テラーノベル
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おっくんから連絡があった。唐和開港奇譚の予約の伸びがかなりよくて、発売日以降の売上も期待できそうとのことである。本当によかった、狭山さんが言うには、二巻以降が出せるかどうかは一巻の売り上げ次第ってことだったからな……。
狭山さんには、おっくんと和解できたことを伝えてある。とても喜んでくれていた。
千歳にも唐和開港奇譚のことを伝えたら、喜んでくれた。
『表紙にお前の名前入るんだろ?』
「うん、制作協力ってことで入れてくれるって、小さくだけど」
『お前の名前売れて、いい仕事来たらいいなあ』
「そこまでうまくいくかはわからないけど……実績として人に言うことはできるかな」
Webライター稼業は、自分の名義を出さない契約の仕事がたくさんあるのだ。そういうのは自分の具体的な実績として書けないので、あんまり自分の業績の宣伝にならない。自分の名義を出していい仕事というのは、かなりありがたい。
そんな日々の、夜のまったりタイム。千歳(幼児のすがた)が白くまアイスを持って、こたつに入ってる俺のところに来た。
『座る!』
「はいはい」
俺が少し体をずらして膝のスペースを空けると、千歳は当然のように俺の膝に乗り、こたつに入ってアイスを食べ始めた。
『なあ、このアイスコンビニで買ってさ、その時気づいたんだけどな、令和はコンビニでおせち売るのか?』
ああ、もうおせち予約真っ盛りの季節だな。
「売ってるっていうか……コンビニでお金払って予約して宅配、かな。店頭受取もあるかもだけど」
そうか、もうおせちのこと考える季節か。
……お正月、千歳とおせち一緒に食べたいな。去年大変でそれどころじゃなかったしな。おせち予約して買ってあげようかな、でも高いかな?
そう考えていたら、千歳がもぐもぐしながら言った。
『今年はおせち作るからな』
「え、作ってくれるの?」
『作れそうなやつならな。えーと、煮しめと、伊達巻っぽいのと、なますと、田作りと……黒豆はパックの蒸し豆煮たら簡単にできるかなあ』
千歳は指折り数え、それから振り返って俺をいたずらっぽい顔で見た。
『食費にちょっと色つけてくれたら、エビと栗きんとんも入れてやれるんだけどな?』
わー、すごくおせちだ! そうか、千歳ならおせちくらい作れるか! そうか、千歳手作りのおせちで千歳とお正月出来るのか、俺!
「色つける! いくらいる!?」
『そんなにエビ好きか?』
千歳は笑った。
「いや、エビが好きだからってわけじゃなくて……あ、でもエビも栗きんとんも好きだな、食べたいな」
おせちのエビだの栗きんとんだの、何年ぶりだろう。実家ではおばあちゃんが用意してくれた記憶があるが……。大学進学でひとり暮らし始めてから、食べてないな、多分。
『じゃ、エビもきんとんも作ってやる。二千円か三千円あればいける。まあ、作っても、詰めるの三段重じゃなくてタッパになりそうだけど』
「おいしければ全然いいよ、一緒におせち食べよう、ゆっくりお正月しよう」
『お前、正月休めるのか?』
「三ヶ日くらいなら」
『じゃ、ちゃんと休め』
千歳は少し考える顔になり、そして言った。
『ていうか、正月前はクリスマスあるじゃないか。クリスマスケーキ食いたい』
あ、俺も言われるまで頭から飛んでた。まあ、クリスマス一緒に過ごすような彼女とは無縁の人生だからな。
「うーん、クリスマスケーキ買ってあげたいけど、当日飛び込みで買うのは混むかも。いつもの駅前のケーキ屋で予約できると思うけど」
ケーキ屋なら、クリスマス商戦は絶対参戦するよな。
千歳は嬉しそうに目をきらめかせた。
『じゃあ近々ケーキ屋行こう! ワシ、チョコケーキ食いたい!」
「じゃあ、ブッシュドノエルがいいんじゃないかな?」
『ブッシュドノエル?』
「チョコケーキで丸太作ったみたいな感じの」
俺のスマホでブッシュドノエルの画像検索結果を見せると、千歳は『絶対これがいい!』と早々にクリスマスケーキを決定した。
『クリスマス、他にもそれっぽい飯作りたいな。なんか食いたいものあるか?』
「そうだねえ、うーん、クリスマスっぽいものかあ」
俺はクリスマスディナーについて思いを馳せた。
そうか、当たり前だけど、俺、クリスマスディナーを千歳と一緒に食べられるんだな。去年はこの時期大変だったから、千歳とゆっくり出来る年末年始は初めてだ。
……なんか、すごくうれしいな。そうだ、クリスマスやお正月だけじゃなくて、年越しも千歳と一緒にできるんだ、俺。
……仕事頑張って、ちゃんと仕事納めしよう。クリスマスと大晦日と三が日、千歳と一緒にゆったり過ごせるように、頑張ろう。
コメント
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読了しました。おっくんからの連絡で唐和開港奇譚の好調が伝わってきて、千歳にそれを報告する場面から、こたつでのアイスタイム、そしてクリスマスやお正月の話へと続く流れが、とてもあたたかくてじんわりしました。千歳が「おせち作るからな」と言い出すところ、エビと栗きんとんに「食費ちょっと色つけてくれたら」と交渉するいたずらっぽい表情が目に浮かんで、思わず頬が緩みました。ブッシュドノエルの画像検索で「絶対これがいい!」と即決する千歳、可愛いすぎます。「仕事頑張って、ちゃんと仕事納めしよう」という主人公の決意が、この二人のゆったりした年末年始を本当に楽しみにしているんだなと伝わってきて、胸が温かくなりました。素敵なエピソードをありがとうございます🌷
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凛道桜嵐 新
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