈が出来てる俺と。そして、後ろに座る愛くるしい子供たち。ずっとずっとこれからも4人で幸せに過ごせますように。
あ。涼太、早く治そうね。
後日。
翔太が熱を出した時には、この日の比じゃないほど夫婦揃って疲れまくったのは、また別のお話(笑)
コメント
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降ってくりゃ書くし、降らなきゃ書けないし

まさか続きが見れるとはー!!嬉しいー!このままこれを長編まで持っていきたい((殴