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※世は戦国の再来だった。
特異点の四人ーー四死刀が世に頭角を現す。
九夜の忍達も裏で彼等と抗戦を試みるが、彼等の前では全くの無力だった。
その力は余りにも強大過ぎていた。
事態を重く見た九夜の里では、当主を交えた話し合いが行われる事となる。
四死刀ーー特異点への対策を。
このままでは四死刀と呼ばれる者達に、天下を取って代わられるのは必然だった。
将軍家、裏隠密忍衆“九夜”当主として、この事態を見過ごす訳にはいかなかった。
***
『四死刀……特異点と呼ばれる者達が、まさかこれ程とはな』
当主の屋敷の広間では、数人の忍と当主による会談が行われていた。
『このままでは将軍家は滅び、我々も同じ道を辿る事になります……』
それだけは避けなければならない。特異点はこの世に存在してはならない。
それはこの世に於いて、余りに危険過ぎる存在。
当主はある決断をする事になる。
地下回廊に幽閉中のユキ。
特異点としての力を覚醒するその前に。
『地下回廊に幽閉中の者を出せ』
皆、当主の言った意味が理解出来た。
“こうなっては仕方あるまい”
当主は冷酷に言い放つ。
゙特異点は消さねばならない゙
ーーと。
*
ーー複数の足音が聞こえる。
何だろう?
その足跡は僕の前までやってくると、二人の男達が目の前の鉄格子を開けて入ってきた。
もしかして此処から出してくれるの?
二人の男達は無言で僕をここから連れ出していく。
やっと此処から出られる。
永かった……。
此処に入れられてから、千八百日以上が過ぎただろうか?
この闇では時間の概念が分からないから、正確な日数とか分かる訳がない。
二人の男に連れられて、僕は屋敷の外へと出された。
ーー初めて見る外の世界……。
辺りは日が落ちていたけど、月明かりがとても綺麗でーー
ちらちらと、雪が降っていた。
外には沢山の人達が集まっていて、その中心には父上と、その傍らに母上と弟のシュリが居た。
何が始まるんだろう?
とても嫌な予感がする……。
僕は二人の男に掴まれるように、ある場所まで歩かされる。
そこは何かの台座みたいで、僕はその上に仰向けに寝かせられた。
何故か両手両足には、鎖が巻き付けられていく。
ああ、そうか。
僕は理解出来た。
僕は存在してはいけない存在。
特異点。
だから僕はこの世界から消えなければならない。
仕方ないよね……。
どうやら、この世界ともお別れみたいだ。
長いようで短かった気がする。
僕が居なくても皆、上手くやっていける。
僕が居たら、むしろ迷惑が掛かる。
不思議と怖くは無かった。
……でも何故だろう?
何故こんなに、目から水が溢れ出してくるんだろう?
最後に見たのは怖い位綺麗な満月とーー
その月明かりに照らされて銀色に光る何か。
今なら分かる。
それは刀だった。
人を斬る為のーー
人を殺す為だけの道具。
高く抱え上げられた刀が、僕に振り降ろされる。
ちらちら降る雪と一緒にーー
銀色に光る刀が、ゆっくりと落ちてくる。
まるで全ての時間が止まったかのように、ゆっくりとーー
死ぬ前って、きっと時間の流れがゆっくりになるんだね……。
元より存在しない者。
今まで僕はーー
生きていたのかな?