テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#普通
野々さくら
552
芙月みひろ
705
#ざまぁ
まぁ
33,979
#謎解き
井川奎
42
麗華が転校してきて一ヶ月が経った、十月上旬。 夏の暑さがなくなり空が少しずつ遠くなる頃、麗華はクラス内で完全に孤立してしまった。
転校当初は、あの目を惹く美貌により熱い視線を寄せられていたけど、推しやSNSなどの流行りのコンテンツについて「興味ない」の態度を貫いていたこと。また、休み時間に文庫本を取り出して一人読みふける姿に周りは引いてしまい、麗華に寄りつくクラスメイトは誰も居なくなってしまった。
だけど私はその状況をただ眺めるだけで、話しかけたり、グループに入ってもらおうと友達に呼びかけることはしない。
それはなぜか。
そんなの理由はシンプルで、一緒に居ると私も同類の陰キャだと思われるから。
しかも私が同じことしたら、麗華以上に風当たりは強く、また色々と言われてしまうから……。
そう、結局私は自分自分で、誰かのために何かをしようとしない、ズルい人間。
本当の友達だと思った子でも、こんなに簡単に裏切ることが出来る、最低な人間。
だってこの状況、どうしたら良いっていうの?
一度ついたイメージは払拭出来ない。
私たちの学校は専門学科が多くて普通科の文系は一クラスしかないから、このクラスは持ち上がりと確定している。だから三年生でクラス替えしたらとかそんな希望はなくて、だから私はこの関係にしがみつくしかなくて、だから私は。
「あ、ごめん。先行ってて」
五限目前、移動教室の途中、ノートを忘れたと気付いた私は、二年一組の教室へと戻っていく。
緩む口元を抑えて。
一人になれる僅かな時間。
忘れ物を取りに行くなんて、めんどくさい以外の感情は湧かないはずなのにどこか開放的で、思いっきり空気を吸うことが出来るボーナスタイムのような時間。
晴れは嫌いな私だけど、大きな窓から差す太陽の光りにすら寛大になれた。
教室、誰もいないといいな。
だけどそんな願い叶うことなく、電気が消された暗い教室の真ん中の席に一人座っている女子がいて、黒髪のストレートヘアを耳にかけ、本を両手に広げる美しい横顔。
それを目にした途端に、トゲのような鋭いものが私の胸に刺さったような痛みが襲ってきて、思わず廊下に出てしまった。
ノートは諦めようかと悩んだけど、ないのは困るとまた教室を覗き込むと、視線を送っているのに気付かないほど熱中しているようで、私はそっと教室に入って行く。
幸いと言っていいのか分からないけど、私の席は廊下の後ろ側で、すぐ出ていけば分からないだろうと。
机下に仕舞ってあるイスを音を立てないように引き、自分の引き出しからノートを取り出そうとしゃがんだ姿勢で引き出しをゴソゴソと漁る。
ガサガサガサ。
しかしこうゆう時こそ、やらかすのが私。
ノートだけを出そうとしているのにメイク道具が入ったポーチまで引っ掛けてしまい、しかもファスナーの閉め忘れからビューラーやマスカラなどの道具が床に散乱させてしまった。
鈍臭くズボラな自分を呪いながら落ちた物を拾っていると視線を感じ、顔を上げると麗華が真顔でこっちを見ていた。
「……あ」
どこまでもマヌケな声を出した私は、拾った物をポーチに戻すことなく引き出しにそのまま突っ込み、プイッと顔を背けて教室を飛び出していた。
だって今更、何を話せば良いっていうの?
何、読んでるの、とか?
面白い、とか?
私も読みたい、とか?
そんなこと言えるわけない私は、ただ廊下を駆けていく。
楽しそうに話すグループから目を逸らし、笑い声が聞こえないフリをして、詰まっていく喉のせいで息苦しさを感じながら。
もうやだ、こんなの。
このグチャグチャな気持ちを言葉に出来たら、文章に出来たら、少しは楽になれるのかな? 大っ嫌いな自分を変えるキッカケとかになってくれるかな?
ねえ、誰か教えてよ。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!